肝臓がんのステージ別生存率と平均余命

肝臓がんの治療方針を決めるためには、各種検査から病気のひろがりを判断し進行度(ステージ)を診断する必要があります。がんと診断されると「私はあとどれだけ生きられるのだろう」と思われるかもしれません。この「あとどれだけ生きられるか」は”余命”といい、その病気の状態の人の50%が亡くなる時期を”平均余命”といいます。この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、同じ肝臓がんであってもステージによって異なります。そして、”平均余命”とはあくまで目安で、かなり幅があるものです。

病院の説明でよく使わるのは”平均余命”よりも”生存率”です。特に”5年生存率”はその病気の治療効果を比較するためによく使われます。簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。ただし肝臓がんの場合はただ単にがんの経過によって予後が決まるわけではなく、慢性肝炎や肝硬変の有無などもともとの肝臓の状態や同じステージであっても様々な治療方法によって異なるので、あくまで生存率は目安と考えてください。

肝臓がんの種類と進行度について

肝臓がんの種類

広い意味での肝臓がんは、肝臓から発生したもの(原発性)と他の臓器にできたがんが肝臓に転移したもの(転移性)があります。また、肝臓内にできたがんでも10%は肝臓内にある胆管という管から発生した胆管細胞がんで、残り90%を占めるのが肝細胞癌です。

肝細胞がん

肝臓を構成する肝細胞から発生するがんです。多くはB型もしくはC型肝炎ウイルス感染により肝臓で炎症が繰り返された結果、がんが発生します。肝臓の内部には痛みを感じる神経がないため、肝臓がんに特有の症状はありません。健康診断などで肝機能障害を指摘されたり、肝炎ウイルス感染を指摘された人が定期的に画像検査を受けることにより、無症状でも早期にがんを発見することができます。

肝細胞がんで手術治療を行った患者の3年生存率は67.1%、5年生存率は53.2%です。

胆管細胞がん

胆管とは肝臓で作られた胆汁という消化液を十二指腸に分泌するための管です。その管から発生する胆管細胞がんは大きくなると胆汁の排出を妨げるため黄疸が出ることもありますが、部位によっては全く無症状のこともあります。
肝細胞癌と異なり、肝炎ウイルス感染とはあまり関係がなく、肝炎ウイルスに感染していない人でも発症する可能性があります。

胆管細胞がんは抗がん剤が効きにくく、基本的な治療は手術になりますが、胆管だけを手術でとることはできず、一緒に肝臓を切り取ることになるので、がんの範囲が広い場合や肝臓の機能が低下しているときは手術治療が選べられないときもあります。

胆管細胞がんで手術をした場合の3年生存率は34%、5年生存率は29%です。

肝臓がんの進行度(ステージ)

進行度は肝臓がんの病気のひろがり具合を表します。病変の大きさ、個数、位置、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかなどを評価してステージ1から4まで分類し、さらにステージ4はAとBに分けられています。一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。

肝臓とリンパ節以外の臓器に転移が見られる場合はもっともひろがっている状態と判断されステージ4Bと表現されます。

他の臓器に転移はないもののリンパ節に転移がある場合はステージ4Aと表現されます。

リンパ節や他の臓器に転移がない場合は以下の項目にいくつ該当するかによってステージ1~4Aに分類します。

  • 腫瘍が1個である
  • 腫瘍の大きさは2㎝以下である
  • 肝臓の中にある脈管(動脈・門脈・胆管)にひろがっていない

・・・すべてに該当しない:ステージ4A
・・・1つだけ該当:ステージ3
・・・2つに該当:ステージ2
・・・3つとも該当:ステージ1

肝臓がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、肝臓がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で59.1%、女性で66.0%、全体では62.1%でした(2006~2008年のデータ)。

