腎臓がん治療と副作用について

腎臓がんの治療の基本は手術です。手術の方法はいくつか選択肢があり、病院毎の設備や技術により決定されます。もし、自分により良い治療があるのであれば、場合によっては病院を変えることも検討しなければなりません。

ここでは腎臓がんに対して行われる治療の基礎知識を紹介します。病院の説明を受ける前に目を通しておくと、多少病院での説明も理解しやすくなるでしょう。
病院で治療方針の説明を聞くときのポイントは、がんの場所やステージ、転移の有無など病気の状態、なぜその治療法がよいのか、その治療のメリットとデメリット、その治療以外の選択肢があるのかないのかといったことを聞くことが重要です。

腎臓がんの主な治療法

腎臓がんは抗がん剤や放射線治療が効きにくく、治療の基本は手術となります。がんの量を減らすことは病気の進行を遅らせることができると考えられているので、遠隔転移があり、転移先に対して手術ができない場合でも、腎臓の病変だけを手術で取り除くこともあります。
切除する範囲としてはがんが存在するほうの腎臓を丸ごと切除する根治的腎摘除術と、腎臓の一部だけを切除する腎部分切除術があります。ステージ1に該当する4㎝以下のがんの場合は、その病変の位置にもよりますが腎部分切除術になることが多いです。
手術の方法としてはお腹を開いて行う開腹手術と、お腹に小さな穴を数カ所あけて内視鏡などを挿入して行う腹腔鏡手術があります。

そのほかに、施設によっては手術支援ロボットを用いて手術を行う施設もあります。手術支援ロボットを用いるメリットとしては、手術部位を拡大して見ることができる、道具の手ブレを防ぐ、手術時間を短くすることで手術後の腎機能低下を防ぐ、といった良さがあります。

手術のメリットとデメリット

(腎臓がん手術におけるメリットや術後の生活について等)

手術のメリット

病変を切り取り体外にとりだすため、がんは確実に体内から消えます。さらに、取り出した病変を顕微鏡検査することにより、がんのタイプの評価を直接行うことができます。

手術のデメリット

手術前にどんなに検査や準備をしても、手術や全身麻酔による合併症の危険性をゼロにすることはできません。そのため、病院はあらゆる想定をもとに予防や術後の診察を行い、偶発症を早期に発見し迅速に対応するようにしています。しかし、自分の体のことですからすべて病院任せにせず、自分でも偶発症が起きた場合にすぐ気づけるように、自分の手術ではどんな偶発症が起こりうるのかをきちんと聞いておきましょう。
比較的頻度の高い合併症は以下の通りです。

・出血:傷口からの出血やおなかの中での出血などがあります。
・縫合不全:縫い合わせた部分がしっかりくっつかないこと。腹壁などで起こります。
・腎機能低下:通常は正常な腎臓が1つあれば、腎機能低下は起きませんが、もともと腎機能低下がある場合は手術によってさらに機能低下をきたすことがあります。
・尿漏:腎部分切除術でおきる合併症です。尿の通り道を切った場合に、きちんと縫い合わせても、そこから尿が漏れる場合があります。尿漏になっても尿管カテーテルで正しい方向に尿が流れるように処置をすると多くの場合は、自然に漏れ出る穴がふさがりますが、尿漏が長期間続く場合は再手術が必要になることもあります。
・腸閉塞:腹部の手術では腸の動きが悪くなったり、腸がくっつくことで、食べ物が腸の中を移動できなくなることがあります。
・創部感染:手術の傷に細菌が感染すること。
・腹腔内膿瘍:おなかの中に膿がたまること。
・肺炎:全身麻酔時の人工呼吸器などの影響で肺に感染が起きること。
・下肢深部静脈血栓・肺血栓塞栓症:足の動きが減ることで、足の血管に血栓(血の塊)ができること。もしくはその血栓が肺に飛んで、肺の血管が詰まること。
・せん妄:手術や入院のストレスなどの原因でおきる意識障害。意味不明な言動や幻覚・幻聴、暴れるといった異常行動がみられる。

根治的腎摘除術と腎部分切除術の比較

・根治的腎摘除術
メリット 病気のある腎臓を丸ごと取り出すため、がんを取り残す危険性が低い
腎臓を切ることなく、丸ごと取り出すため、手術部に血液や尿が漏れる合併症は少ない
デメリット 正常な部分の腎臓も取り出してしまうため、手術後の腎臓機能の低下が部分切除と比べると大きい

