膵臓がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

膵臓がんは日本で5番目に多く診断されるがんですが、今でも早期発見の難しい病気でもあります。

膵臓がんとはどのような病気なのでしょうか?そしてどのような人が膵臓がんになりやすいのでしょうか?膵臓がんを予防するにはどのような事に気をつけたらいいのでしょうか?ここではそれらの疑問を明らかにしていきます。

膵臓がんとは

膵臓とは

膵臓は胃の背中側にある臓器で、バナナのような形をしています。膵臓の真ん中を主膵管という管が通っており、膵臓で作られた消化液である膵液が流れています。この管は膵臓の右側にある十二指腸に繋がっています。

膵臓はさまざまな物質を作って分泌する働きをしています。分泌の方法は外分泌と内分泌があります。膵臓が行っている外分泌は食べ物の消化に必要な酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)の入った膵液を作り、主膵管を通じて十二指腸に排出することです。

膵液の流れが妨げられると消化液が足りなくなるため、便秘や下痢などの排便障害が現れたり、栄養をうまく吸収できないため体重が減少することもあります。膵液が適切に排出されず膵臓にたまると膵炎を起こすこともあり、この場合は腹痛や背部痛が現れます。

内分泌とは作ったホルモンを血管の中に分泌することで、膵臓には様々な内分泌細胞があり、血糖の調節を行うインスリンやグルカゴンなどを産生しています。

膵臓がんの分類

がんの部位による分類

膵臓の右側、十二指腸に近い約1/3を膵頭部、膵臓の最も左側約1/3を膵尾部とよび、真ん中の部分は膵体部とよびます。膵臓がんを部位で分けて呼ぶときには、それぞれできた位置で膵頭部がん、膵尾部がん、膵体部がんと呼びます。

発生場所による分類

膵臓がんの約90%は膵液が通る膵管から発生する膵管がんです。膵管がんは浸潤性膵管がん、膵腺房細胞がん、腫瘍性膵のう胞などがあります。内分泌細胞から発生するがんには神経内分泌腫瘍があります。

転移・浸潤・播種の違い

転移:がん細胞が血管やリンパ管に入り込んで、血流やリンパの流れに乗り、膵臓から離れた臓器にうつった状態
浸潤(しんじゅん):がんが大きくなり、膵臓と隣り合う臓器(肝臓、胆のう、胃、小腸など)にまでひろがった状態
播種(はしゅ):がん細胞が膵臓から剥がれ落ちておなかの中にばらまかれ、おなかのあちこちにがんがひろがった状態

膵臓がんの頻度

2014年にがんと診断された人の中で膵臓がんは男性の第7位(10万人あたり30.3人)、女性の第4位(10万人あたり26.6人)、全体では第5位(10万人あたり28.4人)と、とても頻度の高い病気です。

また2017年がんで死亡した人の中で膵臓がんは男性の第5位(10万人あたり28.7人)、女性の第3位(10万人あたり26.3人)であり、全体では4番目(10万人あたり27.5人)に多い疾患でした。

膵臓がんの主な原因とリスクファクター

糖尿病

膵臓がんになった患者の調査では最も多い既往歴は糖尿病で、約4人に1人が該当していました。また糖尿病患者が膵臓がんを発症する危険性は、糖尿病でない人の約2倍と考えられています。特に膵臓がんは糖尿病の発症から1~3年で最も発症しやすいことから、初めて糖尿病と指摘された人では膵臓がんの有無を調べる検査が推奨されます。

糖尿病が膵臓がん発症の危険性を上げる理由としては高インスリン血症やインスリン抵抗性などが関係していると報告されています。

喫煙

ある調査では、喫煙者は非喫煙者と比較して男性では1.59倍、女性は1.81倍膵臓がんになりやすいという結果が出ました。

禁煙が膵臓がんの危険性を減らすかについて調べた調査では、男性は禁煙後5年で膵臓がんになる危険性が非喫煙者と同等程度まで低下しましたが、女性では禁煙しても危険性の改善は認められませんでした。この結果から、男性に限定されますが、喫煙者は禁煙することで膵臓がんの予防につながる可能性が示唆されています。

肥満(男性のみ)

痩せや肥満の程度の指標としてBMIがあります。BMIとは体重(kg)を身長(m)で割り算し、その答えをさらに身長(m)で割ったものであり、日本肥満学会の基準では18.5~25までが正常とされています。例えば身長が165㎝、体重が82㎏の場合のBMIは82÷1.65÷1.65≒30となり、BMIは約30ということになります。

