胃がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

胃がん検診はすべての市町村で行われており、さらに人間ドックなどでも基本コースに含まれていることが多い検査です。しかし、実際の検診の受診率は男性で32.5%、女性で25.3%とまだまだ低いのが現状です。胃カメラやバリウム検査は多少体の負担を伴う検査ですが、できるだけ効率的に検査が行えるように胃がんのなりやすさを判断するABC検診という検査も行われています。

おすすめするのは早い段階でABC検診を受けて、自分が胃がんになりやすい体質なのか、なりにくい体質なのかを知っておくこと。そしてその診断に基づいた間隔で胃カメラやバリウム検査による検診を受けることです。

胃がんの死亡率は下がったとはいえ、高齢化の影響で胃がんになる人の数は増えています。しかし胃がんはほかのガンと比較して原因がはっきりしており、正しく検査を受ければ早期診断し治癒が望める病気です。胃がんに関する検査について正しく理解して、上手に検診を受けましょう。

胃がんの主な初期症状

胃がん固有の症状はない

胃がんの症状として、胃の痛み、吐き気、胸やけ、胃もたれ、食欲不振などがありますが、これらの症状は胃がんに限ったものではありません。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などでも同じような症状がでることがあります。
胃から出血すれば吐血や黒色便といった症状が出ることもありますが、これらも胃炎、胃潰瘍などから出血した場合でもありえます。

胃がんに関係する血液検査

血液検査では、出血を繰り返せば貧血が現れたり、食欲不振が続けば栄養に関するデータに異常を認めますが、いずれも胃がんに特有な結果ではありません。胃がんの腫瘍マーカーとして主にCEAやCA19-9が調べられますが、これらは胃がんの人の治療効果の判定に用いられるものであり、胃がんがあっても正常値の場合もあれば、胃がんがなくても異常値になることもあるので胃がんかどうかの診断には使えません。

胃がんの自己診断チェック

自己診断のみで胃がんかどうかを判断することはできませんが、胃がんを疑う症状は以下の通りです。
当てはまる項目が多い場合は、病院受診をお勧めします。

胃(みぞおち・心窩部・おへその上)が痛い
胸やけがある
吐き気が続く
胃もたれがある
食欲がない
ダイエットしていないのに体重が減っている
便の色が黒い
ピロリ菌に感染したことがある(もしくはピロリ菌感染の検査をしたことがない)
過去の胃カメラ/バリウム検査で胃炎や胃ポリープを指摘されたことがある
貧血を指摘された

検診と検査項目

胃がん検診について

死亡率を下げる効果が認められている検査は胃カメラ(別名:上部消化管内視鏡検査)と胃バリウム検査(別名:胃透視・胃部X腺検査)です。そのほかに補助的な検査としてABC検査(ピロリ抗体検査+ペプシノゲン検査によりリスク判定を行う血液検査)があります。

胃カメラ

鼻、もしくは口からカメラを入れ、食道を通って胃まで挿入します。胃を直接見ることができるので、バリウム検査では見逃されやすい平らながんや色の変化だけといった病変も見つけることができます。

以前は口から挿入する経口胃カメラが主流でした。経口胃カメラは直径が9mm程度と太く、挿入時に舌の根元を押さえるため、人によっては検査中頻回に嘔吐反射が出ることもあります。その後開発されたのが直径6mm程度の細径胃カメラです。カメラが細くなったことにより、鼻からも挿入できるようになり、舌もほとんど押さえないことから嘔吐反射が強い人でも楽に検査ができるようになりました。また、口から挿入しないことで検査中に会話をすることもできるようになりました。

現在ではこの経鼻胃カメラが検診の主流になってきていますが、経鼻胃カメラにもデメリットはあります。1つはカメラが細くなった分、付随した器具もすべて小型になっており、後に説明する生検検査を行う場合に胃の細胞を少ししか取れないこと、また鼻から挿入する際、鼻を刺激することで鼻出血を起こすことがある点です。

