タルセバが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

抗がん剤タルセバは、国内がん死亡率1位である肺がんの80%を占める非小細胞肺がんの新たな治療薬として開発され、その有効性の高さから多くの国で承認されている薬剤になりますが、高い副作用リスクもあることから、投与には十分な注意が必要であり、患者自身も薬剤についてしっかりと理解する必要があります。

このページではタルセバについて詳しく解説します。

タルセバ(一般名:エルロチニブ)とは

タルセバは、米国の製薬企業OSIファーマシューティカルズが開発・創製した抗がん剤で、国外(米国)では2004年、国内では2007年より販売されています。製造販売権をスイスの製薬企業エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が買い取っているため、国内では子会社である中外製薬が製造販売を行っています。

チロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれる薬剤で、細胞増殖に関わる分子(酵素など)を阻害する分子標的治療薬に分類されており、従来の細胞障害性抗がん剤(アルキル化剤・白金製剤・代謝拮抗薬など)とは異なる作用でがん細胞増殖を抑制するため、先行抗がん剤療法が無効となった対象に対して効果が期待されています。現在までに多くの同系薬剤が開発・発売されていますが、本剤はその第一世代であり、チロシンキナーゼ阻害薬として世界で初めて統計学的に有効性が認められてた薬剤になります。

剤形は錠剤のみで、1日1回経口投与を行っていきます。

タルセバが適応となるがんの種類

現在タルセバが適応となるがんの種類は、非小細胞肺がんと膵臓がんになります。

非小細胞肺がんは、切除不能な再発・進行性で先行抗がん剤療法後に増悪したものと、切除不能な再発・進行性で上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(※作用機序・効果効能にて解説)のものが対象になります。後者は抗がん剤療法未治療なものに限られるため、必然的に第一選択薬として用いられます。

膵臓がんは、治癒切除不能なものが対象で、代謝拮抗薬であるゲムシタビン[商品名(先発品):ジェムザール]との併用が適応の条件となります。

※抗がん剤を含め医薬品の適応は、臨床試験において有効性及び安全性が確認された対象にのみ認められます。

タルセバに期待される治療効果

作用機序・効果効能

ヒトの細胞表面には、上皮成長因子受容体(略称:EGFR)と呼ばれる受容体が存在しており、この受容体に上皮成長因子が結合しチロシンキナーゼ(細胞増殖の伝達因子となる酵素)が活性化することで、細胞の成長・増殖・維持調節が行われていきます。がん細胞にも正常細胞同様にEGFRが存在しており、特定のがん細胞には過剰に発現していることが確認されています。また、非小細胞肺がんには高頻度でEGFR構成遺伝子の変異(EGFR遺伝子変異陽性)がみられ、チロシンキナーゼが常に活性化しいる状態になっているため、がん細胞が無限に増殖してしまいます。

参考図(以下図を参考にイラストを作成して掲載予定)

本剤はこのチロシンキナーゼを選択的に阻害し、がん細胞増殖を低下させることにより抗がん効果を現わしていきます。また、継続的に投与することによりアポトーシス(細胞の自然死)を誘導する効果も期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

タルセバの国内における臨床試験は、適応となるそれぞれのがん患者(日本人)を対象に行われています。

先行抗がん剤療法が無効であった進行又は再発の非小細胞肺がん患者を対象とした本剤単独投与の臨床試験では奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)が28.3%、抗がん剤療法未治療でEGFR遺伝子変異陽性の進行又は再発の非小細胞肺がん患者を対象とした本剤単独投与の臨床試験では奏効率が78.4%、切除不能の膵臓がん患者を対象にした本剤とゲムシタビンの併用療法の臨床試験では奏効率が20.3%となっています。

評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされることから、いずれの対象に対しても有効性が認められており、特にEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対しては第一選択薬として高い効果が期待できます。

主な副作用と発現時期

臨床試験による副作用発現調査も適応となるそれぞれの対象で行われています。適応によって、がん進行度、薬剤投与量、投与状況(併用薬など)が大きく異なるため、副作用の種類や発現率にも差がみられます。

