膵臓がんのステージ別生存率と平均余命

膵臓がんの治療方針を決めるためには、各種検査から病気のひろがりを判断し進行度(ステージ)を診断する必要があります。がんと診断されると「私はあとどれだけ生きられるのだろう」と思われるかもしれません。この「あとどれだけ生きられるか」は”余命”といい、その病気の状態の人の50%が亡くなる時期を”平均余命”といいます。この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、同じ膵臓がんであってもステージによって異なります。そして、”平均余命”とはあくまで目安で、かなり幅があるものです。

病院の説明でよく使わるのは”平均余命”よりも”生存率”です。特に”5年生存率”はその病気の治療効果を比較するためによく使われます。簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

膵臓がんの種類と進行度について

膵臓がんの種類

膵臓がんの約90%は膵液が通る膵管から発生する膵管がんです。膵管がんには浸潤性膵管がん、膵腺房細胞がん、腫瘍性膵のう胞などがあります。内分泌細胞からは神経内分泌腫瘍があります。

ここでは膵臓がんの多くを占める浸潤性膵管がんと腫瘍性膵のう胞、膵神経内分泌腫瘍について説明します。

浸潤性膵管がん

膵臓にできる腫瘍の90%が浸潤性膵管がんです。膵管がんは膵管上皮細胞の過形成や異形成から発がんし、膵管上皮内がんから膵実質にひろがって浸潤がんに進展すると考えられています。実際には膵管にとどまった段階でがんを見つけることは難しく、多くの人が膵実質に浸潤した状態、浸潤性膵管がんの状態、もしくはそれ以上ひろがった状態で診断されます。

腫瘍性膵のう胞

のう胞とは液体がたまる変化のことで、肝臓にあれば「肝のう胞」、腎臓にあれば「腎のう胞」と言います。同様に膵臓にも良性の「膵のう胞」がありますが、中にはがんに変化していくのう胞もあります。

腫瘍性膵のう胞で代表的なものは「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」、「粘液性のう胞腫瘍(MCN)」「漿液性のう胞腫瘍(SCN)」です。その中で最も頻度が高いのは「膵管内乳頭粘液性腫瘍(以下IPMN)」です。IPMNはその名の通り、膵管の中に盛り上がった形で発生する粘液を産生する腫瘍です。

膵臓には消化液として作られた膵液が流れる管があります。膵臓の真ん中を通っているのが主膵管であり、そこから木の枝のように細い膵管が分かれています。この枝の部分を分枝膵管と呼びます。膵液は膵細胞で作られると近い分枝膵管に分泌され、それぞれの分枝膵管から主膵管に膵液が集められて、膵頭部の方向に流れ、十二指腸にある乳頭部から分泌されています。この膵管にできるのがIPMNです。

IPMNはその名の通り粘液を作り出します。もともと流れている膵液はサラサラな液体で、さらに最も太い主膵管でさえ太さが2-3mmしかないため、そこに粘液が作られると膵液の流れが悪くなり、粘液のたまった部分から流れが滞って膵管が太く変化していきます。

IPMNイコールがんというわけではなく、IPNM自体は良性のIPMNも含んでいます。一般的には良性のIPMNの一部が前がん病変に変化し、その後がんとなって膵管から膵実質までひろがり、浸潤がんになると考えられています。

IPMNはできる位置によってさらに分類され、主膵管にできる「主膵管型IPMN」と分枝膵管にできた「分枝膵管型IPMN」、そして主膵管から分枝にまたがった「混合型」があります。病変が主膵管に及んでいる主膵管型と混合型は一般的に悪性が多いと報告されています。

IPMNは膵管の中が粘液で満たされるため、膵臓の実質部分が縮み、膵臓としての機能も低下し、糖尿病になりやすくなります。

良性のままのIPMN自体の予後は良好ですが、IPMNの患者は別の部位の膵臓がんを約10%の確率で、他の臓器のがんを約30%の確率で合併すると報告されており、合併したがんのほうがその後の予後を決めると考えられています。IPMNは浸潤型まで進んだとしても、膵管がんよりは予後が良いと考えられ、IPMNが浸潤がんになった場合の5年生存率は約60%と考えられています。

膵神経内分泌腫瘍(PNET)

膵臓には稀ですが神経内分泌腫瘍(NET)があります。血糖値を調節するホルモンを産生するランゲルハンス島という部分に発生するがんです。ホルモンの増加による症状を伴うものを機能性NET、ホルモンに関した症状がないものを非機能性NETと分類します。

機能性NETのほとんどはインスリノーマです。インスリンを作り出す機能性NETで、インスリンは血糖を下げる効果があるので、過剰に分泌されると低血糖の症状が現れます。具体的には意識障害、冷や汗、震え、空腹感などの症状がみられます。

そのほかに膵臓に発生する機能性NETはガストリノーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、VIPオーマなどがあります。

