SLXの数値が高い原因と対策

SLXは肺がんの一種である肺腺がん、卵巣がん、すい臓がんで上昇することが多い腫瘍マーカーです。

がん以外の良性の疾患での上昇はあまり起こらないため、SLXの数値が高い場合には体の中にがんが存在していないか詳しく調べることが必要になります。

一方、検査結果が報告されるまでの過程が原因でSLXが上昇することもあるため、数値が高くなっていたからと言って必ずしもがんが存在するとは言えません。

このページではSLXとはどのようなものなのか、高くなる原因、基準値以上だった場合の対策についてご紹介します。

SLXの検査結果が上昇していて不安になっている方の参考になれば幸いです。

SLXとは

SLXは腫瘍マーカーの一種です。

腫瘍マーカーとは体内にがんが存在する場合に血液中で上昇する成分のことを言います。

腫瘍マーカーは早期のがんではあまり上昇しないため、がんの診断の補助や治療効果の判定、再発の有無について調べる際に測定されることが多く、早期のがんを発見するのには不向きです。

SLXも例外ではなく、これらの目的で測定されます。

SLXは肺腺がん、卵巣がん、膵がんの際に特に上昇しますが、検査結果が出るまでの過程の不具合で上昇することもあります。

ですから、SLXが上昇したからといって必ずしもがんであるとは評価できません。

他の検査を組み合わせたり、患者さんから自覚症状などを詳しく聞き取ったりすることで、SLXが上昇している原因を探ることになります。

また、SLXは血行性転移の評価や経過観察にも用いられます。

がんは拡大すると全身や近くの組織に転移することがありますが、がんの転移は次の3つのいずれかの経路をたどっておこります。

血行性転移
がん細胞が血管に入り込み、血液の流れに乗って別の臓器や組織へ移動し、増殖すること
リンパ行性転移
がん細胞がリンパ管に入り込み、リンパの流れに乗ってリンパ節へ移動すること
播種(はしゅ)
がん細胞が剥がれ落ち、近くの腹膜や胸膜に移動すること

SLXを発現しているがん細胞は、血管の壁の内側に接着しやすく、血行性転移が起こりやすいということが分かっています。

ですからSLXの検査をすることで血行性転移が起こるリスクについても評価することができるのです。

基準値について

SLXの基準値は多くの医療機関や検査センターで38U/ml未満としています。

しかし、この基準値は全国的に統一された基準値ではないため、あなたが検査を受けた医療機関で別な基準値を採用している場合には、そちらの基準値が優先されます。

SLXが高くなる原因

SLXが上昇する原因の多くは肺がんの中でも肺腺がん、卵巣がん、すい臓がんです。

しかし、患者さんから採血をしてから結果の報告に至るまでの過程で不具合が生じ、実際には体内のSLXが上昇していないにもかかわらず高い数値になることがあります。

ここからはSLXが高くなる原因について詳しく見ていきましょう。

肺腺がん

肺がんは細胞や組織の特徴により、腺がん、扁平上皮癌、大細胞がん、小細胞がんの4つに分類されます。

肺がんの約70%でSLXが上昇するといわれていますが、特に腺がんで上昇することが多いです。

症状は咳や痰、声のかすれなど軽いものから、血痰、胸の痛み、呼吸困難など重度のもの、そして肺がんに伴って起こる肥満やムーンフェイス(顔が丸くなる)、意識障害などがありますが、腺がんではほかの肺がんに比べるとこれらの症状が乏しいです。

肺がんではがんの大きさ、リンパ節転移の有無、がんのもともとの場所から離れた部位への転移の有無によってステージが分類され、ステージに応じて治療法が選択されます。

手術による切除が可能な場合には切除を行い、その後必要に応じて抗がん剤治療が行われます。

切除が難しい場合には放射線治療や抗がん剤などの薬物療法が選択されます。

卵巣がん

卵巣がんは初期症状が乏しいにも関わらず、死亡率が高いため「サイレントキラー」とも呼ばれる疾患です。

がんというと年齢を重ねた人が罹るイメージがありますが、卵巣がんは10~20歳代の女性の発症も多いため、若いからと言って油断はできません。

症状はお腹の張り、食欲不振や吐き気、便秘、頻尿、腹痛、腰痛など、おなかの中にがんがあることで周りの組織を圧迫することによる症状がほとんどです。

がんの種類によってはホルモンを産生するものもあり、この場合は高齢なのに見た目が若返る、若い女性なのに男性化(毛深くなるなど)がみられます。

卵巣がんの治療は開腹手術による切除が基本で、この際には病変のある卵巣のみならず反対側の卵巣や子宮も切除するのが標準的な治療です。

しかし、患者さんが将来の妊娠を希望しており、病変の広がりが小さい場合には主治医とよく相談の上、反対側の卵巣と子宮を温存するケースもあります。

手術による切除が困難な場合や、手術後に必要と判断される場合には化学療法での治療を行います。

すい臓がん

すい臓がんも症状が乏しく、見つかった時にはかなり進行している、というケースが多いがんです。

家族ですい臓がんになった人がいる、肥満や喫煙、糖尿病などの人はすい臓がんの発症リスクが上昇します。

また、慢性すい炎に罹っていた人もすい臓がんになりやすい傾向があります。

症状が現れる場合には腹痛、黄疸、腰背部痛、体重減少、急激な糖尿病の悪化などがみられます。

早期発見ができた場合には手術で病変の切除を行いますが、手術が難しい場合や手術後必要に応じて化学療法や放射線治療を行います。

すい臓がんのうち、約半数のケースではSLXが上昇するといわれています。

肺がんや卵巣がんに比べるとすい臓がんでのSLXが上昇する患者さんの割合は低いのですが、他のすい臓の疾患ではSLXはあまり上昇しないため、すい臓に異変がある場合にSLXを調べることでがんによるものなのか、そうでないものなのかの鑑別の助けになります。

