サンドスタチンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

サンドスタチンという医薬品について、どのくらいご存知でしょうか。

がん治療では、消化管ホルモン産生腫瘍とがん終末期に高頻度で出現する消化管閉塞の症状改善に用いられる薬剤で、特に後者ではがん治療の本質の1つでもある緩和ケアにおいて重要な役割を担っているため、現在国内外の多くの現場で用いられています。

適応症により、作用効果・使用方法・治療における薬剤の位置づけなど大きく異なるため、しっかりと薬剤について把握しておく必要があります。

このページではサンドスタチンについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

サンドスタチン(一般名:オクトレオチド)とは

サンドスタチンは、スイスに本社を置く大手製薬企業ノバルティス社が製造販売する薬剤で、海外では1987年、国内では1989年より販売されています。日本法人であるノバルティスファーマ株式会社が存在しているため、国内において医療用医薬品(処方箋医薬品)として一般に流通しています。

本剤の有効成分オクトレオチドは、成長ホルモン・甲状腺ホルモン・ガストリン・血管作動性腸管ペプチド・インスリンといったホルモンの分泌を低下させる作用を持つ抑制性ホルモン(ホルモンの分泌を抑制するホルモン)の1種ソマトスタチンの類似体で、ホルモン様作用を有するためホルモン製剤に分類されます。

本剤は、消化管ホルモン産生腫瘍・先端巨大症・下垂体性巨人症のホルモンの過剰分泌が症状・原因となる疾患の治療薬として開発・発売されましたが、その後有効性と安全性が評価され、2004年に進行・再発がん患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状への適用が追加されたことで、がん治療に多く用いられるようになった経緯がある薬剤になります。

剤形は注射剤(皮下注及び筋注)のみになります。

サンドスタチンの適応症と使用状況

消化管ホルモン産生腫瘍

消化器官(胃・腸・膵臓など)のホルモン産生細胞に腫瘍が発生し、血管作動性腸管ペプチド(胃酸分泌抑制作用・血管拡張作用)・ガストリン(胃酸分泌促進作用・インスリン分泌促進作用)などのホルモンが過剰分泌される疾患で、症状は影響するホルモンにより異なり、消化管潰瘍・下痢・顔面潮紅・低カリウム血症など様々になります。発症例が非常に少ないため、希少がんに指定されています。

治療は、切除可能であれば手術による切除を行っていきますが、症状の改善を目的に本剤が用いられます。皮下注用・筋注用いずれの注射剤も使用可能ですが、筋注は使用頻度が4週毎と少なく済むメリットがあるため(皮下注は1日2~3回使用)、筋注での使用例が多くなります。

進行・再発がん患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状

消化管閉塞は、がん終末期患者の約50%に出現する、胃・十二指腸・小腸・大腸などが閉塞し、消化されたものが先に流れにくくなり溜まる状態ことで、急性な吐き気・嘔吐、便秘、持続性の腹痛、腹部膨満などの症状を引き起こし、生活の質を顕著に低下させます。

症状発現には、消化管病変による物理的な閉塞、腸管の圧迫、がん進行に伴う交感神経障害による腸管蠕動異常など様々な原因が考えられます。

根本的な改善策として、以前はチューブを鼻から胃に差し込み消化液を排出する経鼻胃管法や、胃と空腸をつなぐバイパス手術等が行われていましたが、身体への負担や生活の質改善のために手術をすることへの抵抗感などあることから、現在では本剤を用いた症状緩和が一般的となっています。

しかし、適応使用は皮下注のみ(筋注は適応外)、消化器症状があっても消化管閉塞が認められていない場合は適応外である、上部消化管閉塞(胃・十二指腸)には有効性が低いといった難点もあります。また、疼痛ケアにおいては、オピオイド系鎮痛剤(モルヒネ・オキシコドン等)に有効性・即効性ともに劣ってしまいます。

先端巨大症・下垂体性巨人症

いずれも脳下垂体にできる腫瘍(良性)が、成長ホルモンを過剰分泌させて引き起こされ、先端巨大症は額・鼻・顎・手足など身体先端の肥大、下垂体性巨人症は骨が異常に成長し2メートルを超える高身長になるといった症状がみられる疾患になります。

根本的治療には外科手術が行われますが、手術不能や進行具合によっては本剤を用いる薬物療法が第一選択されます。皮下注用・筋注用いずれの注射剤も使用可能ですが、筋注は使用頻度が4週毎と少なく済むメリットがあるため(皮下注は1日2~3回使用)、筋注での使用例が多くなります。