・腎部分切除術
メリット 手術後の腎臓機能の低下が少ない
デメリット がんを取り残す危険性がある
切除部分からの出血や尿がもれるリスクがある

抗がん剤のメリットとデメリット

(腎臓がん治療に使用される抗がん剤の種類と主な副作用など)

腎臓はもともと体の毒素を除去する臓器であり、抗がん剤が細胞に入っても、すぐに排出されてしまうため抗がん剤の効果が得られにくい臓器です。

2000年代に入り開発された分子標的薬は、がんが大きくなるために必要な血管新生や細胞増殖にかかわる因子を阻害することで効果を発揮します。腎臓がんは特にがんの周りに新しい血管を作ることで栄養を取り込んで大きくなるため、分子標的薬の効果が期待できます。
現在腎臓がんに使用することができる分子標的薬はソラフェニブ、スニチニブ、エベロリムス、テムシロリムス、アキシチニブ、パゾパニブがあります。このうちソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブは血管新生を阻害するタイプで、副作用には血圧の上昇、手足の皮膚の荒れ、傷の治りが悪くなる、甲状腺機能低下などがあります。エベロリムスとテムシロリムスは細胞増殖に必要なmTORという蛋白を阻害する薬ですが、副作用として下痢、血糖やコレステロール値の上昇、間質性肺炎などがあります。

以前、肺転移についてはインターフェロンを用いた免疫療法が有効でしたが、その他の部位への転移には効果が得られないことがわかり、腎臓がんの治療の主流とはなりませんでした。しかし、現在は新たな免疫療法として、免疫チェックポイント阻害薬が開発されました。免疫チェックポイント阻害剤とはがんを攻撃することができるTリンパ球の力を強める薬です。現在腎臓がんに使用されている免疫チェックポイント阻害剤はニボルバブとイピリムマブです。

ニボルバブ:
Tリンパ球はがん細胞の表面になるがん抗原というマークを見つけてがん細胞にくっついて、がん細胞を攻撃します。しかし、免疫システムの暴走を防ぐために、Tリンパ球の表面にはTリンパ球の働きを止めるスイッチ(PD-1)が存在しています。がん細胞にはこのスイッチを押すことができるPD-L1、PD-L2を作ることができるのです。このPD-L1、PD-L2がPD-1と結合するとTリンパ球は働きを止めてしまうため、がん細胞を攻撃することができなくなってしまいます。ニボルバブは別名「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体」であり、Tリンパ球のPD-1に先にくっついてスイッチを押せないようにブロックすることで、Tリンパ球の働きを継続させることができる薬です。

イピリムマブ:Tリンパ球の活動を止めてしまうスイッチはほかにもあります。イピリムマブはCTLA-4というスイッチに対し、がん細胞よりも先に結合することでTリンパ球の活動を継続させる薬です。
そのほかにがん細胞が放出する、いろいろなサイトカインを放出して免疫機能を抑制するTregという細胞に対してもイピリムマブは結合することができ、Tregの活性を抑えたり、マクロファージの助けを借りてTregを除去することにより、Tリンパ球が継続的にがん細胞に対して攻撃することが可能となります。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫システムが暴走する働きをブロックする薬であり、副作用としては免疫機能の暴走による倦怠感、吐き気、下痢があります。また、稀ですが重篤な副作用としては間質性肺炎、脳炎、心筋炎、重症筋無力症、糖尿病、消化管に穴があくといったことがありえます。

抗がん剤のメリット

分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤は全身投与のため、画像検査で見つけることができないごく小さながん細胞に対しても効果を発揮します。

抗がん剤のデメリット

薬による副作用の可能性があります。副作用には薬を投与してすぐに現れるものもあれば、後日症状が出たり、投与ををやめた後でも症状が続くものもあります。また、症状としては現れなくても、血液検査やレントゲンなどで判明する副作用もあるので、定期的な検査が必要です。

放射線治療のメリットとデメリット

(腎臓がんの放射線治療と副作用など)

