胃がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

胃がんは珍しい病気ではなく、今でもがんで死亡する人の原因第3位の疾患です、しかし胃がんは普段からきちんと検査や治療を受ければ完治できる病気でもあります。

胃がんの多くはピロリ菌感染が原因であり、さらにピロリ菌に感染した後どのように胃が変化し、がんが発生するのかは解明されています。ですから、早い段階でピロリ菌感染の有無をチェックし、適切なタイミングで胃カメラやバリウムの検査を受けていれば多くは早い段階で発見し治療ができる病気なのです。

ポイントはできるだけ早くピロリ菌に感染していないかをチェックし、ピロリ菌の有無と胃の状態から適切な間隔で胃がん検診をうけること。

ここでは胃がんの大部分を占める腺がんタイプの胃がんについて紹介します。
また、稀な疾患ですが、若い人でも発症する可能性のあるスキルス胃がんについても説明します。

胃がんとは

胃がんは胃の内側を覆っている粘膜から発生したがんです。胃がんはその発生部位、細胞の種類、進行度などで以下のように分類されます。

胃がんの分類

部位

胃は食べ物を消化する臓器で、手前側(口側)は食道、奥側(肛門側)は十二指腸につながっています。胃は食道側に近い部分を噴門部(ふんもんぶ)、十二指腸に近い部分を幽門部(ゆうもんぶ)、真ん中の部分を胃体部(いたいぶ)の3つにわけることができ、がんのできた位置でそれぞれ噴門部がん、幽門部がん、胃体部がんと呼ばれます。

細胞の種類

がんはどの種類の細胞が原因になっているかによって、分類できます。胃がんのほとんどは腺がんです。さらにその細胞の並び方がどのくらい正常の胃の組織によく似ているかどうかでも分類され、胃の組織によく似ているものを高分化型とよび、だんだん胃の組織と違いが強くなるにつれて中分化型、低分化型、未分化型と呼びます。一般的に高分化型のほうが進行が遅く、正常の胃の組織と違いが大きくなるにつれて悪性度が高く進行が速くなります。

頻度は低いですが、胃がんの10%程度を占めるスキルス胃がんは腺がんではなく印環(いんかん)細胞がんです。ほとんどが未分化型で、胃の粘膜に顔を出さずに胃の壁の中を這うようにひろがるのが特徴で、早期発見が難しく、診断された時点で60%の人に転移がみられる進行の早いがんです。

進行度

進行度は胃がんの病気のひろがり具合を表します。一般的には以下の3つを評価して病期(ステージ)として表現します。ステージは0から4までがあり、一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。

病変の深さ
胃の壁は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という層が重なっています。頻度の多い腺がんタイプの胃がんの場合、最初は最も内側の粘膜からがんが発生し、進行するとどんどん深いほうへひろがります。ひろがり具合が粘膜下層までのものを早期がん、それ以上ひろがっているものを進行がんといいます。この分類は胃の壁のどの深さまで病気が及んでいるかを表現したものであり、早期がんであってもリンパ節に転移している可能性はあります。

リンパ節転移
リンパ管は血管と同様に体中に張りめぐらされています。胃の壁の中でリンパ管にがん細胞が入り込むと、胃に近いリンパ節から順番に転移していきます。

ほかの臓器の転移の有無
肝臓や肺、骨などに転移している場合は胃から遠く離れた部位への転移ということで遠隔(えんかく)転移あり、と表現します。

転移・浸潤・播種(はしゅ)の違い

転移:がん細胞が血管やリンパ管に入り込んで、血流やリンパの流れに乗り、胃から離れた臓器にうつった状態
浸潤:がんが大きくなり、胃と隣り合う臓器(食道、十二指腸、膵臓など)にまでひろがった状態
播種:がん細胞が胃の壁から剥がれ落ちておなかの中にばらまかれ、おなかのあちこちにがんがひろがった状態

胃がんの頻度

2014年にがんと診断された人の中で胃がんは男性の第1位、女性の第3位、全体では第2位と、とても頻度の高い病気です。
また2017年がんで死亡した人の中で胃がんは男性の第2位(10万人あたり49.0人)、女性の第4位(10万人あたり24.2人)であり、全体では3番目に多い疾患でした。

胃がんの主な原因とリスクファクター

胃がんを発症する原因の多くは胃の粘膜に炎症をおこすものです。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染

腺がんタイプの胃がんの原因はほぼすべてがヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)感染と考えられています。しかし、ピロリ菌に感染した人すべてが胃がんを発症するわけではありません。

塩分の摂りすぎ

ある調査では胃がんになった人の塩分摂取量を調査したところ、男性に限りますが塩分量が多い人は少ない人と比べて約2倍、胃がんになりやすいことが判明しています。さらに同じ調査で、塩分濃度の濃い塩蔵加工の食品を食べている人では男女ともに胃がんになる可能性が高くなっていました。動物実験では濃い塩分によって胃の粘膜に炎症を起こすことも証明されています。

