胃がんとは

胃がんはがんの中で頻度の高い病気で、2014年の報告では男性の第1位、女性の第3位、全体では第2位に多い病気と報告されています。また、2017年がんで死亡した人の中も胃がんは男性の第2位、女性の第4位、全体では3番目と死亡者数の多い病気でもあります。しかし、胃がんの多くは原因が判明しており、定期的に検診をうけることで早期発見すれば予後の良い病気でもあります。胃がんがどのような病気でどんなことが原因になり、どのような経過をたどるかを知っておくことは胃がんから体を守ることにつながります。

元気な方は、どのようにすれば胃がんになりにくいのか、どうすれば胃がんを早期発見できるのか、胃がんと診断された人は胃がんとはどのような病気なのか、どんな検査をしてどのように治療していくのかについて、このページではそれぞれ細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

胃とは

胃の働き

胃は食べ物を消化する臓器です。口から入った食べ物は食道を通って胃に入ると、胃から出る消化液と、胃の動きによって細かく砕かれ、栄養が吸収されやすい状態になって次の十二指腸に送られます。胃は大きな袋状の形をしており、一度に食べた食事をおなかの負担にならないように少しずつ小腸に送る役割も果たしています。

胃の解剖

胃は食道側に近い部分を噴門部(ふんもんぶ)、十二指腸に近い部分を幽門部(ゆうもんぶ)、真ん中の部分を胃体部(いたいぶ)と呼びます。胃がんができた場合はその位置によってそれぞれ噴門部がん、幽門部がん、胃体部がんと呼びます。

胃の壁は複数の層でできており、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜(しょうまく)と呼びます。胃がんの多くを占める胃腺がんは内側の粘膜から発生し、大きくなるにつれて胃の外側、漿膜に向かって進みます。

胃がんの初期症状と診断方法

この症状があれば胃がんです、といった特定の症状はありません。初期の段階で発見される胃がんは自覚症状が全くないこともあります。胃がんが進行してきたら、胃痛や吐き気、便の色が黒くなるといった症状が出てきます。血液検査で貧血を指摘されることもあります。

胃がんの診断方法は主に2つです。1つは胃カメラ、もう1つは胃バリウム検査です。2つの検査はそれぞれ見つけやすいがんが異なるので、それぞれの検査の特徴を理解しておくことは重要です。

もし、これらの検査で胃がんが強く疑われれば、通常は胃カメラを用いて病変の一部を切り取り、顕微鏡でがん細胞を探し出す病理検査が行われます。胃がんと確定すれば、がんのひろがり具合を診断するためにCTやMRI、超音波やPET検査などを必要に応じて行います。

胃がんの初期症状から診断までの流れ、検査にかかる費用についての詳細は「胃がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは」で紹介しています。

胃がんの初期症状と検査方法、検査に掛かる費用とは

胃がんの主な原因と特徴について

胃がんの9割を占める胃腺がんの原因はピロリ菌感染であることが明らかになっています。ピロリ菌に感染した胃粘膜はその後長い年月の間、胃炎の状態が続き、萎縮性胃炎、腸上皮化性という状態を経て胃がんを発症します。そのため、胃腺がんの発症は40歳前にはほとんどみられませんが、40歳を過ぎると急激に数が増加するのです。

昔は井戸水などからのピロリ菌感染が多く、上下水道が整った現代では新たにピロリ菌に感染する危険性は減ってきています。しかしピロリ菌をもつ親から口移しで食べ物を与えられたりした場合は、現在でも感染の可能性はあります。特に免疫力が低い5歳未満の間に感染した場合は、胃炎を経由して将来胃がんを発症する危険性があります。

そのほかに胃がんを発症しやすいと報告されているのは、食事の塩分量が多い人、タバコを吸う人、家族で胃がんになった人がいる場合です。
逆に、野菜の摂取量が多い人、ビタミンCや緑茶の摂取が多い人は胃がんになりにくいという報告があります。

胃がんの原因であるピロリ菌や、胃がんになりやすい人の特徴の詳細については「胃がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて」をご覧ください。

