肝臓がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

肝臓がんは他のがんと同様に早期発見が重要です。しかし肝臓がんは症状が乏しく、自覚症状だけで早期発見することは難しい病気です。そこで大切になるのは健康診断や人間ドックです。肝臓がんを早期に見つけるためにはどのような検査に注目したらよいのか、オプションはどのような検査でどのような費用なのか、肝臓がんが疑われたらどんな検査をするのか、といったことを紹介します。

肝臓がんの主な初期症状

症状

肝臓は大きな臓器で、中には痛みを感じる神経がないので、初期にはなかなか症状が現れません。肝臓の表面を覆っている被膜という膜にだけ痛みの神経があるので、肝臓がんが大きくなって、肝臓の被膜を引き延ばすようになると初めて痛みが出ることもあります。

肝臓の主な役割としては血液をろ過して有害物質を取り除いたり、腸で吸収された栄養を貯めておく、食べ物に含まれる脂肪の分解を助ける胆汁を作る、といったことをしているので、肝臓が悪くなれば有害物質が体にたまってだるさが出たり、栄養バランスが崩れたり、胆汁が分泌できなくなり胆汁の色である黄色に皮膚が染まる黄疸が出たりします。しかしこれは肝臓がんの症状ではなく、肝硬変などでも現れる症状です。日本人の肝臓がんの多くはB型やC型肝炎ウイルス感染から慢性肝炎、肝硬変を経て発症するので、これら慢性肝炎や肝硬変の症状にも注意が必要です。

肝臓がんに関係する血液検査

肝臓の状態を見るための検査

肝臓がんの原因となるB型、C型肝炎ウイルスに感染すると、まずは急性肝炎を起こすため、一般的には肝臓に関する数字が上がります。肝臓に関する血液検査は以下の通りです。

AST(GOT)
肝臓の細胞が壊れると上がります。
ALT(GPT)
肝臓の細胞が壊れると上がります。
LDH
肝臓以外に赤血球や心臓、腎臓などでも作られる酵素です。肝臓の細胞が壊れても増加しますが、ほかの病気でも上がります。
γ-GTP
肝細胞や胆管にある酵素で、アルコール摂取によりたくさん作られて増加します。そのほかに胆管が壊れたり、胆汁の流れが妨げられると増えます。
ALP
肝臓では胆汁の流れが妨げられると増えますが、肝臓以外の臓器にも存在するので、肝臓以外の病気でも増えることがあります。
T-Bil(総ビリルビン)
寿命となって壊れた赤血球から出てくる黄色い色素です。胆汁の流れが妨げられると増加しますが、血液疾患など他の病気でも増えることがあります。
D-Bil(直接ビリルビン)
総ビリルビンのうち、肝臓で処理され胆汁に放出されるビリルビンです。胆汁の流れが妨げられると増えます。
ChE(コリンエステラーゼ)
肝臓で作られる酵素で、脂肪肝で上がり、肝硬変で下がります。
NH3(アンモニア)
肝臓の機能が低下すると、有害物質であるアンモニアの分解ができなくなり、アンモニアが増加します。
Alb(アルブミン)
蛋白質の一部で、肝細胞で作られる成分のため、肝臓の機能が低下するとアルブミンも低下します。
Plt(血小板数)
血を止める役割をする血液成分です。肝硬変になると血小板が作られなくなったり、壊れる量が増えるため、血小板数は低下します。
PT(プロトロンビン時間)
プロトロンビンは血液を固める成分で、肝臓で作られています。プロトロンビン時間とは血液が固まるまでの時間で、肝臓の機能が低下するとプロトロンビン時間は長くなります。
HBs抗原
陽性であれば現在B型肝炎ウイルスに感染しているということになります。
HCV抗体
陽性であればC型肝炎ウイルスに1度は感染したということになります。現在体内にC型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは追加の血液検査が必要です。

肝臓がんの際に検査される腫瘍マーカー

AFP(アルファフェトプロテイン)
肝臓がんでも増えることがありますが、別の肝臓の病気でも増加することがあります。
AFP-L3
AFPの成分の1つで、他の肝臓の病気の影響を受けずに肝臓がんのみで増加する成分です。
PIVKA-Ⅱ(ピブカツー)
ビタミンK欠乏やワーファリンの内服でも増加します。

肝臓がんの自己診断チェック

自己診断のみで肝臓がんかどうかを判断することはできませんが、肝臓がんや肝臓がんのリスクの高い肝硬変を疑う症状は以下の通りです。
当てはまる項目が多い場合は、病院受診をお勧めします。

