タキソールが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

タキソールは、近年患者数・罹患率共に上位である肺がん・胃がん・乳がんを始め、様々ながんに対して用いられる抗がん剤で、世界中の多くの医療機関で採用されています。

高い抗がん作用が期待できる一方で、増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、副作用や併用薬など使用事項が多い薬剤でもあります。

このページではタキソールについて詳しく解りやすく解説します。

タキソール(一般名:パクリタキセル)とは

タキソールは、アメリカ合衆国の大手製薬企業ブリストル・マイヤーズスクイブ(略称BMS) が製造販売する抗がん剤で、海外(アメリカ・欧州)では1992年、国内では1997年より販売されています。BMS日本法人が存在しているため、国内において医療用医薬品(処方箋医薬品)として一般に流通しています。

本剤の有効成分パクリタキセルは、微小管脱重合阻害薬と呼ばれる薬剤に分類されており、イチイと呼ばれる植物の樹皮から発見された自然由来成分になります。イチイ樹皮の抽出物に抗がん作用があることが見出されたのが1960年代であるため、効果がパクリタキセルによるものと断定され、作用機序が明確になり、実用化されるまでには非常に長い年月がかかっています。また、開発・発売当初の適応は卵巣がんのみでしたが、その後様々な臨床試験で有効性・安全性が確認され、多くのがんに対して適応が追加されていった経緯もある薬剤になります。

剤形は注射のみで点滴静注を休薬期間を設けながら行っていきます。

タキソールが適応となるがんの種類

現在、タキソール投与が適応となるがんの種類は、卵巣がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、子宮体がん、再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん、再発又は遠隔転移を有する食道がん、血管肉腫、進行又は再発の子宮頸がん、再発又は難治性に胚細胞がん(精巣がん・卵巣がん・性腺外がん)となっており、ある程度進行しているものが対象になります。

がんの種類や進行具合によって、投与量や休薬期間などが異なる様々な投与方法(A~E法)が適応使用としてそれぞれに定められており、多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)が条件となるものもあります。

タキソールに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には細胞分裂(1個の細胞が2個以上の細胞に分かれる現象)が必要になります。動物細胞内には、タンパク質が繊維状に繋がり中空管状に構造をとった微小管と呼ばれる物質が存在しており、細胞増殖には、この微小管が細胞分裂の過程(中期~後期)で重合(束になる)と脱重合(バラバラになる)をくり返す現象が必要となります。

タキソールは、微小管の脱重合を阻害する作用があり、細胞分裂を停止させ、がん細胞の増殖を抑える効果があり、また重合が過剰形成されることで、アポトーシス(細胞の自然死)が促される効果もあります。

細胞増殖を阻害する結果は同じでも、DNA複製過程に作用するアルキル化剤や代謝拮抗薬などとは作用機序が大きく異なっているため、多剤併用療法による相乗効果や、抗がん剤耐性ができ効果が低下した対象への有効性も期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

国内では、基本的な投与方法であるA法と、総投与量が多く進行性が高い乳がんにのみ用いられるB法による臨床試験が行われています。

適応となるそれぞれのがんに対して行われたA法による臨床試験で得られた奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は、卵巣がん26.6%、非小細胞肺がん35.0%、乳がん33.9%、胃がん23.4%、子宮体がん30.4%となっており、乳がん患者に対して行われたB法による臨床試験では、奏効率44.9%となっています。

評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、適応となるいずれのがんに対しての有効性が認められています。

主な副作用と発現時期

タキソールは、その作用機序から高い抗がん作用が期待できる一方で、健康細胞への影響も大きく、副作用が顕著に現れる薬剤になります。

主な副作用症状

A法を用いた対象では、全体の副作用発現率は83.3%となっており、製造販売後の使用成績調査にて末梢神経障害(手足しびれ・冷感)37.6%、関節痛23.5%、筋肉痛18.7%、、悪心21.3%、嘔吐15.0%、脱毛30.5%、発熱11.0%などの副作用症状が報告されており、臨床検査では白血球減少(疲労感・倦怠感増大など)48.5%、好中球減少(感染症リスク増大など)43.8%、ヘモグロビン減少(貧血傾向など)16.6%、血小板減少(出血傾向など)10.6%、AST・ALT(肝機能検査値)上昇8.0%、腎機能検査値上昇4.0%などの数値異常が認められています。

B法においては、投与量が多いため、いずれの副作用も度合い・発現率共に高くなっており、関節痛・悪心・嘔吐・発熱は約40.0%、脱毛にいたっては90.0%を超える発現率となっています。臨床検査でも大きな変動がみられ、特に骨髄抑制(白血球減少・好中球減少・ヘモグロビン減少)は70%超で数値異常が認められています。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

アナフィラキシーショック、麻痺、間質性肺炎、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、心筋梗塞、うっ血性心不全、肺塞栓症、肺水腫、脳卒中、難聴、耳鳴り、消化管出血、消化管潰瘍、大腸炎、腸閉塞、肝機能障害、黄疸、膵炎、急性腎不全、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群などが発現率0.1~5.0%又は頻度不明で報告されています。検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあるため、経過観察を十分に行う必要があります。

タキソールの安全性と使用上の注意

安全性

タキソールは、副作用の多さなどからも、決して投与による身体への負担が少ない薬剤ではありません。実際に、過敏症状や骨髄抑制の悪化により患者が死亡に至った事例もあることから、投与する側(医療機関)は十分な注意と知識、患者側にも有効性及び危険性の理解が必要になっていきます。

抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、特に細胞障害作用を有する抗がん剤においては、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、投与前に過敏症状を防止するための薬剤(抗炎症薬など)の前投与が必ず行われるため、経験に基づく対策がなされている薬剤になります。

使用上の注意(投与・併用)

本剤又はポリオキシエチレンヒマシ油含有製剤(例:シクロスポリン注射液)に対して過敏症の既往歴のある方、重篤な骨髄抑制のある方、感染症を合併している方、妊婦又は妊娠している可能性のある方への投与は禁止されています。また、肝障害のある方、腎障害のある方、骨髄抑制(軽度~中度)のある方、高齢者、アルコールに過敏な方、間質性肺炎又は肺線維症のある方への投与は副作用リスクを高める恐れがあるとして慎重投与とされています

併用禁忌薬は、ジスルフィラム(抗酒剤)、シアナミド(抗酒剤)、カルモフール(抗がん剤)、プロカルバジン(抗がん剤)で、いずれもアルコールに対する耐性を低下させる作用を有しており、本剤はエタノールを含有しているため、併用によりアルコール反応(顔面潮赤・血圧低下・めまいなど)を誘発する恐れがあります。

併用注意薬は、放射線照射、その他抗がん剤、シスプラチン(抗がん剤)、ドキソルビシン(抗がん剤)、ラパチニブトシル(抗がん剤)、アゾール系抗菌薬、マクロライド系抗生剤、ステロイド系ホルモン剤、カルシム拮抗薬(降圧剤)、シクロスポリン(免疫抑制剤)、ベラパミル(抗不整脈薬)、キニジン(抗不整脈薬)、ミダゾラム(麻酔・鎮痛剤)、フェナセチン(鎮痛剤)、となっており、いずれも副作用リスク(特に骨髄抑制)を増強する恐れがあります。

まとめ

タキソールは、その作用機序・効果作用から、第一選択薬としても他剤無効例でも用いられる薬剤であり、今後も幅広い活躍が期待できる抗がん剤になります。

薬剤の作用や危険性をしっかりと把握し、体調や併用薬などの管理・心構えなどの対策をすることが、効果的で効率的な抗がん剤治療に繋がっていきます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。