乳がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

女性で最も多いがんは乳がんです。乳がんは検診の対象にもなっていますが、検診で見つけにくいタイプもあるので、早期発見のためにはセルフチェックも重要です。さらに乳がんになりやすい人の特徴が分かっているので、すべての女性が一度は自分が乳がんになりやすいタイプかどうか知っておくことは重要です。
ここでは乳がんになりやすい人の特徴や生活習慣、そして乳がんの予防や早期発見のコツについて紹介します。

乳がんとは

乳房には母乳を作る小葉とそれを乳頭まで運ぶ乳管があります。乳がんの95%は乳管に、残りのほとんどは小葉にできます。そのほかに稀ですが乳頭にできるパジェット病という特殊ながんもあります。

多くのがんは進行度によって予後が異なりますが、乳がんは進行度以上にがんのタイプのほうが予後に関係しています。

乳がんの種類

・DCIS:別名超早期乳がん。ほぼ100%治癒しますが、乳腺の中を細い糸のようにひろがるため、乳房の温存はむずかしいという特徴があります。

・浸潤性微小乳頭がん:早期から転移を起こしやすいという特徴があります。そのため多くが抗がん剤による治療となります。

・浸潤性小葉がん:乳腺の中でスキップして多発しやすい特徴があります。そのため、同時に反対の乳房にも病変が見つかることもめずらしくありません。マンモグラフィーでうつりにくく、発見しづらいタイプです。

・粘液がん:抗がん剤が効きにくいタイプです。

乳がんの頻度

2016年にがんと診断された人の中で乳がんは男性の第21位(10万人あたり1.2人)、女性では第1位(10万人あたり164.1人)、男女の合計では第5位(10万人あたり84.8人)でした。
また2018年がんで死亡した女性の中で乳がんは女性の第6位(10万人あたり23.0人)でした。(男性や男女合計の死亡率は集計されていません)

乳がんの主な原因とリスクファクター

女性ホルモンの累積分泌量

乳がんの一部は女性ホルモンの受容体を持ち、女性ホルモンが分泌されている期間が長ければ長いほどそのタイプの乳がんになる危険性が上がります。
女性ホルモンの累積分泌量が多い人とは一般的に初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い、初産年齢が遅い、出産数が少ない、授乳期間が短い場合です。
例えば出産との関連を調査した報告では、出産したことがない人は出産したことがある人と比較して2.2倍乳がんになる危険性があると発表されています。
母乳による授乳期間中はエストロゲンの分泌が低下するためホルモンに関連した乳がん発症のリスクは下がると推測されています。欧米で行われた調査では授乳期間が5カ月延びるごとに乳がんの危険性が2%低下したという報告や、授乳期間が12カ月延びるごとに乳がんの危険性が4.3%低下したという報告があります。日本での調査では授乳期間が有意に乳がんの危険性を下げたという報告はありませんでしたが、25カ月以上の授乳期間では乳がんの危険性が40%下がった、など授乳が乳がんの予防に関与している可能性が残されました。

肥満

海外の報告によると、肥満は閉経後の女性では乳がん発症の危険性があるものの、閉経前では逆に肥満は乳がんの危険性を若干下げるという報告があります。しかし日本の調査では閉経前でも閉経後でも肥満は乳がんの危険性が高くなるということが明らかになりました。閉経前でBMIが30以上の場合は標準BMIの人と比較して2.25倍乳がんになる危険性がみられています。女性ホルモンであるエストロゲンが脂肪細胞からも放出されていることが関連していると考えられています。

飲酒

欧米では飲酒により乳がんの危険性があがるという報告は多数存在します。しかし日本の調査における飲酒量と乳がんの危険性についての調査では、飲酒量が多いと乳がんになりやすいという報告もありましたが、逆に飲酒量が多いと乳がんになりにくいという結果になったものもあり、統計学的な関連を証明することはできませんでした。日本人女性では海外と比較して大量にアルコールを摂取する人の割合が少ないことも関係しているかもしれません。海外の報告では1日のアルコール摂取量がエタノール換算で10g(日本酒0.5合、ビール中瓶半分、焼酎0.3合に相当)増えるごとに乳がんになる危険性も10%あがると報告されており、飲酒は乳がんの危険性を増やす可能性があります。

乳がんになりやすい人の特徴

年齢・性別

乳がんの発症は30歳台の女性から増加し、45~55歳程度がピークでその後減少します。ほとんどは女性がなる病気ですが、100人に1人は男性でも発症することがあります。