  • 白目の部分が黄色い
  • 全身がかゆい
  • 手のひらが赤い
  • あざができやすい
  • お腹の右上が痛い
  • 疲れやすい
  • むくみやすい
  • これまでに肝臓の数字が悪いといわれたことがある
  • 毎日日本酒3合もしくはビールで中瓶3本以上のアルコールを飲んでいる
  • 刺青がある
  • 1988年(昭和63年)以前の生まれである

検診と検査項目

肝臓がん検診について

全国的にはほとんどの市町村で直接肝臓がんの有無を診断する検査は行われていません。代わりに2002年から対象者に限って、B型・C型肝炎ウイルスの検査が行われています。検査内容は血液検査で、B型肝炎ウイルスの感染を検査するHBs抗原とC型肝炎ウイルス感染の既往を検査するHCV抗体検査を行います。

HBs抗原検査が陽性であれば体内にB型肝炎ウイルスがいるということを意味しますが、HCV抗体陽性の場合は、過去にC型肝炎ウイルスに感染したが今は体内にウイルスがいない場合と、今も体内にウイルスがいる場合があるため、追加検査で区別する必要があります。

全国の1割以下ですが、市町村によっては超音波(エコー)を用いて直接肝臓の中にがんを疑う所見がないかを見る検査を行っているところもあります。

人間ドックや任意検診における肝臓がん検査

血液検査(肝機能検査)

腫瘍マーカー

腹部超音波検査(エコー検査)

空腹状態でお腹にゼリーを塗り、機械をあてて肝臓の形を見ます。放射線を使用せず行うことができる点が利点ですが、お腹にガスがたまったりしていると肝臓の一部が検査できないことがある、検査を行う人の技能により検査の正確度が異なる、検査の記録が一部しかできないため客観性に劣る点がデメリットとしてあります。

腹部単純CT

放射線を用いて肝臓の形を見る検査です。肝臓だけでなく、他の腹部の臓器も一緒にみることができます。ただし、肝臓がんに限った場合、造影剤を使わない単純CTでは正常な肝臓とがんの区別がつきにくく、小さながんの発見は困難です。

腹部単純MRI

磁気を使用した検査です。CTと同様に他の腹部の臓器も一緒にみることができますが、造影剤を使わないと小さいがんは見つけられないことがあります。

肝臓がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ(肝臓がんの可能性があるかどうかを見る検査)

血液検査(肝機能検査)

肝炎ウイルス検査

腫瘍マーカー

これら3つの検査はすべて血液検査で、肝臓がんの人に多い肝炎ウイルス感染などを調べます。いずれかの検査に異常があったとしても、肝臓がんであるとは限りません。これらの検査は肝臓がんの可能性が高い人を見つけ出す検査と考えてください。

肝臓超音波(エコー検査)

腹部単純CT

腹部単純MRI

これらは画像検査ですが、病変によってはこれらの検査で確定診断できる場合と、できない場合があります。がんの種類や大きさなどにより、ある画像検査では見つけられなくてもほかの画像検査では発見されることもあるので、いくつかの画像検査を組み合わせたり、今回はCT検査、次回はMRI検査を行うといった工夫が必要なこともあります。確定診断できない場合はセカンドステップの検査を行います。

セカンドステップ(肝臓がんかどうか確定診断する検査)

腹部造影CT

腹部造影MRI

造影超音波

血管造影

これら4つの検査は、がんを目立たせて画像検査で見やすくするために造影剤を用いる検査です。

生検(病理検査)

超音波やCTなどで病変を確認しながら腹壁から針を刺し、病変の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を見る検査です。

検診にかかる平均費用

健康診断・人間ドックで受ける検査

  • 肝炎ウイルス検査 1項目1200円
  • 腫瘍マーカー 3000円
  • 腹部超音波検査 6000円

保険適応で受ける検査

  • 肝炎ウイルス検査 B型肝炎 3割負担 87円、1割負担 29円
  • 肝炎ウイルス検査 C型肝炎 3割負担 333円、1割負担 111円
  • 腹部超音波検査(エコー検査)3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 造影超音波 3割負担 4500円、1割負担 1700円
  • 単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
  • 血管造影検査 3割負担 12000円、1割負担 4000円
  • 腫瘍マーカー PIVKA-Ⅱ 3割負担 429円、1割負担 143円
  • 腫瘍マーカー AFP  3割負担 321円、1割負担 107円
  • 肝生検(病理検査) 3割負担 60000円、1割負担 20000円
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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。