膵神経内分泌腫瘍の進行は一般的に緩やかですが、一部は急激に進行するものもあります。PNETの罹患者数は10万人あたり2.7人と稀な疾患で、PNETで手術を行った患者さんの5年生存率はステージ1で95%以上、ステージ2で80%、ステージ4で65%という報告があります。

膵臓がんの進行度(ステージ)

進行度は膵臓がんの病気のひろがり具合を表します。病変の大きさ、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかなどを評価してステージ0から4まで分類し、さらにステージ1と2はAとBに分けられています。一般的に数字が大きくなるにつれ、そしてAよりはBのほうが病気のひろがり具合がひろいことを表しています。

膵臓がんのステージ分類には日本膵臓学会が定めた分類と、国際的に決められたUICC分類があります。
ここでは日本膵臓学会の分類を表示します。

膵臓近くのリンパ節(領域リンパ節)以外の臓器に転移が見られる場合はもっともひろがっている状態と判断されステージ4とします
がんが膵臓近くの大きな血管である腹腔動脈もしくは上腸間膜動脈に及んでいる場合をステージ3とします
膵臓近くのリンパ節(領域リンパ節)に転移がある場合はステージ2Bとします
がんが膵臓の外に飛び出ている場合はステージ2Aとします
がんの大きさが2cmを超えている場合はステージ1Bとします
がんの大きさが2cm以下の浸潤がんはステージ1Aとします
非浸潤がんはステージ0とします

画像検査の結果を上から順番に照らし合わせて、該当するものがステージになります。

膵臓がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、膵臓がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で59.1%、女性で66.0%、全体では62.1%でした(2006~2008年のデータ)。

膵臓がんの5年生存率はどのくらいあるか

2006~2008年の膵臓がんの5年生存率は男性で7.9%、女性で7.5%とがん全体と比較してかなり低い数字となっています。その理由として膵臓がんは早期発見が難しいことにあります。

日本の地域がん登録に基づく2006~2008年のデータではステージ別の5年生存率は、がんが膵臓内にとどまった状態(ステージ0~1Bまでに該当)では38.6%、領域リンパ節にひろがった状態(ステージ2Bに該当)では10.2%、他臓器に転移がある状態(ステージ3~4に該当)では1.3%でした。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

膵臓がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによるとステージ4Aで15ヶ月、ステージ4B で7ヶ月です。このデータは膵臓がん以外で死亡した人も含んでいます。ステージ3の平均余命が約23ヶ月、ステージ2と1では37ヶ月でした。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

膵臓がんの患者数は調査開始の1975年から年々増加し、1986年には10万人あたり10人を突破、2007年には20人を突破、調査最後の2015年には10万人あたり29.5人になっています。この傾向は男女別でも変わりありませんが、全体に男性のほうが患者の割合は多く、2015年の男性は10万人あたり31.9人、女性は27.2人でした。

死亡数の推移

膵臓がんによる死亡者数は、罹患者数と同様に年々増加しています。2000年には10万人あたり15.2人でしたが、2015年には25.4人となっています。

膵臓がんの末期症状とケアに関して

膵臓がんの末期症状

膵臓がんの末期では膵臓の働きが低下し、消化液である膵液が分泌されなくなるため、栄養を正しく吸収できず、体重減少が起こります。内分泌の機能も障害を受け、血糖のコントロールが正しくできないため、糖尿病になったり、糖尿病が悪化したりします。

がんが周囲の神経に及ぶと、胃のあたりの痛みや、背中側に痛みが出ます。がんが膵管のそばにある胆管を圧迫すると、白目や皮膚が黄色くなる黄疸が出現します。

膵臓がん末期のケアについて

膵臓に対する処置

膵臓がんの末期になると、特に膵頭部がんでは膵管や胆管の狭窄や閉塞が起こります。膵液が流れなくなると消化液が分泌されないため、食事の消化吸収の能力が低下して便秘や下痢になったり、膵液が膵臓にたまって膵管が膨らむことによる痛みや、膵液によって膵臓自身が消化され急性膵炎を起こすことがあります。胆汁が流れなくなると胆管や肝臓にたまった胆汁が血液に入り込んで黄疸が出現します。

このような場合はERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を行います。ERCPは特殊な胃カメラのような器具を口から十二指腸まで挿入し、膵液や胆汁の出口である乳頭から管を入れることが可能です。主膵管や総胆管の狭窄部にストロー状の管を入れることで、膵液や胆汁の流れを回復することができます。

膵臓がんが進行すると、正常な膵臓の細胞が減るため、十分な消化液が作れないことがあります。すると十分に食事が摂れていても体重が減少し痩せてきます。その場合には消化吸収の良い経口の栄養剤を服用したり、点滴などで栄養を補うこともあります。

症状に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。
食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

記事内容の修正に関する報告
経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。