ティーエスワンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ティーエスワンは、がんの化学療法として世界で広く使用されていた「5FU(ファイブエフユー)」を、より高い有効性と低い副作用を実現させるために日本で開発された薬剤です。

日本で製造されている内服薬の抗がん剤で、剤形には小型のカプセル剤や溶けやすい顆粒剤、さらに水なしでも容易に服用が可能であるOD錠が承認されており、患者さんの飲み込む力などに合わせて選択する事が可能です。

このページでは、抗がん剤「ティーエスワン」について詳しく解説していきますので、治療を検討されている方はぜひご覧ください。

ティーエスワン(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)とは

ティーエスワン(TS-1)は、開発者の白坂哲彦氏のイニシャルSと開発メーカーである大鵬薬品工業のTから命名された薬剤です。日本において開発され1999年に承認されており、世界ではアジアを中心に多くの国で承認され使用されています。

ティーエスワンが適応となるがんの種類

ティーエスワンはいずれの剤形においても適応となるがんは同じで、「胃がん」、「結腸・直腸がん(大腸がん)」、「頭頸部がん」、「非小細胞肺がん」、「乳がん」、「膵がん」、「胆道がん」の治療に用いられます。

服用方法は、体表面積あたり以下の基準量を朝食後と夕食後の1日2回28日間連続して服用し、その後14日間休薬します。これを1クールとして投与が繰り返されます。

体表面積 基準両
1.25㎡未満 40mg
1.25㎡~1.5㎡未満 50mg
1.5㎡以上 60mg

使用上の注意

・結腸・直腸がん(大腸がん)、頭頸部がん、非小細胞肺がん、膵がん、胆道がんの術後補助化学療法について、ティーエスワンの有効性と安全性は確立していません。

術後補助化学療法とは、手術によるがん細胞摘出後に体内に残っているかもしれない微小ながん細胞を完全に排除することを目的として、術後一定期間抗がん剤が投与される治療法です。また、再発のリスクを下げるために投与される場合があります。

・非小細胞肺がんについて、ティーエスワン単剤の有効性と安全性は確立していませんので、他の抗がん剤と併用して治療が行われます。

・乳がんに対する術前・術後補助化学療法について、ティーエスワンの有効性と安全性は確立していません。術前補助化学療法とは、乳房温存手術を目的として手術前に抗がん剤を投与する治療方法です。

また、乳がんのティーエスワン投与については、初回治療の有効性と安全性が確立していませんので、アントラサイクリン系の抗がん剤やタキサン系の抗がん剤の治療後に使用する事となっています。

ティーエスワンに期待される治療効果

ティーエスワンは、抗がん剤の中でも代謝拮抗剤というグループに属しており、同じ代謝拮抗剤に属する5FUを改良した薬剤です。

「テガフール」「ギメラシル」、「オテラシル」という3つの成分が配合されており、テガフールは5FUの成分で、がん細胞が増殖する為に必要な材料とよく似た構造をしており、がん細胞が間違って取り込む事でがん細胞死に導くメカニズムを持っています。ギメラシルは、5FUの分解を抑えて効果を持続させる成分で、オテラシルは下痢など特に消化器系の副作用を軽減する成分となっています。

ティーエスワンの効果について、実施された臨床成績を集積したデータをご紹介しますのでご確認ください。効果は、治療前よりもがんの大きさが縮小した患者さんの割合を示す「奏効率」という指標で表しています。

  • 胃がん:46.5%
  • 結腸・直腸がん(大腸がん):32.6%
  • 頭頸部がん:34.1%
  • 単剤療法による非小細胞肺がん:18.2%
  • 併用療法による非小細胞肺がん:47.3%
  • 乳がん:21.8%
  • 膵がん:32.2%
  • 胆道がん:30.5%

主な副作用と発現時期

ティーエスワンなどの抗がん剤は殺細胞性抗がん剤と言われ、がん細胞だけではなく正常細胞にも作用してしまうため副作用が現れます。どのような副作用が現れるのかあらかじめ知っておく事でご自身の変化に気づきやすくなり重症化を防ぐことも可能となりますので、ティーエスワンで主に報告されている副作用を確認しましょう。

主な副作用

ティーエスワン単独治療による、578例の患者さんを対象とした臨床試験で報告された主な副作用は以下となります。

  • 白血球減少:45.8%
  • 好中球減少:43.9%
  • ヘモグロビン減少:38.1%
  • 食欲不振:33.9%
  • 全身倦怠感:22.3%
  • 悪心:22.3%
  • 色素沈着:21.3%
  • 下痢:18.7%
  • 口内炎:17.1%
  • 発疹:11.8%
  • AST(GOT)上昇:11.1%
  • ALT(GPT)上昇:11.1%
  • 血小板減少:10.9%
  • 嘔吐:7.8%