胃がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

胃がんのステージ別生存率

胃がんの病変のひろがり具合はステージとして表現されます。ステージは1から4まであり、数字が大きくなればなるほど病気のひろがりが広いことを示しています。胃がんの場合は病変の深さ、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかの3つを評価してステージ1から4まで分類します。

生存率とは病気ごとの治療効果を表現するための数値で、一般的には5年後の生存率を表す「5年生存率」が使われています。5年生存率は100%に近いほど治療効果の高い病気ということになります。胃がんのステージ別5年生存率はステージ1で97.4%、ステージ2で63.9%、ステージ3で48.3%、ステージ4で6.9%でした。

ステージが進むと治療効果が出にくい胃がんですが、実際に胃がんになった人の半数以上はステージ1で発見されています。ステージ1での発見率は他のがんと比較して高い数字であり、この理由として胃がん検診が貢献していると考えられます。

胃がんのステージや平均余命、罹患者数や死亡数の推移、末期胃がんの症状やケアについては「胃がんのステージ別生存率と平均余命」をご覧ください。

胃がんのステージ別生存率と平均余命

治療と副作用

胃がんはその病気のひろがり具合(ステージ)によりガイドラインで治療が決まっています。ステージ3までは手術、ステージ4や再発の場合は抗がん剤や緩和ケアが基本です。

手術は内視鏡手術、腹腔鏡手術、開腹手術があります。手術の切除範囲もガイドラインで決まっており、がんの再発の危険性を極力低くしつつ、手術後の生活の支障が最低限であるように考えられています。手術の一番のメリットは、病変を体外に取り出し、その病変の病理検査を行うことで、治療がうまくいったかどうか、今後の再発の可能性はどのくらいあるかがきちんと評価できる点です。どんなに最新式の画像検査を行っても、目に見えない病変まで正しく評価をすることは難しく、手術を行った後、ステージの数字が変わることもあります。手術の場合は、画像では見えないがん細胞を顕微鏡で検査することで細胞レベルで治療の評価が可能です。

抗がん剤は病気のひろがりが手術範囲を超えている場合に手術できる範囲まで病気を小さくする目的で行われたり、手術の結果から再発の危険性が高い場合、もしくは再発の胃がん患者に対して行われます。手術は目に見える病変をすべて取り切る治療ですが、抗がん剤は基本的に全身に作用するため、目に見えない病変があった場合にも有効です。ただし、がん細胞以外の正常の細胞にも作用するため、副作用の危険性があります。抗がん剤として使われる薬は複数の種類があるため、それぞれの効果や副作用を理解して治療を受けることが重要です。

胃がんの治療の副作用の詳細については「胃がん治療と副作用について」をご覧ください。

胃がん治療と副作用について

全国の病院ランキングトップ10

胃がんと診断されたら、どの病院で治療を受けるか悩むかもしれません。しかし、胃がんはガイドラインで治療方針が決まっているので、どの病院であっても勧められる治療は同じであり、わざわざ遠くの病院まで足を延ばして治療を受ける必要はほとんどありません。ただし、持病があって標準とは異なる治療を受ける、といった場合には、胃がん治療の経験が豊富な病院のほうが安心、という人もいるでしょう。

実際の胃がんの患者数を比較するデータはありませんが、厚生労働省が集計しているDPCデータでは入院患者の主な病名や行った治療などが公表されており、その数で胃がん患者をどのくらいみているか推測することができます。手術としては「胃がん全摘出術」「胃がん部分切除術」「胃がん内視鏡手術」の数が報告されています。

そのほかに病院を選ぶ基準として、厚生労働大臣が各都道府県で指定している「がん診療連携拠点病院」があります。「がん診療連携拠点病院」には専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応しています。がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」では、どの病院で治療を受けたらいいか、といった相談をすることも可能です。

そのほかに参考になる数字として治療に入るまでの期間や入院日数、各病院で治療を受けた患者の5年生存率といったものがあります。

詳細は「手術数で分かる胃がんの名医がいる病院ランキングトップ10」で実際のランキングや数字を載せていますので、参考にしてください。

手術数で分かる胃がんの名医がいる病院ランキングトップ10

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。