乳がんに関連した遺伝子

乳がんの発症に関連したいくつかの遺伝子があります。その中で有名なものは遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関係するといわれているBRCA遺伝子です。BRCA遺伝子はがんを抑制する遺伝子で、細胞のDNAを修復することで細胞ががんになることを抑える働きがあります。DNAは日常生活における紫外線や化学物質などにより傷つきますが、BRCA遺伝子が正常に働いているとDNAの傷を適切に修復することができます。ところがBRCA遺伝子に異常があるとその修復が適切に行われず、乳がんの発症につながります。
BRCA遺伝子はBRCA1とBRCA2があり、どちらの異常でも乳がんの危険性が上がります。ある報告では一生涯に乳がんを発症する危険性はBRCA1遺伝子の異常で40-80%、BRCA2遺伝子の異常で20-85%とされています。アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーはBRCA1遺伝子の変異が判明し、予防的に両方の乳房を切除し、話題となりました。予防的な乳房切除については賛否がありますが、BRCA遺伝子の異常は半分の確率で親から子に引き継がれるため、血縁者に乳がんや卵巣がんが多い人は遺伝子検査うけることも予防につながる可能性があります。
乳がんに関連した遺伝子は他にもCDH1、TP53など複数あります。

乳製品と乳がんの関連性

乳製品に含まれるビタミンDやカルシウム、リノレン酸は乳がんになる危険性を減らす可能性があると報告されています。
しかし脂肪を多く含む牛乳では逆に乳がんになる危険性が増えたという報告もあり、注意が必要です。海外では妊娠した乳牛から牛乳を搾取するため、その牛乳の脂肪分に女性ホルモンが多く含まれているという特徴があります。
また、乳製品に含まれるインスリン様成長因子(IGF-1)が乳がんの発症に関係しているという報告もあります。このホルモンはその名の通り、成長を促すホルモンで、細胞分裂を促す作用があるため、乳がんの人がIGF-1を摂取すると、がんの大きくなるスピードが早まる恐れがあります。ただし海外ではたくさんの牛乳を搾取するためにウシに成長ホルモンが投与されていますが、日本では乳牛に対して成長ホルモンを投与することは禁止されており、また市販されている牛乳の多くは熱による殺菌が行われており、この過程でIGF-1はかなり減少するため、日本国内で牛乳を飲む分にはそれほど心配する必要はないと考えられています。

予防と早期発見のコツ

自分が乳がんになりやすいかどうかを知る

乳がんの10-20人に1人は遺伝性です。そのため血縁者に乳がんや卵巣がんになった血縁者が複数いる場合や、若くして発症した人がいる場合は遺伝が関与している可能性があります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合は男性でも乳がんになる可能性がありますし、そのほかに前立腺がんの危険性も増えると報告されていますので、注意が必要です。
そのほかに、女性ホルモンの分泌が多い場合はホルモンに関連した乳がんの発症リスクが上がります。生理が早く始まった、閉経が遅かった、妊娠したことがない、といった場合は、一層気をつけて検査や検診などを受ける必要があります。またピルの服用など女性ホルモンを補う治療を受けている人は若干乳がんの発症リスクが上がるという報告もあるため、同じように乳がんの検診を欠かさないようにしましょう。

乳がんの予防につながる食べ物

大豆に含まれるイソフラボンは一部の乳がんに関連しているエストロゲンという女性ホルモンの働きを弱める効果があることがわかっています。そのため、大豆製品をたくさん摂取すると女性ホルモンに関連した乳がんのリスクを低下できるのではないかと推測され、いくつかの調査が行われました。その結果一部の報告では閉経後の乳がんの危険性を減らしたという報告があります。日本には様々な大豆を材料とする食品があり、摂取量が多ければ多いほど、閉経後の乳がん発症の危険性が低下することが明らかとなっています。

検診の限界を知りセルフチェックを行う

乳がん検診にはマンモグラフィ、超音波検査、医師による視触診があります。しかしこれらの検査はどれか1つを受ければ必ず乳がんを見つけられるわけではありません。例えばマンモグラフィは乳がんを疑う石灰化の有無をレントゲンで見る検査ですが、乳がんのすべてが石灰化を伴うわけではありません(逆に乳がんでなくても石灰化が見られることもあります)。同様に超音波検査や触診で見つけられないタイプの乳がんもあるため、違う検査を組み合わせたり、検診だけに頼るのではなく、1カ月に1回自分で乳房さわるセルフチェックも重要です。

記事内容の修正に関する報告
経歴:
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医 大学病院・二次救急病院・在宅医療での勤務。現在は医療系記事のライターとして活動し監修歴は4年。