腎臓がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

腎臓がんになるとどんな症状が現れるのでしょうか?どんな時に病院を受診したらいいのでしょうか?実は早期の腎臓がんは症状が出にくく、また特有の症状がほとんどありません。では、早期発見のためにはどのようなことに注意して、人間ドックなどで腎臓がんを見つけるためにはどんな検査を受けたらいいのでしょうか。また、腎臓がんが疑われた場合、どのように検査が進んでいくのかについて紹介します。

腎臓がんの主な初期症状

早期の腎臓がんは症状がほとんどありません。がんができた位置などでも症状の現れる時期は異なりますが、腎臓がんが大きくなると現れるのは以下のような症状です。
・血尿:おしっこの色が赤、茶色、オレンジ色になります。色の違いは混じった血液の量や出血してからどのくらい時間が経ったかで異なります。このようにおしっこの色を見ただけで血が混じっているとわかる状態を肉眼的血尿と言います。一方、肉眼ではわからないけれども、病院で検査をしたらわかる程度の少量の血尿は顕微鏡的血尿と表現します。
・脇腹の痛み:腎臓は両手を腰に当てたときの背中側にあります。がんが大きくなると、その部分の痛みが出てきます。

腎臓がんの自己診断チェック

自己診断のみで腎臓がんかどうかを判断することはできませんが、腎臓がんを疑う症状は以下の通りです。当てはまる項目が多い場合は、検診や病院受診をお勧めします。

  1. 男性である
  2. 50歳以上である
  3. BMI27以上の肥満である
  4. タバコを吸う
  5. 高血圧がある
  6. 4年以上NSAID(鎮痛剤の1種)を服用している
  7. 長期に透析を行っている
  8. 血尿がある
  9. 脇腹の痛みがある
  10. 1年以内に腹部CTもしくは腹部超音波(エコー)検査を受けていない

検診と検査項目

腎臓と関係した検診項目

尿素窒素(BUN):蛋白質は分解されるとアンモニアになり、さらに肝臓で尿素に変換されて、腎臓から尿に排出されます。腎臓の働きが悪くなるとこの尿への尿素の排出ができなくなり、体にたまるために尿素が増えます。実際の血液検査では尿素に含まれる窒素を測定するため、尿素窒素として表記されます。

尿素窒素が増えている場合は腎臓の機能が低下したり、脱水により尿素の再吸収が促進されている状態、胃や腸の中で出血する消化管出血により腸内で血液の蛋白質が分解されたときなどが考えられます。腎臓がんでも場合によっては腎臓の機能が低下し、尿素窒素が上がることがあります。
逆に尿素窒素が低い場合は蛋白質の摂取が少ない場合、もしくは肝臓が悪くなりアンモニアから尿素への変換ができていないことが推測されます。

クレアチニン(Cr):筋肉に含まれている蛋白質の代謝物です。尿素窒素と同じように腎臓から尿に排出されますが、腎臓の機能が低下すると体にクレアチニンがたまって数字が上がります。尿素窒素との違いは、尿素窒素は尿を作る途中で一旦尿に排出されても体内に再吸収されることがありますが、クレアチニンは一旦尿に排出されるとほとんど再吸収されないため、腎臓での尿を作る機能を直接評価できるという利点があります。

クレアチニンは腎臓の機能が低下した時以外にも、心不全により腎臓への血流が減ったときでも増加します。腎臓がんでも数値が上がることがあります。
クレアチニンのもとは筋肉なので、筋肉量が少ない人ではなかなか上がりにくい、さらに腎臓の機能がある程度低下しないとクレアチニンが増加せず、腎機能障害の初期の判断には使いづらいといった特徴があります。

腎臓がんに関連した腫瘍マーカー

現時点では腎臓がんの診断に有効な腫瘍マーカーはありません。

尿一般検査:測定される項目は以下の通りです。

  • 尿pH:尿の酸性・アルカリ性をみる検査です。
  • 尿比重:尿の重さをみる検査です。尿が濃くなると比重は増え、薄くなると低くなります。
  • 尿蛋白:蛋白は身体にとって必要な栄養なので、普通は尿に蛋白は混じりません。腎臓の機能が低下すると尿に蛋白が出ます。ただし、腎機能が正常であっても運動したり熱が出たときに一時的に尿蛋白が陽性になることもあります。
  • 尿潜血:血液が混入しているかどうかを検査します。
    ウロビリノーゲン:血液中のビリルビンを反映します。黄疸が出るような病気では増加します。そのほかに便秘でも増加します。
  • 尿糖:おしっこに混ざった糖分を測定します。通常は陰性ですが、血液中の糖分が増えると尿糖も陽性になります。
  • ケトン体:普段エネルギー源として使われているのは炭水化物などの糖分ですが、何らかの理由で体内の糖分が足りなくなると脂肪を分解して栄養として使います。その際にケトン体が増えて陽性となります。
  • 尿中白血球:尿に細菌が侵入すると、細菌と戦うために白血球が増加します。白血球が陽性のときは、尿路感染症を疑います。

