口腔がんのステージ別生存率と平均余命

テレビの医療ドラマなどで「あなたのがんは、ステージⅢです。」といった表現が出てきます。このステージ(臨床病期)は、その数値が大きいほどがんが広がっている・進行していることを示しています。

がんの種類によってこのステージの決め方は異なり、また数年ごとに改訂されます。改定された結果は「口腔癌取扱い規約」などに記載されます。

このステージとはなにか、そして、それがどういう意味を持つのかを見ていきます。

口腔がんの種類と進行度について

舌がん

舌癌のステージの決め方は細かいルールがあるのですが、2020年1月現在は、以下の3項目についての組み合わせで病期が決まります。

1. がんそのもの(原発)の大きさと深さ(Depth Of Invasion; DOIと言います)
2. 首のリンパ節への転移の有無:転移がある場合はリンパ節の大きさ、片側だけか両側におよぶのか、またリンパ節からがんの飛び出し(節外浸潤)があるか
3. がんが首のリンパ節を超えて、肺・肝臓・骨・脳など別の組織に転移(遠隔転移)があるか

その場に留まりやすい性格のがんより遠くに飛びやすい性格のがんの方が悪性度は高いと考えますので、それを反映させています。

がん原発の深さなどは手術をして切除した組織で確定しますので、手術前後でステージが変更になることもあります。

上顎、下顎歯肉がん

歯肉のがんの場合、原発が歯肉の中にとどまるのか、それともすぐ隣にある骨にまでがんが広がっているのかで判断が変わります。

口腔がんのステージ別5年生存率

口腔がんの生存率の統計データは、患者の数・年齢・住んでいる地域など、様々な背景があります。全国がん登録が開始されましたので、今後は大規模なデータに基づく統計が出てくるでしょう。

一つの参考のデータとしては、2020年1月23日現在、全がん協は口腔がん1895例についてホームページで公開しています。そのうちわけは、口腔がん全体での5年生存率はステージⅠ:77.6%、ステージⅡ:65.3%、ステージⅢ:56.5%、ステージⅣ:37.1%、そして全ステージで見ると52.5%という結果でした。

ステージⅣの平均余命とは

5年生存率はステージⅣの場合、舌がんで49.3%(およそ半分)というデータがあります。これは患者の年齢や基礎体力、それによって受けることのできる治療内容、糖尿病や高血圧など基礎疾患などの因子もありますので、若くて基礎疾患のない方で、可能な治療を受けた場合は、より良い成績になります。

罹患数と死亡数の推移

口腔がんにかかる患者数は年々増加傾向にあります。その原因は諸説あります。

口腔がんの認知度が低い

人口10万人のうち年間6例以下のがんを「希少がん」といいます。口腔がんはこの「希少がん」の1つです。希少がんは200種類あります。肺がんや大腸がんは著名人の報道や近親者・友人などで見られることがあるかと思いますが、それに比べて口腔がんはなじみが薄い疾患かと思います。

「お口の中にもがんが出来るんですね!」と驚かれる方も少なくありません。

口腔がんの初期が口内炎に似ている。

これは歯科医師でも判断に迷うことがありますが、口腔がんの初期は口内炎によく似ていることがあります。まず口内炎と思ってステロイド軟膏で経過をみるのですが、なかなか小さくならないと来られる時にはある程度進行した状態になっています。

口腔がん専門医にかかりにくい

近年、医療機関の整理統合や都市部に集中したり、公共交通機関(バスなど)の廃止により、離島や遠隔地などでは口腔がんの専門医に受診しにくくなっていることも、発見・治療開始が遅れることになります。

農家は収穫期など繁忙期は本業が優先される

地方の場合、農業を営んでおられる方にとって、種まき/田植え・収穫期は繁忙期です。この間は農家にとっては一年間の収入に直結する非常に大切な時期ですので、病院受診が後回しになります。その間にがんはどんどん進行していきます。

医療費負担の増加、経済状態

年々窓口負担額が増加していることが影響しています。高齢者は1割負担だったのが2割に増えたり、最近では3割に改定する動きもあります。

また、家庭の経済状態の悪化もあります。賃金の伸び悩み、貯蓄率の低下、可処分所得の減少により、生活にかかる費用の中で、医療へお金をかけることが年々困難になってきているため、病院受診が困難になり、治療開始が遅れることになります。

口腔がんの末期症状とケアに関して

口腔がんの末期とは?

口腔がんの治療は手術療法、化学療法(抗がん剤、分子標的薬)、放射線療法があります。

手術療法は重要な血管の近くまでがんがあるなど、手術で全てのがんが取りきれない場合や心機能低下や呼吸器疾患などの問題で、全身麻酔での手術が耐えられない場合は、手術ができないと判断します。ただし、近年は健康な高齢者が増えてきましたので、年齢だけで手術の可否を判断するのではなく、本人の体力や全身疾患の内容・程度によっては手術できる症例が増えてきました。

化学療法も肝機能、腎機能、心機能、副作用に耐えるだけの体力がないと判断された時には、使えないと判断します。

放射線療法は貧血などがなければできることが多いのですが、一生のうち、放射線が照射できる線量の限界というのがあり、過去に許容範囲まで照射されていれば、それ以上照射すると、脊椎やあごの骨が炎症を起こすため、治療ができません。

上記のどの治療法もできない時期を末期(ターミナル)と呼びます。この時期になると、最近ではBest Supportive Careという言葉があるように、残された人生を有意義なものにすることに重点をおきます。これは、がんの進行速度によってはすぐに死亡するわけではなく、可能な限り今まで通りの生活が送れるように、その問題となる部分に医療介入します。

末期で一番問題となるのは、がんによる痛みです。がんが神経を圧迫したり、直接侵すようになると、激痛が持続的に発生します。この痛みへの対応として、アセトアミノフェン、ロキソニンなどの痛み止めだけでなく、モルヒネ、オキシコドンなどの麻薬系薬剤も一緒に使うことがあります。

がんの末期は、がんが全身に転移する場合、肺、肝臓、骨、脳などに転移します。肺に転移すると肺炎や気道閉塞など呼吸障害を引き起こし、骨では脊椎や骨盤に転移すると、骨を溶かし、溶けて出たカルシウムなどが意識障害、呼吸障害などを引きおこします。

ホスピス、緩和ケアについて

このようなターミナルの患者さんの苦痛を和らげる治療を行う施設をホスピス(緩和ケア)といいます。ここではがんによる痛みの管理および最低限の輸液を行いますが、抗がん剤の投与などは行いません。

自宅に往診して処方・点滴している施設もあれば、自宅での管理が難しい状況になった場合に入院できる施設があるホスピスがあります。

参考文献

記事内容の修正に関する報告
  • 歯科医師
  • 見立 英史
  • 日本口腔外科学会専門医・認定医、日本口腔科学会認定医
紹介:
親知らずの抜歯から口腔がんまで、さまざまなお口の病変について日々診療しています。