これら副作用の発現時期は投与数日から1ヶ月程度の初期に集中していますが、患者さんによっては投与初日に現れる方や投与から1ヶ月以上経過してから現れる方とさまざまです。また、患者さんによって副作用の重さも異なりますので、ご家族など身近な方にも必要に応じてサポートしてもらいながら生活することをおすすめします。

ティーエスワンの安全性と使用上の注意

ティーエスワンを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。

治療出来ない患者さん

  • ティーエスワンの成分について、重い過敏症の既往歴をお持ちの患者さん。再度使用する事で非常に重い過敏症を発症する可能性があります。
  • 重い骨髄抑制をお持ちの患者さん:骨髄抑制が重症化する可能性があります。
  • 重い肝障害をお持ちの患者さん:肝障害が悪化する可能性があります。
  • 妊婦または妊娠している可能性のある患者さん:テガフール・ウラシルを投与された妊娠中の患者さんにおいて、奇形を有する児を出産したとの報告があります。また、動物実験において催奇形性の報告があります。

重要な基本的注意

  • ティーエスワン投与中止後に代謝拮抗剤の抗がん剤や抗真菌剤フルシトシンの投与を行う場合は、少なくとも7日以上の間隔を空けて投与されます。また、代謝拮抗剤の抗がん剤や抗真菌剤フルシトシンの投与中止後にティーエスワンを投与する場合は、薬剤の影響を考慮して適切な間隔を空けてから投与されます。
  • 骨髄抑制の影響による重い敗血症などの感染症から死亡に至った例が報告されていますので、感染症や出血傾向が現れた場合には注意が必要です。
  • 間質性肺炎の発現や悪化から死亡に至る事もありますので、投与中は呼吸状態や咳、発熱などの発現に注意が必要です。特に非小細胞肺がんでは、他のがんよりも間質性肺炎の発現報告が多いとされていますので注意が必要です。
  • B型肝炎ウイルスキャリアの患者さんにおいてウイルスの再活性化が報告されていますので、肝機能検査やウイルスマーカーの定期的な確認が行われます。

使用上の注意

  • 骨髄抑制をお持ちの患者さん:骨髄抑制が悪化する可能性があります。
  • 腎障害をお持ちの患者さん:薬物の排泄が低下し、血中の薬物濃度が高くなることで副作用が強く現れる場合があります。
  • 肝障害をお持ちの患者さん:肝障害が悪化する可能性があります。
  • 感染症を合併している患者さん:骨髄抑制により感染症が悪化する可能性があります。
  • 耐糖能異常をお持ちの患者さん:耐糖能異常が悪化する可能性があります。
  • 間質性肺炎又はその既往をお持ちの患者さん:間質性肺炎の発現や、症状が悪化する可能性があります。
  • 心疾患又はその既往をお持ちの患者さん:症状が悪化する可能性があります。
  • 消化器官潰瘍又は出血のある患者さん:症状が悪化する可能性があります。
  • 高齢の患者さん:一般に高齢の方は生理機能が低下している場合が多く、副作用が現れやすいとされていますので注意が必要です。
  • 小児の患者さん:小児に対する使用経験がありませんので、安全性が確立していません。

※耐糖能異常とは、糖尿病や糖尿病予備軍を含む、十分に血糖値が下がらない状態を指します。

ティーエスワンは、歴史ある5FUをさらに有効性を高めて開発された日本発の抗がん剤です。副作用の低減も目的として開発されましたが、決して低くはない副作用の発現が報告されています。

特に食欲不振や口内炎、悪心など日常生活を送る上で気になる副作用も現れます。これらの対処方法としては、定期的に歯磨きやうがいなど口腔内を清潔に保つ事で改善される場合がありますのでご参考になさってください。

これからティーエスワンの治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとってもこの記事が参考になれば幸いです。

参考文献

記事内容の修正に関する報告
  • 薬剤師
  • ma2
  • 専門:薬剤
紹介:

将来に迷っていた高校生の頃に身内が数人がんで亡くなる経験をしたことで、延命ではなく治癒できる抗がん剤を開発したいと考えるようになり、薬剤師を目指しました。 大学卒業後は製薬メーカーに薬剤師として勤務し、抗がん剤などの薬剤開発に約18年携わって参りました。 現在は、子育てをしながら医療系の執筆を中心に活動しており、今までの経験を生かして薬剤の正しい、新しい情報が患者様に届くように執筆しております