サンドスタチンに期待される治療効果

作用機序・効果効能

サンドスタチンは、抑制性ホルモンのソマトスタチンの類似体であるうえに、ソマトスタチンよりも高いホルモン分泌抑制作用を有しています。ホルモン分泌抑制作用により、消化管ホルモン産生腫瘍・先端巨大症・下垂体性巨人症の症状や進行の原因となる成長ホルモン・ガストリン・血管作動性腸管ペプチドの急速な分泌抑制が期待できます。

また、これらホルモンの分泌抑制は、直接又は間接的に消化液分泌の抑制や水・電解質の吸収亢進に働くため、腸内容物を減少させ、腸の膨張を軽減し、痛みや嘔吐などを改善させる効果があり、消化管閉塞に伴う消化器症状の緩和が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

サンドスタチンの臨床試験はそれぞれの適応症患者を対象に行われています。本剤単剤投与における消化管ホルモン産生腫瘍患者を対象に行った臨床試験では、いずれのホルモン過剰分泌による症状においても改善がみられ、先端巨大症・下垂体性巨人症患者対象では、有効率76.1%と高い結果が出ています。

消化管閉塞に伴う消化器症状における臨床試験は、単独使用によるものや、がん患者の悪心・嘔吐で一般的に用いられる制吐剤との比較試験など様々行われており、がんの種類が異なっていたり、がん終末期であるため経鼻胃管挿入患者であったりと、対象により病状・状態に大きく差が見られるものの、いずれの対象においても顕著に有効性が認められています。

具体的な例として、厚生省実施の国内臨床試験において、消化管閉塞に伴う消化器症状を示す進行・再発がん患者(胃管非挿入患者)を対象に本剤単独投与を行ったところ、1日あたりの嘔吐回数が平均7回から2回に減少した結果がでています。

主な副作用と発現時期

サンドスタチン投与により発現する副作用の調査は、消化管ホルモン産生腫瘍・先端巨大症・下垂体性巨人症の総患者群と、消化管閉塞に伴う消化器症状を有する進行・再発がん患者群で行われており、いずれも本剤単剤投与による臨床試験になります。

主な副作用症状

消化管ホルモン産生腫瘍・先端巨大症・下垂体性巨人症の患者においては全体で37.1%に副作用が見られ、主なものに注射部疼痛(10.6%)、吐き気(9.4%)、胃部不快感(6.2%)、下痢(6.0%)、嘔吐(3.2%)などがあります。

消化管閉塞に伴う消化器症状を有する進行・再発がん患者においては全体で5.4%に副作用が見られ、主なものにγ-GTP[肝機能数値]上昇(1.4%)などがあります。これら以外にも脱水、血糖異常、甲状腺機能障害、頭痛、呼吸困難、疲労感などの副作用もありますが、いずれも1%未満又は頻度不明と発現率は低いものになります。

それぞれの対象で副作用の症状や発現率に差があるのは、消化管閉塞に伴う消化器症状を有する進行・再発がん患者は、注射剤による抗がん剤治療を併用している場合が多く、また本剤の投与は消化器症状を緩和するためのものであるため、注射部疼痛や消化器症状が現れても副作用として計数していないためです。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

特に注意が必要な副作用として、アナフィラキシーショック(蕁麻疹・発疹・血圧低下など)、徐脈が報告されており、いずれも本剤投与直後に発現しやすくなっています。

経過観察はもちろんのこと、β遮断薬(不整脈・狭心症治療薬)やカルシウム拮抗薬(降圧剤)など徐脈作用を有する薬剤は、有効性などを考慮し用量を調節する必要があります。

サンドスタチンの安全性と使用上の注意

安全性

妊娠中・授乳中の方、小児など、使用経験数が少なく安全性が確立されていない対象もありますが、生体内ホルモンの類似体で、副作用・依存性が少ない薬剤であるため、適応が認められれば積極的に用いられます。

ただ、多くは消化管閉塞に伴う消化器症状の緩和ケアに用いられており、その場合症状の除去が最優先であるため、安全性についてはあまり議論されていないのが現状です。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方への投与は禁止されています。また、高齢者は生理機能が低下しているため、減量するなど慎重投与する必要があります。

併用に注意が必要な薬剤は、シクロスポリン(免疫抑制剤)・インスリン製剤(糖尿病薬)・ブロモクリプチン(抗パーキンソン剤)で、それら薬剤の副作用リスクを高める恐れがあります。

まとめ

緩和ケアに用いられる薬剤の投与は、がん症状が軽減されるだけではなく、生活の質が維持され、がん在宅療法の継続が可能になるといったメリットももたらしてくれます。サンドスタチンは、有効性・安全性共に高いため、今後も多くの臨床の場で用いられることが予想される薬剤になります。

参考文献

参考文献

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。