PIVKA-Ⅱの数値が高い原因と対策

がん治療後の経過観察でPIVKA-Ⅱが上昇していると、「再発したのではないか」と心配になってしまうのではないでしょうか。

PIVKA-Ⅱは、肝細胞がんの腫瘍マーカーとして用いられますが、薬の副作用や検査の薬との相性でも高値になることがあります。そのため、上昇している原因をきちんと見極めることが大切です。この記事では、PIVKA-Ⅱの数値が上昇する原因と、上昇した場合の対策についてご紹介します。

PIVKA-Ⅱとは

肝臓では、普段から「プロトロンビン」という止血に関わる物質が作られています。PIVKA-Ⅱは、ビタミンKが不足している時に作られる異常プロトロンビンのことです。そのためPIVKA-Ⅱは、栄養不足や薬の副作用でビタミンKが足りなくなった時にも上昇しますが、一般的には肝細胞がんの腫瘍マーカーとして活用されます。
腫瘍マーカーとは、体の中にがんが存在する時に、血液中に増加する物質のことです。がんの種類によってさまざまな腫瘍マーカーがありますが、PIVKA-Ⅱが増加するがんとしては、肝細胞がんが挙げられます。

基準値について

PIVKA-Ⅱの基準値は「40mAU/ml未満」と設定しているケースが多いようです。しかし、PIVKA-Ⅱの基準値は全国的に統一されているわけではないため、受診する医療機関によっては異なる基準値を採用しているケースもあります。そのため、自分の検査結果が良いのか、悪いのかの判断は、受診した医療機関の基準値と比較して、基準値より高いか低いか、そして前回と比較して上昇していないかを見ることが大切です。

PIVKA-Ⅱが高くなる原因

PIVKA-Ⅱが高値になる原因は、肝細胞がんをはじめ、さまざまなものがあります。
ここからは、PIVKA-Ⅱが上昇する原因について詳しく見ていきましょう。

肝細胞がん

肝臓がんには、肝臓そのものの細胞ががんになる「肝細胞がん」と、肝臓の中を通る胆管(たんかん)という組織ががんになる「肝内胆管がん(かんないたんかんがん)」という2種類がんがあります。PIVKA-Ⅱが上昇するのは肝細胞がんです。

PIVKA-Ⅱが上昇している場合には、肝細胞がんになっている可能性が高いとされています。その理由は、検査における精度の指標の1つである「特異度(とくいど)」が高いためです。検査の精度を示す指標には「感度(かんど)」「特異度」というものがあります。

感度
実際に病気になっている人の中で、検査結果が陽性になる人の割合のこと
特異度
実際に病気になっていない人の中で、検査結果が陰性になる人の割合のこと

PIVKA-Ⅱの肝細胞がんに対する感度は50%といわれています。つまり、肝細胞がんの人を集めて検査を行っても、実際にPIVKA-Ⅱの数値が上昇する人は、半分程度しかいないということです。
一方で、PIVKA-Ⅱの肝細胞がんに対する特異度は94%とされています。特異度が高いということは、「実際には体の中にがんはないのに、誤って【がんがある】という結果になってしまった。」ということが起こりにくいということです。
もちろん病気の診断には、他の検査結果も加味して総合的に判断することが大切ですが、特異度の高いPIVKA-Ⅱの検査では、「数値が高い=肝細胞がんの可能性が高い」という特徴があります。

その他肝臓の病気

PIVKA-Ⅱは肝細胞がんがある場合に上昇することがほとんどですが、一部の肝臓の良性疾患でも上昇する場合があります。具体的には、次のような疾患です。

  • 肝内胆汁うっ滞
  • 肝硬変
  • 肝外性閉塞性黄疸
  • 肝硬変
  • アルコール性肝障害

ビタミンK欠乏

冒頭でもご紹介しましたが、PIVKA-Ⅱは、ビタミンK不足の際に作られる異常プロトロンビンです。そのため、栄養不良や薬の副作用で体内のビタミンKが足りなくなった場合に、PIVKA-Ⅱが上昇してしまうことがあります。
ただし、ビタミンKは食事に含まれるだけでなく、腸内細菌によっても生成されます。そのため、通常の食生活をしている分には、ビタミンKが不足することはほとんどありません。そのため、むしろ薬剤による影響の方に注目した方がいいでしょう。ビタミンKが不足するように働く薬としては、次のようなものがあります。

  • ワーファリン
  • 一部の抗生物質
  • 抗結核薬

検査の非特異反応

「検査結果は常に正確だ」というイメージがありますが、実際にはそうではありません。ごくまれに、患者さんの血液と検査に使用する試薬の相性が悪いと、実際には血液中にPIVKA-Ⅱがほとんど存在しないのに、あたかも大量に存在するかのような検査結果になることがあります。これを「検査の非特異反応(ひとくいはんのう)」といいます。

PIVKA-Ⅱを下げる方法は?