唾液の混入

私たちの唾液の中にはSLXが多く含まれるため、検査の実施までに血液に唾液が混入した場合にはSLXが上昇することがあります。

採血を行う看護師や検査を実施する臨床検査技師はそのようなことがないよう、マスクを着用して検査を実施していることが多いため、可能性としては低いです。

唾液の混入によってSLXが上昇している場合には、がん由来ではないため、体にがんがあるというわけではありません。

白血球からの遊離

血液の中に存在する白血球も、SLXを含んでいます。

通常、SLXの検査を実施する場合には、血液のうち血清という液体成分で検査を実施するため、採血後なるべく早く遠心分離を行います。

しかし、採血後に遠心分離までの時間が長くかかってしまうと白血球中のSLXが血清中に溶け出してしまうのです。

このようにして上昇したSLXはがん由来のものではないため、上昇しているからと言って体内にがんがあるというわけではありません。

検査の非特異反応

患者さんの血液と検査で使用する試薬の相性によって、実際には血液中にSLXがほとんど存在していないのに、あたかも大量に存在しているかのような結果が出てしまうことがあります。

このような現象を非特異(ひとくい)反応といいます。

このケースも、がんが体の中にあるというわけではありません。

検査で使用する試薬は様々なメーカーから販売されているため、他のメーカーの試薬を使用することで正しいSLXの測定値を得ることができます。

SLXを下げる方法は?

血糖値やコレステロールのように、SLXの検査結果を自分の生活改善で改善できるといいですよね。

しかし、SLXが上昇している原因ががんなのであれば、そのがんの治療を受けない限りSLXの数値を下げるのは非常に困難です。

SLXが高くなっている原因が先ほど紹介した唾液の混入や白血球からの遊離、検査の非特異反応であれば改めて検査をやり直すことでSLXの数値が下がります。

SLXが基準値以上だった時の対策

ここまでご紹介したようにSLXが上昇する原因は様々なものがあるため、SLXが基準値以上だった場合にはその原因を詳しく調べなければなりません。

そのためには追加で検査を行うことが必要です。

具体的には、次のような検査が実施されます。

他の項目の血液検査

SLX以外の項目の血液検査であなたの全身状態を確認します。

また、他の腫瘍マーカーを組み合わせて検査することにより、どの臓器でがんが発生しているのかについても予想を立てることが可能になります。

例えば肺がんが疑われる場合にはCEAやSCC、NSEなど、卵巣がんが疑われる場合にはCA-125やAFPなどの腫瘍マーカーを合わせて検査することが多いです。

レントゲン検査

肺がんが疑われる場合には肺のレントゲンを撮ることで、がんと疑われる部位がないか、がんがある場合にはがんの大きさやリンパ節への転移の有無についても確認します。

放射線を利用しますが、被ばく量はそれほど多くありません。

エコー検査

卵巣がんが疑われる場合には膣から機械を入れて、膵臓がんが疑われる場合にはおなかに機械を当ててエコー検査を行います。

肺の疾患ではエコー検査の画像に肺が写らないため、エコー検査を行うことはできません。

この検査によって、がんの有無や良性・悪性の推定が行われます。

放射線を用いないため、被爆の心配はありません。

MRI検査

MRI検査は体を輪切りにした画像を撮影することで、がんや転移の有無について調べることができます。

肺がんの場合には、肺ではなく脳のMRI検査を行って、脳への転移がないか調べることもあります。

磁力で検査を行うため被爆の心配はありませんが、体内に金属がある場合(ペースメーカーや骨折時に金属のプレートやボルトを埋め込んだなど)は、MRIの検査を受けることはできません。

CT検査

CT検査も体を輪切りにした画像を撮影することで、がんや転移の有無について調べることができます。

さらに撮影の前に造影剤を血管から投与することで、病変を明確に描出できるようになります。

検査時には放射線を使用しており、レントゲンに比べると被ばく量が多くなりますが、1回の検査での被ばく量はわずかです。

細胞診、組織診

がんが疑われる病変がある場合には、その部位から細胞や組織を採取し、顕微鏡で観察する検査を行います。

この検査は病変部位を直接観察することができるため、病気の確定診断のためには有用です。

ただし、細胞や組織の採取の際には針を刺したり、手術の際に採取したりする必要がありため、患者さんには負担の大きい検査になります。

SLXの再検査

他の検査の結果、SLXが上昇する原因が見当たらない場合には検査の過程での偽高値が疑われます。

唾液の混入や白血球からの遊離が疑われる場合にはその旨を医師から検査室へと報告し、そのようなことが起こらないように細心の注意を払って再度検査を実施します。

検査の非特異反応が疑われる場合には、別なメーカーの試薬を使用することで、非特異反応によるものかどうかを確認します。

記事内容の修正に関する報告
  • 臨床検査技師
  • nobi-non
  • 専門:血液検査・尿一般検査
紹介:
東北大学医学部卒。臨床検査技師として約10年、総合病院で現場経験を積む。専門は血液検査・尿一般検査で、白血病や腎疾患の診断のサポートを行なってきた。自身の不妊治療の際、不正確な情報がインターネット上に多いことに気づき、正確な情報提供がしたいとライターへ転身。検査結果の見方、疾患解説、妊活・不妊治療、性感染症、AGA治療ほか多数執筆。臨床検査技師の資格を生かし、根拠のある医療情報を提供しています