肝臓がんの5年生存率はどのくらいあるか

2006~2008年の肝臓がんの5年生存率は男性で33.5%、女性で30.5%とがん全体と比較して低めの数字となっています。

数字が低めである理由として肝臓がんになる多くの患者は肝炎ウイルス感染により肝硬変になっており、肝硬変そのものもしくは肝硬変による食道静脈瘤などほかの肝臓に関連した病気を発症しやすいこと、また肝炎ウイルスに持続的に感染することで肝臓全体ががんを発生しやすい状態になっており、1つのがんを治療しても、肝臓の別の場所にあたらしいがんが出てくることがあるためと考えられます。

国立がん研究センター協議会の2007~2009年の患者の報告によるステージ別の5年生存率は、ステージ1で59.6%、ステージ2で35.6%、ステージ3で14.0%、ステージ4で1.9%でした。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

肝臓がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによるとステージ4Aで16か月、ステージ4Bで7カ月です。このデータは肝臓がん以外で死亡した人も含んでいます。ステージ3の平均余命が約50カ月であることと比較すると、ステージ3とステージ4には大きな差があることが分かります。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

国立がん研究センターの報告によると、1975年以降徐々に罹患率は増加し、1995年には10万人あたり30人を突破しましたが、2008年に10万人あたり38.0人のピークを迎えた後、徐々に罹患率は低下し、2015年には10万人あたり31.4人になっています。

将来の予測データでは今後さらに肝臓がんの罹患率は低下してくことが予想されています。その理由として現在行われている肝炎ウイルス感染の対策により、新たにB型肝炎やC型肝炎に感染する患者が減ってきていることが関係していると考えられます。

死亡数の推移

肝臓がんによる死亡者数は、公表されている1958年以降徐々に増加していましたが、2002年の10万人あたり27.5人をピークに緩やかに減少傾向となり、2017年には10万人あたり21.8人になっています。

肝臓がんの末期症状とケアに関して

肝臓がんの末期症状

肝臓がんの末期症状としては肝臓の病変が大きくなることによる右上腹部痛や、胆汁の流れが妨げられることによる黄疸などがあります。肝硬変がある人ではさらに肝硬変の症状として腹水や足のむくみ、血が止まりにくい、便に血が混じるといった症状も出てくることがあります。

肝臓がん末期のケアについて

肝臓に対する処置

多くの肝臓がんは肝炎ウイルスによる肝硬変を伴っているため、がんに対する処置だけではなく肝臓を守る治療が必要です。肝臓で栄養がうまく使えなくなると、蛋白質が減り痩せてきます。その場合は蛋白質の元になる栄養素を摂ったり、薬で補ったりします。

肝臓の解毒作用が低下すると、アンモニアなどの物質が蓄積して脳に作用し、異常行動や意識障害を引き起こす肝性脳症という状態になります。特に便秘や脱水になると肝性脳症になりやすくなるので、必要に応じて点滴を行ったり、下剤を使用して便秘にならないようにします。

肝臓内で作られた胆汁は本来十二指腸に分泌されますが、がんにより流れが妨げられると逆流して黄疸が出てきます。胆汁の成分はかゆみの原因となるので、全身にかゆみが出てきた場合はかゆみ止めの飲み薬や塗り薬を使用します。

肝硬変になると文字通り肝臓が硬くなります。すると本来肝臓に流れるはずだった血液が他の部分に流れ、その部分の血管が太くなります。特に多いのは食道や胃の血管が太くなる食道/胃静脈瘤です。太くなった血管は壁が薄くなり、容易に大出血を起こすので、胃カメラや血管に管を入れて血流を低下させる治療が行われます。

そのほかに血流が増えた影響で血管から染み出た水分が本来無い場所にたまったりします。特に多いのは腹水です。お腹には時に10L以上の水がたまることもあり、腹部膨満や食欲不振の原因になります。軽い場合は内服薬で腹水が増えないように調節しますが、飲み薬で調節できなくなると管をいれてたまった腹水が血管に戻るようにしたり、繰り返しお腹に針を刺して水を抜く治療などが行われます。

症状に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。