腎臓がんは放射線の影響を受けにくく、放射線治療の効果を得にくい疾患です。そのため、腎臓がんに対しての放射線治療は根治を目的に行うことはほとんどありません。しかし、腎臓がんが脳や肺、骨に転移して痛みや麻痺などの症状が現れた場合には、その病変に放射線を当てることで症状が和らぐことがあります。

放射線のメリット

転移先の症状の緩和が可能です。例えば脳転移による麻痺や痺れといった神経症状や、骨に転移した際の痛みなどには放射線療法は有効です。しかし、この場合の放射線療法はがんを消し去る根治術ではありません。
放射線治療そのものはじっと寝ているだけで行うことができるので、体力低下や腎機能障害などがあっても行うことが可能です。また全身状態がよければ通院での治療が可能です。

放射線のデメリット

放射線治療の副作用としては放射線が通る皮膚の部分に日焼けのような変化が見られます。そのほかに放射線の通り道に肺や肋骨、腸管がある場合は肺炎や肋骨骨折、腸管出血、腸管穿孔などの副作用が出る場合があります。
また、放射線治療のできる施設は限られており、どこの病院でも可能な治療ではありません。

その他の治療法

(腎臓がんの先進医療や最新の治療法に関する情報など)

経皮的局所療法

ごく小さな病変であったり、全身麻酔に耐えられないと判断されたときには皮膚の上から針を刺して、病変部を凍らせたり焼いたりする治療があります。2010年に保険診療となった経皮的凍結療法と現在自費診療であるラジオ波焼灼術です。

経皮的凍結療法

先端から病変まで針を刺して、ガスを注入することで先端に氷を発生させます。冷やして解凍するという行為を1回の治療で数回繰り返します。全体の治療時間は2時間程度で、前後を含めて入院期間は1週間程度です。
約8割の人は1回の治療で終了となりますが、まれに2回目の治療が必要になることもあります。この治療は基本的にステージ1の人が対象となりますが、5年間再発なく生存している割合は90%と、手術に匹敵する成績が報告されています。
合併症としては出血や血尿、痛み、腎機能低下、感染などがありますが、処置が必要な合併症の発生頻度は10%未満とされています。

ラジオ波焼灼治療

病変まで針を刺して、電流を流し先端から発せられる熱によりがん細胞を死滅させる治療です。

2つの治療の効果としては即効性があるのは凍結療法、再発率が低いのはラジオ波焼灼療法という報告もありますが、現時点では保険適応となっているのは凍結療法のみです。

臨床試験

標準的な治療として確立されてはいませんが、理論上腎臓がんに効果が期待できる治療を受けることができます。限られた病院で実施されています。

緩和ケア

一昔前、緩和ケアは治療法のないがん患者に対して行われるといったイメージでしたが、最近ではすべてのがん患者において肉体的・精神的サポートを行うために緩和ケアが重要と考えられています。そのため、「あなたには緩和ケアが必要です」と言われても、早とちりして「私はもう治療できないんだ」と思わないでください。治療が順調に進んでいても、がん患者さんの多くはがんと宣告されたときから様々な不安を持っています。そしてがんによる症状、治療による副作用、治療後の後遺症に悩む方もいます。そのような肉体的・精神的ケアを行うのが現代の緩和ケアです。
「がんと言われて不安だ」「抗がん剤の治療をしているから吐き気くらいは我慢しなければならない」「治療費がどのくらいか心配だ」といったがんにまつわる様々な不安・症状を取り除くのが緩和ケアです。

腎臓がんの再発や転移について

(腎臓がんが再発・転移した場合の治療方法)

腎臓がんの再発

ステージ1~3の平均余命は5年以上と予後の良い疾患ですが、ある病院の報告ではがんの大きさが5-6㎝で20-30%、7-8cmで30-40%の再発を認めたという報告もあります。そのため腎臓がんは手術が終わっても、定期的な画像検査などにより経過観察が必要です。
再発が分かった場合でも、治療の考え方は初めて見つかったときと同様に、まずは手術で取り除けないかを検討します。手術が難しい場合には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を使用します。

腎臓がんの転移

腎臓がんの転移は治療から10年後でも起こり得ます。そのため、手術後も定期的に経過観察が必要です。
腎臓がんの転移先で多いのはリンパ節、肺、骨です。転移が見つかった場合でも、まずは手術ができないかを検討します。手術が難しい場合には通常分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤による治療が行われます。

記事内容の修正に関する報告
経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。