PIVKA-Ⅱが上昇する原因のほとんどは病気に由来するものです。そのため、原因となっている病気をきちんと治療することが、PIVKA-Ⅱを下げるための方法となります。

一方、薬剤が原因でPIVKA-Ⅱが上昇している場合であっても、自己判断でその薬の服用を中止してはいけません。というのは、薬を中断することで、命に関わるような変化が体内で起こる可能性があるからです。
例えば、ワーファリンを中止すると、血液が固まりやすくなります。すると、血液の塊が脳や肺の血管に詰まってしまうかもしれません。また、抗生物質や抗結核薬も、中止することで体内で細菌が増殖し、命を落としてしまう可能性があります。
そのため、薬剤が原因でPIVKA-Ⅱが上昇していたとしても、主治医とよく相談して今後の対応を決めるようにしてくださいね。

検査の非特異反応の場合は再検査で改善する可能性も

検査の試薬と患者さんの血液の相性が原因で起こる非特異反応でPIVKA-Ⅱの数値が上昇している場合は、検査の試薬を別な種類のものに変えて検査を行うことで、PIVKA-Ⅱの数値が下がることがあります。この場合は、臨床検査技師が中心となって再検査を行います。
場合によっては、患者さんに再採血をお願いすることもありますが、正しい検査結果を得るために協力していただければ幸いです。

PIVKA-Ⅱが基準値以上だった時の対策

PIVKA-Ⅱが基準値以上だった場合には、その原因を解明しなければなりません。原因解明のためには、さまざまな追加検査が必要になります。どのような検査が必要になるかを見ていきましょう。

血液検査

肝臓の疾患があると、血液の検査で調べることができるAST、ALTなどの肝臓の状態を示す検査項目の数値が高くなります。そのため、現在の肝臓の状態を把握し、今後の治療につなげるために、血液の検査をさらに行います。他にも、全身の状態を把握する目的で、肝臓以外の項目の検査も行い、総合的に病気の診断が進められます。

別な項目の腫瘍マーカーの検査も有効

肝細胞がんに対する腫瘍マーカーはPIVKA-ⅡだけではありませんAFPも肝細胞がんの腫瘍マーカーとして有効です。
特にPIVKA-ⅡとAFPはお互いに影響を与えず、独立した関係になっているので、両方の腫瘍マーカーを測定することで、よりがんの診断につながりやすくなります。

超音波検査(エコー検査)

肝臓の様子を把握するために、超音波検査という検査が行われます。
超音波検査は、「プローブ」という超音波を発生する機械をお腹に当てて、超音波の跳ね返りを画像化することで、お腹の中の様子を観察することができます。
この検査では、肝臓の中のがんの大きさや数、お腹に水が溜まっていないかなどを観察していきます。
痛みや放射線の被ばくがなく、比較的容易に行うことができる検査です。

CT検査、MRI検査

CT検査やMRI検査では、患者さんの体を輪切りにした写真を撮影します。この写真を見て、がんの有無、大きさや広がり、全身への転移を調べます。
がんをより正確に描出するため、造影剤を投与してから検査を行うことも多いです。
CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくのリスクがあります。一方、MRI検査はX戦を使用せず、磁気によって検査を行うため、被ばくはありません。

記事内容の修正に関する報告
  • 臨床検査技師
  • nobi-non
  • 専門:血液検査・尿一般検査
紹介:
東北大学医学部卒。臨床検査技師として約10年、総合病院で現場経験を積む。専門は血液検査・尿一般検査で、白血病や腎疾患の診断のサポートを行なってきた。自身の不妊治療の際、不正確な情報がインターネット上に多いことに気づき、正確な情報提供がしたいとライターへ転身。検査結果の見方、疾患解説、妊活・不妊治療、性感染症、AGA治療ほか多数執筆。臨床検査技師の資格を生かし、根拠のある医療情報を提供しています