肥満と膵臓がんの関連性を見た調査では、男性でBMIが30以上の人はBMIが正常(23-25)の人と比較して1.71倍膵臓がんになりやすいという結果が出ました。特に20歳のときに肥満であった人は膵臓がんの危険因子と考えられます。またBMIが21未満のやせ型の男性も、正常の人と比較して若干膵臓がんの危険性が上がっていました。

女性では統計的には証明できなかったものの、BMIが高くなると膵臓がんになりやすい傾向はみられています。

これらの報告から、現在肥満がある人も、20歳前後に肥満であった人も特に男性では膵臓がんになりやすいと考えられます。

慢性膵炎

慢性膵炎の人が膵臓がんになる確率は4.1%で、慢性膵炎と診断された人が膵がんを発症する危険性は一般的な可能性の5.8倍になっています。

膵臓がんになりやすい人の特徴

膵臓がんになりやすい年齢・性別

年齢別で発症時期を見た場合、膵臓がんは40歳頃から発症者がみられ、その後年齢が上がれば上がるほど発症者が増えます。男女で比べた場合には、若干男性に多く発症しています。

血縁者に膵臓がんの人がいる

膵臓がんの患者の3-9%には血のつながった家族にも膵臓がんになった人がいます。両親や子供、兄弟に膵臓がんである人が2人以上いる場合は、ほかの人と比較して膵臓がんになる危険性は6.79倍高くなるという報告もあります。

膵臓がんの発生率が上がる遺伝性の疾患は家族性膵がん、遺伝性膵炎、家族性大腸腺腫ポリポーシス、遺伝性非ポリポージス大腸癌(Lynch 症候群)、Peutz-Jeghers 症候群、家族性異型多発母斑黒色腫症候群、遺伝性乳癌卵巣癌症候群があり、これらはまとめて遺伝性膵がん症候群とも呼ばれています。

コーヒーと膵臓がんの関連性

1980年代にコーヒーは膵臓がんになる危険性を増やすと報告されましたが、その後JPHC研究という約13万人の日本人の調査では、女性ではコーヒーの摂取量と膵臓がんになる危険性に関連を認めず、男性に限った場合では逆にコーヒーを飲めば飲むほど膵臓がんになりにくいと報告されました。

しかし、10万人以上の日本人を調査した報告では、統計学的にはコーヒーを飲むと膵臓がんになりやすいという証明は出来ませんでしたが、1日4杯以上のコーヒーを飲む場合の膵臓がんで亡くなる危険性は全く飲まない人と比較して男性でや3.1倍、女性で約1.7倍高いと報告されました。

これらの報告をまとめると、コーヒーをたくさん飲むと膵臓がんになりにくいが、膵臓がんになってしまったら死亡する危険性が高くなる、ということになります。日本人におけるコーヒーと膵臓がんの関係性はまだまだ明らかになっていない、と言えるでしょう。

予防と早期発見のコツ

膵臓がんの予防

膵臓がんになる危険性を下げるためには食事や運動を見直して肥満や糖尿病にならないように気をつけること、そして禁煙することが重要です。またアルコールをたくさん摂取することは膵臓がんの危険因子である慢性膵炎の原因になるので、お酒の飲みすぎにも気をつけましょう。

膵臓がんは健康診断や人間ドックでも見つけにくい

膵臓がんに関連した検査としては腫瘍マーカーやいくつかの画像検査がありますが、無症状の段階で膵臓がんを見つけられる可能性のある検査は腹部単純CTと腹部超音波検査です。ただし、腹部超音波検査は腸のガスが多いと膵臓全体を見ることが難しく、また腹部単純CTは小さな病変は見つけられないことが多く、どちらの検査でも早期がんを必ず見つけられるという検査ではありません。腫瘍マーカーも早期の段階では多くが正常範囲です。

膵臓がんを疑って検査を受けるきっかけとしては心窩部痛や背部痛があるとき、初めて糖尿病を指摘されたときがあります。そのほかにも家族に膵臓がんになった人がいる、20歳の時に太っていた男性は症状がなくても人間ドックなどでは腹部CTや超音波のオプションをつけるようにするとよいかもしれません。

ただし検診や人間ドックに限らず、普通に病院で精査を行っても、膵臓がんを早期で見つけることはとても難しいので、症状があるのに原因がわからない場合は、複数の検査で調べてみる、時間を空けて同じ検査を受ける、といった工夫も必要です。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。