精密検査では基本、十分な処置・検査ができる経口胃カメラを使用します。経口もしくは経鼻の選択ができる場合はこれらの特徴を理解したうえで選択しましょう。

バリウム検査

レントゲンで撮影しながらバリウムを飲み、様々な体位をとって胃の形を見ます。胃を膨らませるため、発泡剤も併せて服用します。形だけを見る検査のため、平らながんは見落とす可能性があります。また撮影の条件によっては胃がんではない変形を胃がんの疑いと判断してしまう可能性もあります。胃の粘膜に異常の出にくいスキルス癌は胃カメラの検査では正常と判断されることもありますが、バリウム検査では胃の伸びが悪いという特徴をとらえて早くに診断できることがあります。

バリウム検査は指示に従って自分で体の向きを変える必要があるため、自分で動けない人は検査することができません。また服用したバリウムが長い間便として排出されないと、腸の中でかたまり、検査後の腹痛の原因になることもあります。

ABC検査

血液で行う検査で簡易に胃がんの危険性を予測することができます。胃カメラやバリウムのように体の負担や時間がかかる検査ではないため人間ドックなどにも採用されていますが、今現在胃がんがあるかどうかを判断する検査ではないことに注意が必要です。

調べる項目はピロリ抗体検査とペプシノゲン比です。ピロリ抗体検査はピロリ菌が身体に入ったときに作られる抗体の有無を調べる検査で、陽性の場合(除菌治療を受けていなければ)ピロリ菌に感染していると考えられます。ペプシノゲン比は胃から分泌されるペプシノゲンⅠ、ペプシノゲンⅡという酵素の量を測定し、胃がんの前がん病変である萎縮性胃炎の可能性を推測します。

2種類の検査から、最も胃がんになる可能性の低いA群から最も胃がんになる可能性の高いD群のいずれに該当するかを判断します。例えば最も胃がんになりやすいとされるD群では1年の間に80人中1人が胃がんを発症するとされています。

あくまでABC検査は胃がんのなりやすさを判断する検査であり、今胃がんがあるかどうかの検査は胃カメラもしくはバリウム検査ということになります。

検診の対象とされているのは胃がんの頻度が急激に増加する50歳以上の人で、検診の間隔は胃カメラで2年に一度、バリウム検査で1年に1度とされています。(ただしバリウム検査はしばらくの間40歳以上を対象に実施される予定です。)

理想的には40歳前にABC検査を一度受け、自分がどの群に属するか判定してもらい、ピロリ菌がいればピロリ菌の除菌をして、その後指示された間隔で胃カメラもしくはバリウムの検査を受けるのがおすすめです。

胃がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ(胃がんの可能性があるかどうかを見る検査)

胃バリウム検査

胃カメラ(経鼻・経口)

ファーストステップの検診の胃カメラでは基本観察のみですが、人間ドックや病院で胃カメラを受けた場合、事前に同意してあれば、病変を見つけたらそのままセカンドステップである生検を行うこともあります。

セカンドステップ(胃がんかどうか確定診断する検査)

生検(病理検査)

胃カメラで病変の一部を切り取って(生検)、顕微鏡でがん細胞の有無を判断する検査(病理検査)を行います。ここでがん細胞が認められれば胃がんと確定します。細胞の並び具合から高分化型~未分化型の判断までが可能になります。

サードステップ(胃がんのひろがり具合を見る検査)

遠隔転移の有無を判断する目的で行われる検査です。

腹部超音波検査(エコー検査)

お腹にゼリーを塗り、機械を当てて検査を行います。

単純/造影CT検査

放射線を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影CTが行われることもあります。

単純/造影MRI検査

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。
CTとMRIは見やすい臓器が異なるので、同じ部位にCTとMRI両方の検査を行うこともあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。全身を一度に調べることができます。

検診にかかる平均費用

基本ファーストステップの検査は検診で、セカンドステップからは保険診療で検査を受けることができます。

健康診断・人間ドックで受ける検査(目安)

・胃カメラ 検診 1000~3600円
人間ドック 4000~15000円
・バリウム 検診 500~2000円
人間ドック 4000~13000円
・ABC検査 検診 500~1000円
人間ドック 3000~6000円
*検診でどの項目が選択できるかは市町村によって異なります。

保険適応で受ける検査(目安)

・生検(病理検査) 3割負担 5000~8000円、1割負担 1500~3000円
・腹部超音波検査(エコー検査)3割負担 4000円、1割負担 1500円
・単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
・造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
・単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
・造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
・PET検査 3割負担 30000円、1割負担 10000円

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。