手術数で分かる胃がんの名医がいる病院ランキングトップ10

胃がんと診断を受けたらどの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?

実は胃がんはその病気のひろがり具合やステージによって治療方針はガイドラインで決まっています。極端に言えば、どの病院であっても勧められる治療は同じということです。ですから標準的な治療を受ける場合は、わざわざ遠くの病院まで足を延ばして治療を受ける必要はほとんどありません。

ただし、訳があって標準と異なる治療を希望したり、持病によって治療の制限がある場合などでは胃がん治療の経験が豊富な病院のほうが安心です。胃がんはステージ4以外の場合は基本手術になります。そこで胃がんの手術数の多い病院は胃がん治療の経験が多い病院と考えられます。ここでは胃がんの手術数をDPCデータからランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。

胃がんの手術が適応となる症例

胃がんは治療ガイドラインがあり、基本的には病気のひろがり具合によって治療方針が決まります。胃がんで手術適応となるのはステージ3までです。ステージ4に該当するのは以下のいずれかに1つでも当てはまる状態です。

・領域リンパ節以外のリンパ節に転移がある
領域リンパ節とはその臓器の近くにあるリンパ節です。胃の場合は胃の周りの13個のリンパ節を領域リンパ節としています。それ以外のリンパ節に転移が認められた場合はステージ4に該当します。

・腹膜播種あり
腹膜にがん細胞を認める状態です。小さな腹膜播種は手術前の検査で見つからず、手術でお腹を開けたときに初めて腹膜播種が発見されることもあります。

・腹腔洗浄細胞診が陽性
手術前の画像検査でお腹の中に転移がみられなくても、手術中におなかの中を水で洗い、その洗った洗浄液を顕微鏡で調べるとがん細胞が発見されることがあります。この場合、腹腔洗浄細胞診陽性と判断します。

・胃以外の臓器に転移がある
肝臓や肺、脳など胃以外の臓器に転移がある場合、遠隔転移ありと判断され、ステージ4に該当します。

これらの1つ以上に当てはまった場合は原則手術以外の治療になります。

胃がん手術数トップ10

厚生労働省が集計し公表している平成29年度のDPCデータをもとに、胃がんに関連した手術件数の多い病院トップ10です。

DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。

胃がんに関しては治療方法として「胃がん全摘出術」「胃がん部分切除術」「胃がん内視鏡手術」について年間の患者数が報告されています。また、それぞれの治療法について、入院期間も報告されています。一般的に入院期間は短いほど、手術後合併症なく退院できているという目安になります。

胃がん全摘出術のデータ

胃がん全摘出術の多い病院(開腹術と腹腔鏡手術の合計):数字は年間症例数

1.公益財団法人 がん研究会 有明病院(78例)
2.国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(72例)
3.国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(55例)
4.大垣市民病院(52例)
5.静岡県立静岡がんセンター(49例)
6.山形県立中央病院
神奈川県立がんセンター(48例)
8.加古川中央市民病院(45例)
9.高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(44例)
10.日本海総合病院
総合病院 国保旭中央病院(42例)

*このトップ10に入っている病院はすべて腹腔鏡手術も行うことができる病院です。

胃がん全摘出術の在院日数:数字は平均在院日数と年間症例数

1.新潟市民病院(12.88日、25例)
2.済生会熊本病院(13.67日、21例)
3.秋田厚生医療センター(14.31日、13例)
4.岩手県立中部病院(14.37日、27例)
5.社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県 済生会横浜市南部病院(14.39日、28例)
6.山形県立中央病院(14.40日、48例)
熊本赤十字病院(同、10例)
8.大同病院(14.53日、15例)
9.社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県 済生会横浜市東部病院(14.64日、22例)
10.春日部市立医療センター(14.70日、10例)
高山赤十字病院(14.70日、10例)

