肺がんのステージ別生存率と平均余命

肺がんと診断されたら、今後のことが気になるかもしれません。進行度(ステージ)は病気のひろがり具合を分類したもので、この分類によって治療方針を決定する重要なものです。

基本的にステージが進む(数字が大きくなる)と病気が進行していることを表し、予後は厳しくなります。予後を数字化したものには“余命”と“5年生存率”があります。“余命”はあとどれだけ生きられるかを数字化したもので、そのステージの人の50%が亡くなる時期を“平均余命”と表現します。この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、この数字はあくまで目安で、実際にはかなり幅があるものです。病院の説明でよく使わるのは”平均余命”よりも”生存率”です。特に”5年生存率”はその病気の治療効果を表現するためによく使われます。

簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。

肺がんの種類と進行度について

肺がんの種類

組織型による分類

肺がんの治療は小細胞がんとそれ以外で異なるため、まずは小細胞がんとそれ以外の非小細胞がんに分けます。非小細胞がんには腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんがあります。

小細胞がん
肺門部・肺野どちらにもみられる
タバコとの関連が強い
増殖速度が速く転移や再発しやすい

非小細胞がん

腺がん
肺がんの中で最も多いタイプ(肺がんの60%)
肺野に多い
特に非喫煙者や女性の肺がんで多くみられる
扁平上皮がん
比較的肺門部にできやすい
タバコとの関連が強い
咳や血痰といった症状が現れやすい
大細胞がん
肺野に多い
増殖スピードが速い

肺がんの進行度(ステージ)

進行度は肺がんのひろがり具合を表します。病変の大きさ、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかなどを評価してステージ0から4まで分類したものです。
さらにステージ1はA1、A2、A3、Bに、ステージ2はAとBに、ステージ3はA、B、Cに、ステージ4はAとBに細かく分類されます。

ステージ4
反対の肺や他の臓器に転移がある
ステージ3
病変が周囲に浸潤、もしくは縦隔リンパ節に転移がある
ステージ2
同側の肺門部に限りリンパ節転移がある、もしくはリンパ節転移はないが腫瘍が大きい(3㎝以上)
ステージ1
リンパ節転移がみられない
ステージ0
充実成分がなく、3㎝以下のすりガラス状の病変のみ

画像検査の結果を上から順番に照らし合わせて、該当するものがステージになります。

転移・浸潤の違い

転移:がん細胞が血管やリンパ管に入り込んで、血流やリンパの流れに乗り、肺から離れた臓器にうつった状態。
浸潤:(しんじゅん):がんが大きくなり、肺と隣り合う臓器(胸壁や大血管など)にまでひろがった状態。

肺がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、肺がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。
がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

肺がんの5年生存率はどのくらいあるか

2009~2011年の肺がん5年生存率は男性で29.5%、女性で46.8%、全体では34.9%であり、がん全体と比較して厳しい数字になっています。

また2010~2011年のステージ別5年生存率は、以下のように報告されています。
ステージ1:81.6%
ステージ2:46.7%
ステージ3:22.6%
ステージ4:5.2%

なお、九州大学医学部附属病院が発表している肺がんと診断されたときのステージはステージ1が54%、ステージ2が5%、ステージ3が15%、ステージ4が26%となっています。また健康診断や人間ドックで病気が発見された人の割合はステージ1~3は15%程度ですが、ステージ4は7%と低下しており、早期発見にはやはり検診が重要であることが分かります。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

肺がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによると11ヶ月でした。ステージ2B~3Bは20カ月前後、ステージ2Aは37カ月、ステージ1Bで53カ月となっています。このデータは肺がん以外で死亡した人も含んでいます。喫煙者は肺がんだけではなく他のがんの発症リスクもあがり、またがん以外に脳卒中や虚血性心疾患といった命に関わる病気になる危険性も増えるため、他の疾患が肺がんの平均余命に影響を与えている可能性があります。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

肺がんの男女合計の患者数は調査開始の1975年の10万人あたり15.8人から年々増加し、1995年には10万人あたり45.1人、2015年には91.4人となり、この20年で2倍に増加しています。この増加傾向は男女別でも変わりありませんが、男性のほうが患者の割合は多く、2015年の男性は10万人あたり126.8人、女性は57.9人でした。

死亡数の推移

肺がんによる死亡者数は、罹患者数と同様に年々増加しています。1990年には10万人あたり29.7人でしたが、2015年には2倍の59.8人まで増加しています。

肺がんの末期症状とケアに関して

肺がんの末期症状

がんが大きくなり正常な肺の組織が減ったり、気管支を圧迫すると、呼吸できる肺の容量が減って息苦しさが出たり、体の酸素の量が低下し、酸素吸入が必要になります。また、肺にがんという異物ができることで痰の増加や咳が現れます。肺の中には痛みを感じる神経ほとんどなく、肺を覆っている胸膜で痛みを感じ取るため、がんが肺の中にある間は痛みを感じることはありませんが、病変が胸膜までおよぶと痛みを感じるようになります。また、がんが胸膜まで浸潤して炎症を起こすと胸水が増えて肺を圧迫するようになります。

声帯の動きをつかさどる反回神経は脳を出たあと一旦胸まで下りて、再び喉まで上がって声帯につながっています。そのためこの反回神経の通り道にがんがおよぶと反回神経麻痺をきたして、声がかすれたり、誤嚥の原因となります。
また肺のもっとも上、肺尖部(はいせんぶ)にがんができると腕の神経を傷つけることがあり、その場合には肩や腕の痛みが現れます。

上半身の血液が心臓に戻る上大静脈を圧迫すると腕や顔のむくみが現れます。

肺がん末期のケアについて

肺や気管支に対する処置

胸水が貯まり、肺を圧迫するなど症状が出てきた場合には、皮膚から針を刺して水を抜きます。大量に胸水がたまる場合や頻回に水を抜く治療を繰り返す場合には、胸水を抜いた後に肺と胸壁をくっつける薬剤を注入し、水が貯まるスペースをなくしてしまう胸膜癒着術を行なうことがあります。
がんが気管支を圧迫した場合は、ストロー状のものを気管支に挿入し、空気の通り道を確保するステント留置術が行われます。

症状に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。医療用麻薬は痛みだけでなく呼吸苦を和らげる効果もあります。低酸素に対しては酸素吸入も行います。
食欲不振や低栄養については、栄養剤や点滴などによる栄養療法を考慮します。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。