乳がんのステージ別生存率と平均余命

乳がんの患者数は年々増加していますが、乳がんの死亡率はそれほど増えていません。その理由として乳がん検診を受ける人が増えてきていることや、セルフチェックの啓蒙が進んでいること、乳がんの治療の進歩が関係していると考えられます。
乳がんは他のがんと異なり、ただ単にステージだけで予後が決まるわけではありません。乳がんには進行度の早いものから遅いものまでタイプがあり、さらに乳がんに受容体があるかないかによっても治療が異なります。

しかし乳がんと診断されると、その予後は気になるかもしれません。ここでは最近の5年生存率と平均余命を掲載しました。“5年生存率”はその病気の治療効果を比較するためによく使われます。簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。“平均余命”はその病気の状態の人の半分が亡くなる時期を表しています。どちらの数字も今後も医療の進歩によって改善が望める数値です。あくまで目安として考えてください。

乳がんの種類と進行度について

乳がんの種類

ホルモン受容体を持っているかどうか

乳がんのホルモン受容体には女性ホルモンを受け取って、細胞分裂を促す信号を出す役目があります。女性ホルモンにはプロゲステロンとエストロゲンがあり、それぞれにプロゲステロン受容体とエストロゲン受容体があります。これらの受容体は、もともとは女性ホルモンが増える思春期に乳腺が大きくなるための役割をしていたものです。乳がんにこのホルモン受容体がある場合とない場合があります。

HER2タンパク

乳がんにはHER2という受容体があるものもあります。この受容体が刺激されると細胞増殖を促すことが分かっています。

この2つの受容体の有無によって乳がんは分類され、治療方針を決定します。

Luminal A Type(乳がんの約70%):ホルモン受容体(あり)HER2タンパク(なし)
→治療の基本はホルモン剤になります。

Luminal B Type(約8%):ホルモン受容体(あり)HER2タンパク(あり)
→治療の基本はホルモン剤になりますが、抗がん剤の使用も検討されます。

HER2 Rich Type(約8%):ホルモン受容体(なし)HER2タンパク(あり)
→ホルモン剤は無効であり、抗がん剤による治療となります。

Triple Negative Type(約14%):ホルモン受容体(なし)HER2タンパク(なし)
トリプルとはエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体の3つが陰性という意味です。
→抗がん剤による治療になります。抗がん剤による治療効果は6割の人にみられます。

乳がんの治療方針の決定には進行度(ステージ)、細胞の種類、それぞれの受容体の有無が複雑に絡み合い、それぞれの患者に合わせた治療が必要となります。

乳がんの進行度(ステージ)

進行度とは乳がんの病気のひろがり具合を表します。乳がんのステージは0から4までがあり、一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。乳がんでは治療方針が細かく分かれているため、ステージ2とステージ3はさらに細かく分類されています。

ステージ0
病変が乳管内にとどまっている状態
ステージ1
病変の大きさが2cm以下でリンパ節や他臓器に転移がない
ステージ2A
原発病変の大きさが2-5cmでリンパ節や他臓器に転移がない
もしくは腋の下のリンパ節に転移があるが、原発病変の大きさが2cm以下
2B:腋の下のリンパ節に転移があり、原発病変の大きさが2-5cm
もしくは原発病変の大きさが5cmより大きく、リンパ節や他臓器に転移がない
ステージ3A
腋の下のリンパ節に転移があり、原発病変の大きさが5cm以上
ステージ3B
病変の大きさに関係なく皮膚や胸壁への浸潤がある状態
ステージ3C
病変の大きさに関係なく鎖骨の周囲や胸骨のリンパ節に転移がある状態
ステージ4
病変の大きさに関係なく遠隔転移がある状態

乳がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、乳がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。
がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

乳がんの5年生存率はどのくらいあるか

2009~2011年の乳がんの5年生存率は女性のみが報告されており、92.3%でした。
進行度別では、がんが乳房内にとどまった状態の5年生存率は99.3%、領域リンパ節にひろがった状態では90.0%、他臓器に転移がある状態では39.3%でした。

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

乳がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによる観察期間の5年以上でした。このデータは乳がん以外で死亡した人も含んでいます。なお、ステージ3Cの平均余命は観察期間内の約51か月でした。一般的にはステージが進むと平均余命は短くなりますが、症例数が少ないとこのように数字の逆転が起きることがあり、これらの数字は参考程度としてください。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

乳がんの患者数は調査開始の1975年には10万人あたり19.6人でしたが、その後年々増加し、2003年には10万人あたり70.0人、2015年には147.7人にまで増加しています。

死亡数の推移

乳がんによる死亡者数は、罹患者数と同様に年々増加しています。1975年の死亡率は10万人あたり5.8人、2003年では15.2人、2015年には21.1人となっています。

2003年と2015年を比較すると、罹患者数はほぼ2倍になっていますが、死亡者数は1.4倍です。これは乳がん検診やセルフチェックの普及で早期発見が多くなったことや、乳がん治療の進歩により死亡率が下がったものと考えられます。

乳がんの末期症状とケアに関して

病変が皮膚の外に顔を出したら

乳がんは進行すると、乳房の腫瘤が大きくなって病変が皮膚に顔を出します。がん細胞は非常にもろいため、病変が服とこすれるだけで出血したり、滲出(しんしゅつ)液といった液体がにじみ出たり、臭いを発することもあります。
これらの症状を改善するためには、病変を適切に洗浄し、症状に合った塗り薬や被覆材などを使用します。病変をこすると容易に出血するため、刺激の少ない洗浄剤を用いて優しく洗います。病変の周囲は病変からしみ出した浸出液や出血が付着しないように撥水性のクリームなどで保護します。被覆材は病変を覆うガーゼのようなもので、病変にくっつきにくく、病変からしみ出る水分を吸収するものが理想的です。出血や浸出液、臭いに対し塗り薬が処方されることもあります。

乳がんに多い骨転移

また乳がんは骨に転移しやすい病気です。骨はどの骨でも転移する可能性があります。転移先の部位に痛みが現れた場合は鎮痛剤や放射線療法、整形外科的な手術を行うこともあります。転移した骨はもろくなって、きっかけもなく骨折することもあります。骨転移が判明したら、骨折の危険性を減らすために骨を丈夫にする注射が始まることもあります。

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経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。