胃がん部分切除術のデータ

胃がん部分切除術の多い病院(開腹術と腹腔鏡手術の合計):数字は年間症例数

1.国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(193例)
2.埼玉医科大学国際医療センター(156例)
3.富山県立中央病院(124例)
4.山形県立中央病院(123例)
5.社会医療法人 恵佑会札幌病院(120例)
6.公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院(119例)
7.神奈川県立がんセンター(117例)
8.埼玉県立がんセンター(115例)
9.地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院(112例)
10.藤田保健衛生大学病院(111例)

*このトップ10に入っている病院はすべて腹腔鏡手術も行うことができる病院です。

胃がん部分切除術の在院日数:数字は平均在院日数と年間症例数

1.地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター(11.11日、202例)
2.社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院(11.42日、53例)
3.所沢明生病院(11.50日、10例)
4.熊本赤十字病院(11.52日、62例)
5.医療法人社団恵生会 上白根病院(11.62日、13例)
6.医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院(11.64日、42例)
7.社会福祉法人 新潟市社会事業協会 信楽園病院(11.71日、14例)
8.日本赤十字社東京都支部 武蔵野赤十字病院(11.82日、65例)
9.春日井市民病院(11.84日、55例)
10.JA北海道厚生連 帯広厚生病院(12.07日、27例)

胃がん内視鏡手術のデータ

胃がん内視鏡手術の多い患者:数字は年間症例数

1.公益財団法人 がん研究会 有明病院(395例)
2.静岡県立静岡がんセンター(379例)
3.国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(370例)
4.地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(335例)
5.一般財団法人厚生会仙台厚生病院(309例)
6.公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(280例)
7.NTT東日本関東病院(242例)
8.北里大学病院(220例)
9.埼玉医科大学国際医療センター(209例)
10.国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(208例)

胃がん内視鏡手術の在院日数:数字は平均在院日数と年間症例数

1.市立奈良病院(4.79日、106例)
2.独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター(4.90日、10例)
3.富山県立中央病院(5.01日、140例)
4.静岡県立静岡がんセンター(5.10日、379例)
5.長岡赤十字病院(5.14日、157例)
6.新潟市民病院(5.25日、146例)
7.済生会有田病院(5.30日、20例)
8.国際医療福祉大学三田病院(5.31日、26例)
医療法人 社団 日高会 日高病院(5.31日、16例)
10.地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター(5.33日、106例)

手術数以外にも注目したいポイント

ここでは病院を選ぶ1つの目安に手術数を取り上げましたが、そのほかにも病院を選ぶ目安がいくつかあります。病院によってはホームページなどで情報公開を行っていますが、ただ単に数字を比べるだけではなく、正しく納得のいく病院が選べるように、それぞれのデータについて正しい知識を得ましょう。

がん診療連携拠点病院

がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制の整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。

胃がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。

治療開始までの期間

一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。特に進行がんになるとがんの発育速度は急激に早くなるという報告もあります。

治療に入るまでの期間を公表している病院の平均的な待ち時間は以下の通りです。
手術 2週間
内視鏡手術2-4週間
化学療法 1-2週間
検診のシーズンなどには患者が増え、待ち時間がさらに長くなる可能性があります。

各病院の5年生存率は良い病院の目安になるのか?

一部の病院ではその病院で治療をうけた患者の5年生存率が公表されています。5年生存率とは、胃がんになった人が治療を受け、5年後に生存している確率ということになるので、一般的には数字が大きいほうが良い病院に見えるかもしれません。しかし、この5年生存率にはからくりがあります。

例えば他の病院で「手術はできません」と言われた患者が、別の病院で「非常に厳しいですが、手術してみましょう」ということになった場合、その病院の5年生存率は低くなりがちです。評判の良い病院には他の病院で治療が難しいといわれた患者が紹介されて集まることも多く、結果、名医がいる病院であるにも関わらず5年生存率は他の病院の比較して厳しい結果になることがあります。あくまで5年生存率は目安と考えたほうが良いでしょう。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。