手術数で分かる膵臓がんの名医がいる病院ランキングトップ10

膵臓がんと診断を受けたら、どの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?

頻度の多い膵頭部がんに対し行なわれる膵頭十二指腸切除術は、多くの臓器を切除し、細かな管をつなぐ非常に難しい手術です。このような場合には、この手術の経験が豊富な病院で治療を受けるほうが安心かもしれません。

手術以外の治療を行う場合でも、病院によって使う抗がん剤の種類が異なったり、放射線治療の装置があるかどうかによって勧められる治療が異なる可能性があります。治療方針を決めるためにあまり時間はかけられないのが現状ですが、そのような場合には膵臓がんの患者を多く見ている病院で話を聞くことも検討しても良いかもしれません。

膵臓がんの手術数の多い病院は膵臓がん治療の経験が多い病院と考えられるので、ここでは膵臓がんの手術数をDPCデータからランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。

膵臓がんの手術が適応となる症例

膵臓がんで手術適応となるのは、ステージ0、1に該当する場合とステージ2、3でがんが切除が可能な範囲におさまっている場合です。実際にはステージを評価したうえでそのほかに年齢や体力、基礎疾患などを考慮して手術を行うかどうかを決定します。

手術のメリットは病変を切り取り体外にとりだすことから、目に見えるがんは確実に体内から消えること、さらに取り出した病変を顕微鏡検査することにより、がんのタイプの評価を直接行うことができる点です。

デメリットとしては手術や全身麻酔に関連する合併症があります。どの手術でも起こりうる出血、縫合不全、肺炎、下肢深部静脈血栓、肺血栓塞栓症、創部感染、せん妄などのほかに、腹部の手術で多い腸閉塞や腹腔内膿瘍、また膵臓がんで多い膵頭部がんの手術の場合は小腸と胆管、小腸と膵管をつなぐため、胆汁や膵液が漏れる胆汁漏、膵液漏といった合併症がありえます。

そのほかに肝臓の消化液と通り道である胆道や十二指腸も切除した場合は術後、消化吸収の機能が変わるので、便秘や下痢になったり、一度に食べられる量が減ったりします。

手術はがんの大きさや範囲によって基本的に以下のいずれかの術式で行われます。

・膵頭十二指腸切除術:膵臓がんで多く発生する、膵頭部のがんで一般的に行われる手術です。膵頭部には近くに胆管があり、さらに膵液が十二指腸に排出される十二指腸乳頭部もあるので、切除範囲は「膵頭部・十二指腸(乳頭部を含む)・胆管・胆嚢」になります。がんが胃に及んでいる可能性がある場合は、胃の一部も一緒に切除することがあります。

・膵体尾部切除術:体尾部のがんの場合は膵臓の体尾部を切除します。合わせて膵臓の左にある脾臓も切除するため、「膵体尾部・脾臓」を切除する手術です。

・膵全摘術:がんが膵臓全体に広がった場合に行われます。膵臓全体を摘出します。
手術後は膵臓の機能がまったくなくなってしまうため、血糖コントロールのためのインスリン注射が必要になります。

膵臓がん手術数トップ10

厚生労働省が集計し公表している平成29年度のDPCデータをもとに、膵臓がんに関連した手術件数の多い病院トップ10です。

DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。

ここでは膵臓がんについて報告された手術の症例数でランキングを作成しました。

膵臓がん手術のデータ

膵臓がん手術症例の多い病院:数字は年間症例数

1.公益財団法人 がん研究会 有明病院(140例)
2.国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(101例)
3.静岡県立静岡がんセンター(99例)
4.名古屋大学医学部附属病院(95例)
5.地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(93例)
6.国立大学法人 千葉大学医学部附属病院(90例)
7.国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(85例)
8.九州大学病院(81例)
9.東京医科大学病院(78例)
10.和歌山県立医科大学附属病院(77例)
   

手術数以外にも注目したいポイント

高度技能専門医修練施設

日本肝胆膵外科学会では、特に難しい肝胆膵の外科手術の専門医制度を取り入れています。この専門医になるためには認定された施設で決められた期間修練と外科手術の経験を重ね、定められた症例数の手術を行ったうえで、行った手術のビデオを提出し審査を受けなければならないという非常に厳しい基準があります。

この専門医を取得するために修練先として指定されているのが高度技能専門医修練施設です。この施設の選定にも基準があり、高難度肝胆膵外科手術を100例以上行った高度技能指導医が少なくとも1名在籍していなければなりません。

1年間に高難度肝胆膵外科手術を50例以上行っている施設を修練施設A、30例以上行っている施設を修練施設Bと定め、2016年時点では日本全国に修練施設Aが111施設、修練施設Bが106施設となっています。日本肝胆膵学会のホームページで誰でもこの修練施設の検索が可能です。

手術をするかどうか迷うような症例や、難しい手術になることが予想されるときには、地域にあるこのような病院を探してみてもいいでしょう。

がん診療連携拠点病院

がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制を整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。

膵臓がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。

病院によって勧められる治療が異なることがある

膵臓がんは治療のガイドラインがありますが、どの抗がん剤を使うか、重粒子線治療の装置があるかどうかなどにより、病院によって勧められる治療方針が異なる可能性はあります。

治療方針を相談する場合には、その病院ではどの治療ができるのか、その中でどの治療が適していると考えられるのか、ほかの病院では別の治療方法があるのかといったことも聞いておくと納得して治療が受けられるかもしれません。

一般的に膵臓がんの治療は手術をしたらそれで終わり、ということではなく、手術後に抗がん剤の補助療法を行ったり、定期的に検査を受けたり、長く付き合っていく病院になることが多いので、通院が負担にならないような病院であることも考慮しましょう。

治療開始までの期間

一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。特に進行がんになるとがんの発育速度は急激に早くなるという報告もあります。

治療に入るまでの期間を公表している病院の平均的な待ち時間は以下の通りです。
手術  2-3週間 
化学療法 1週間
放射線治療 2-3週間

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。