タバコ

日本人を対象とした調査では、ほとんどの報告で喫煙により男性の胃がんになる危険性が高くなると報告されています。複数の調査をまとめて再検討した結果によると、タバコを吸わない人と比較してタバコを吸う人が胃がんになる可能性は男性で1.8倍、女性で1.2倍、全体で1.6倍という結果になり、女性でも喫煙により胃がんの危険性は上がると考えられています。

(スキルス胃がん)CDH1遺伝子の変異

スキルス胃がんはCDH1遺伝子に異常のある家系に多発するという報告があります。

胃がんになりやすい人の特徴

胃がんになりやすい年齢・性別

年齢別の死亡率では40歳手前まではほとんど0に近いものの、45歳を過ぎたあたりから急激に増加しています。これはほとんどの胃がんが腺がんであり、幼少期にピロリ菌に感染し、長年胃の粘膜に炎症が続くことで45歳過ぎから胃がんが発生すると考えられます。
ただし、スキルス胃がんは20歳代の発症もありえます。

性別で見た発症数は2:1で男性に多い病気です。
スキルス胃がんだけに限定すると2:3で女性に多いという特徴があります。

胃がんと家族歴

胃がんは家族歴が大きく影響しています。家族が胃がんになった人はそうでない人と比べて男性で1.6倍、女性で2.4倍胃がんになる可能性があることが報告されています。しかし、家族歴が胃がん発症の危険性と関係しているからと言って、遺伝であるとは断定できません。ピロリ菌感染の影響や同じ食生活になりやすいという影響も考えられています。

ピロリ菌と胃がんの関連性

ピロリ菌は国際保健機関(WHO)によって認定された明らかな胃がんの原因です。実際にピロリ菌の感染が少ない欧米では胃がん患者は日本と比べてとても少なく、また日本国内で積極的にピロリの除菌療法が進められて以降胃がんの患者は減少傾向にあり、ピロリ菌を除菌すれば胃がんの発生率は1/3になることも報告されています。

これまでの研究から正常な胃から腺がんタイプの胃がんを発症するまでの流れは、ピロリ菌に感染したあと時間をかけ胃の粘膜が萎縮する萎縮性胃炎になり、その後腸上皮化性という状態を経て胃がんが発症するという流れであることがわかっています。逆に言えばピロリ菌に感染しなければ腺がんタイプの胃がんはほぼ発症しない、ということです。

ところが、多くの日本人がピロリ菌に感染しています。2019年現在、60歳台以上の人は半数以上が、50歳台以下の人でも5人に1人はピロリ菌に感染していると報告されています。高齢者にピロリ菌感染者が多い理由は、昔下水道が整っていなかった時期にピロリ菌の入った水や食べ物を口にしたことが理由と考えられています。現在では下水道が整備されてきていますが、免疫が確立していない幼少期に井戸水を飲んだり、ピロリ菌を持つ親から口移しで食べ物を与えられたりした場合、現在でもピロリ菌に感染する危険性はあります。

しかしピロリ菌に感染するのはほとんどが5歳未満の幼少期であり、大人になってからピロリ菌に感染することはほとんどありません。

予防と早期発見のコツ

ピロリ菌の有無をチェックしよう

ピロリ菌は幼少期に感染し、大人になってから感染することはほとんどないことから、ピロリ菌に感染しているかどうか1度も検査を受けたことがない人は、成人して早い段階で1度検査を受けましょう。その検査でピロリ菌に感染していないことが証明されれば、腺がんタイプの胃がんはまず発症しません。

もしピロリ菌に感染していても、飲み薬でピロリ菌を消すことができます。この治療を除菌療法といいます。ピロリ菌の除菌療法は早ければ早いほうが効果的です。ピロリ菌による胃の炎症期間が短ければ短いほど、胃がんの予防効果も高いからです。ある報告では40歳未満でピロリ菌の除菌をした場合、胃がんの予防率は限りなく100%に近いとされています。

胃がん検診を受けよう

ピロリ菌に感染していなくても、スキルス胃がんの危険性は残るので、決して胃がん検診は受けなくてよいというわけではありません。また、ピロリ菌を除菌しても、それまでに胃炎を繰り返していた影響で、のちに胃がんを発生する可能性はあるので、ピロリ菌の除菌をしたらその後必ず胃がんにならないということでもありません。

死亡率を減少させることが科学的に証明されている検診方法はバリウム検査と胃カメラです。ピロリ菌感染の既往や胃の状態により検査を受ける間隔は異なりますが、一般的には胃カメラの場合2年ごと、バリウムの検査では1年ごとの検査が勧められています。

胃がんの予防につながる食べ物

食事と胃がんの発生率を調べた調査では野菜の摂取量が多い人は胃がんになりにくいという結果が報告されています。また、ビタミンCを摂取すると胃の萎縮の進展が抑制されることが判明しており、間接的に胃がんの発生を抑制すると考えられます。

さらに緑茶の摂取量と胃がんの発生を調べた研究では、緑茶は日本人女性において胃がんの危険性を下げる可能性があると報告されています。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。