主な副作用症状

先行抗がん剤療法後の非小細胞肺がん患者を対象とした臨床試験では全体の副作用発現率は79.1%となっており、主なものに発疹60.8%、下痢21.5%、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とした臨床試験では全体の副作用発現率は100%となっており、主なものに発疹97.8%、下痢77.0%、皮膚乾燥・皮膚亀裂72.1%、皮膚痒み63.7%、膵臓がん患者を対象とした臨床試験では全体の副作用発現率は99.1%となっており、主なものに発疹93.4%、貧血81.1%、白血球減少80.2%、食欲不振72.6%が報告されています。細胞増殖に関与する薬剤であるため脱毛や口内炎なども報告されていますが、いずれも発現率は10%以下となっており、頭痛・吐き気・神経障害等は発現率1%以下となっています。

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者対象での高い副作用発現率は本剤が初めての抗がん剤治療であることが大きな要因として考えられ、膵臓がん患者対象での発現副作用の違いは併用薬ゲムシタビンによる影響が推測されます。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として間質性肺疾患(間質性肺炎・肺臓炎・肺線維症・急性呼吸窮迫症候群など)、肝炎、肝不全、急性腎障害、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑、消化管潰瘍、消化管出血などが報告されています。

中でも間質性肺疾患は発現率が高く(非小細胞肺がん4.4%、膵臓がん6.4%)、息切れ・呼吸困難などの初期症状がみられた後重篤化する恐れのある疾患で、患者が死亡に至った事例もあります。その他副作用も、いずれも発現率5%未満と低いものですが、検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化・治療効果に影響するものになります。

タルセバの安全性と使用上の注意

安全性

タルセバは、副作用の種類・多さなど、生活の質を低下させる要因も多く、投与による身体への負担は決して少なくありません。前述のように死亡事例もあり、投与する側(医療機関)は十分な注意と知識、患者側にも有効性及び危険性の理解と体調の変化への注意が必要になっていきます。

抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、特に発現率が高い皮膚疾患に対して、紫外線を避ける・皮膚刺激性のある日用品を控えるなどの日常生活でのリスク軽減法の指導や、発現時には保湿剤やステロイド剤での症状緩和などが行われ、その他副作用に対しての検査・経過観察も必須事項として行われるため、経験に基づく対策・対処がなされている薬剤になります。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方への投与は禁止されています。また、間質性肺疾患・肺感染症の方又はその既往歴のある方、肝機能障害のある方、消化管潰瘍のある方、高齢者への投与は、副作用のリスクが高まるとして慎重に投与することとなっています。

併用に注意が必要な薬剤は、ケトコナゾール(抗真菌薬)、クラリスロマイシン(抗生剤)、インジナビル(抗ウイルス薬)、リファンピシン(抗生剤)、フェイトイン(抗てんかん薬)、カルバマゼピン(抗てんかん薬)、フェノバルビタール(抗てんかん薬)、シプロフロキサシン(抗生剤)、オメプラゾール(胃酸分泌抑制薬)、ラニチジン(胃酸分泌抑制薬)、ワルファリン(抗凝固剤)などとなっており、作用機序が同じ同系薬剤も該当します。いずれの薬剤も副作用リスクを高める恐れがあります。

さらに本剤はタバコと相性が悪い薬剤になります。喫煙により本剤成分の血中濃度が低下することがわかっており、治療効果が低下する恐れや、投与量の決定に影響を及ぼします。また、喫煙者が本剤服用中に禁煙すると逆に血中濃度が上昇し副作用リスクが高まるとされているため、喫煙しているか否かの報告を医師に必ず行う必要があります。

まとめ

タルセバは、画期的な作用機序の下開発され、それまでお手上げ状態であった領域に対して、大きな成果をもたらした抗がん剤です。抗がん剤は、臨床試験や使用実績などでリスク管理や併用療法などが特に大きく変化・向上していくため、本剤は、肺がんの死亡率低下に限らず、新たな適応などに対しても、今後の活躍が期待される薬剤といえます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。