腎臓がんの方が尿一般検査で見られやすい変化としては、尿潜血陽性、尿蛋白陽性です。

尿沈渣:尿の中の水分を取り去り、固形の物質のみを探す検査です。

  • 赤血球:主に出血を見る検査です。
  • 白血球:白血球は体内に細菌などの異物が入った場合に戦う、免疫をつかさどる細胞です。白血球はさらに細かく分類され、主に細菌と戦う好中球や、アレルギーの時に増える好酸球などがあります。尿一般検査では白血球の総量しかわかりませんが、顕微鏡で実際の白血球の形を見ることができる尿沈渣では、どのタイプの白血球が見られるのか、まで判断することができます。
  • 円柱:尿細管で分泌された蛋白質などが尿細管に詰まって円柱の形となり、尿に混じって出てきたものです。その中に何が混じっているかによってさらに細かく分類されます。何も混じっていない硝子円柱は正常の人でも少量見られることがありますが、赤血球が混じった赤血球円柱が見つかれば腎炎を、脂肪の粒が混じった脂肪円柱が見つかればネフローゼ症候群を疑うなど、円柱の発見は病気の診断の手助けになります。
  • 上皮細胞:尿の通り道の表面の細胞がはがれて尿に混じったものが尿沈渣の上皮細胞です。どの部分の上皮細胞がどのくらい尿中に混じっているかを見ることで、尿の通り道のどの部分に病気があるかを判断することができます。
  • 異形細胞:異形細胞はがんを疑う細胞のことです。異形細胞の形を見るだけでどの部分のがんか判断できることもあります。
    結晶・塩類成分:尿に溶けていた成分が固まって結晶化したもの。腎臓の病気だけでなく、ほかの臓器の病気でも出てくることがあります。
  • 細菌:尿沈渣で細菌の混入が認められれば、尿路感染症が疑われます。尿路感染症の診断にはその細菌が生きているのか死骸なのか、炎症を示唆する白血球の混入があるかどうかなどから判断します。さらには細菌の形などの特徴から、どのような抗生剤が効きやすいか、なども推定することができます。

尿沈渣では、赤血球が陽性の場合や異形細胞を認めた場合は腎臓がんの疑いがあります。

人間ドックで行われる腎臓がん検診

  • 尿一般検査
  • 尿沈渣
  • 腹部超音波検査(エコー検査)

お腹にゼリーを塗り、機械を当てて検査を行います。放射線を使用しない検査です。腸にガスがたまっている場合などではすべての範囲を見ることができない時もあります。全ての検査を記録することができないため、以前との比較がしづらい場合もあります。

腹部単純CT

放射線を用いた検査です。腸にガスがたまっているときなど、超音波で観察しにくい条件の場合でも、腹部全体を見ることができます。すべてのデータを記録することができるので、以前のデータと比較して変化を見ることもできます。

腹部MRI

磁気を用いた検査です。腎臓を見る目的で行われることは少ないですが、他の臓器の観察を目的としてMRI検査を行った場合に、偶然腎臓がんが見つかることはあります。

腎臓がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ(腎臓がんの可能性があるかどうかを見る検査)

  • 尿一般検査
  • 尿沈渣
  • 腹部超音波検査
  • 腹部単純CT

セカンドステップ(腎臓がんかどうか確定診断する検査)

腹部造影CT

放射線を用いた検査です。血管や病変を見やすくするために血管から造影剤を注入してCTを行います。

生検

腹部造影CTで腎臓がんの確定ができない場合に行われる検査です。皮膚から病変に針をさして、細胞を切り取って顕微鏡で細胞の種類を断定します。

サードステップ(腎臓がんのひろがり具合を見る検査)

遠隔転移の有無を判断する目的で行われる検査です。

単純/造影CT検査

放射線を用いた検査です。転移の疑われる部位を撮影します。血管や病変を見やすくするために血管から造影剤を注入する造影CTが行われることもあります。

単純/造影MRI

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。

CTとMRIは見やすい臓器が異なるので、同じ部位にCTとMRI両方の検査を行うこともあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。全身を一度に調べることができます。糖尿病で血糖値のコントロールが不安定な人はこの検査で正しい結果が出ないことがあります。

検診にかかる平均費用

通常の市町村の検診で腎臓がんを発見する目的での検査はありません。
会社の健康診断や人間ドックでは時に腹部超音波検査や腹部単純CTを行うことがあります。
セカンドステップ以降の検査は通常保険診療で受けることができます。

健康診断・人間ドックで受ける検査(相場)

  • 尿一般検査 300円
  • 尿沈渣 600円
  • 腹部超音波検査(エコー検査) 6000円
  • 腹部単純CT検査 12000円
  • 腹部MRI 30000円

保険適応で受ける検査(目安)

  • 腹部超音波検査(エコー検査)3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
  • 腎生検(入院費込み) 3割負担 80000円、1割負担 30000円
  • PET検査 3割負担 30000円、1割負担 10000円
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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。