オンコビンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

抗がん剤オンコビンについて、どのくらいご存知でしょうか。

50年以上も前に開発された抗がん剤でありながら、現在でも多くの現場で用いられており、特に血液がんにおいて高い有効性と信頼性を有する医薬品になります。

増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、高い抗がん作用が期待できますが、同時に副作用も高頻度で現れるため、使用には十分な注意が必要になっていきます。

今回はオンコビンについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

オンコビン(一般名:ビンクリスチン)とは

オンコビンは、米国の大手製薬企業イーライリリー社が開発した抗がん剤で、海外(米国)では1963年、国内では1968年より発売されています。国内では日本化薬株式会社が2004年より日本イーライリリー社より製造販売権を承継しています。

オンコビンは微小管重合阻害薬と呼ばれる薬剤に分類されており、有効成分ビンクリスチンはキョウチクトウ科の植物ニチニチソウ(日々草)から抽出された自然由来成分を元に作られた化合物になります。元々は糖尿病治療薬として研究・開発が行われていましたが、細胞毒性(細胞障害)があることが判明し又注目されたことで、抗がん剤研究へ至った経緯がある薬剤になります。

長い使用実績の中で、エビデンス(臨床試験による科学的根拠)や多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)などが確立しているため、現在でも多くの医療機関が採用しています。

剤形は注射剤のみで、休薬期間を設けながら点滴静注を行っていきます。

オンコビンが適応となるがんの種類

オンコビンが適応となるがんの種類は、白血病(急性白血病・慢性白血病の急性転化時を含む)、悪性リンパ腫(細網肉腫・リンパ肉腫・ホジキン病)、小児腫瘍(神経芽腫・ウィルムス腫瘍・横紋筋肉腫・睾丸胎児性がん・血管肉腫など)になります。また多剤併用療法が条件に、多発性骨髄腫、悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫(グリオーマ)、褐色細胞腫にも適応があります。

がんの種類・進行具合によっては第一選択薬としても第二選択薬としても幅広く用いられ、シクロホスファミド(先発商品名エンドキサン)・ドキソルビシン(先発商品名アドリアシン)・ステロイド(プレドニゾロンなど)との併用療法である「CHOP療法」は悪性リンパ腫の標準治療になっています。

オンコビンに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には細胞分裂(1個の細胞が2個以上の細胞に分かれる現象)が必要になります。動物細胞内には、タンパク質が繊維状に繋がり中空管状に構造をとった微小管と呼ばれる物質が存在しており、細胞増殖には、この微小管が細胞分裂の過程(中期~後期)で重合(束になる)と脱重合(バラバラになる)をくり返す現象が必要となります。

オンコビンは、微小管の重合を阻害する作用があり、細胞分裂を停止させ、がん細胞の増殖を抑える効果があり、結果アポトーシス(細胞の自然死)を誘導していきます。

細胞増殖を阻害する結果は同じでも、DNA複製過程に作用するアルキル化剤や代謝拮抗薬などとは作用機序が大きく異なっているため、多剤併用療法による相乗効果や、抗がん剤耐性ができ効果が低下した対象への有効性も期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

国内で行われたオンコビン投与(単独及び多剤併用)による臨床試験で得られた各がん種別の奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は、急性白血病(小児)61.9%、急性白血病(成人)36.2%、慢性白血病(急性転化)66.7%、悪性リンパ腫73.2%[細網肉腫71.4%・リンパ肉腫62.5%・ホジキン病84.2%]、小児腫瘍60.9%%となっており、評価の基準として奏効率が20%以上の場合に効果があるとされているため、いずれの対象に対しても高い有効性が確認できます。

主な副作用と発現時期

オンコビンは、その作用機序から高い抗がん作用が期待できる一方で、副作用が顕著に現れる薬剤になります。

主な副作用症状

特に発現率が高い副作用に末梢神経障害(25.5%)があり、運動性障害(筋麻痺・運動失調・痙攣・言語障害・筋委縮など)、感覚性障害(知覚異常・しびれ感・神経疼痛など)、自律神経性障害(起立性低血圧・尿閉など)、脳神経障害(視神経萎縮・味覚障害・めまいなど)、下肢深部反射減弱・消失など症状は様々です。末梢神経構成要素である軸索(神経線維)の微小管の障害や神経細胞の直接障害などが原因とされています。

また、健康細胞への影響も大きく、脱毛・口内炎・嘔吐・発疹などの副作用も少なくありません。安全性評価により多く報告されている副作用症状は、しびれ感33.2%、脱毛21.9%、下肢深部反射減弱・消失10.7%、倦怠感3.7%、四肢疼痛3.2%、筋萎縮2.1%、めまい1.1%、排尿困難1.1%になります。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

注意すべき副作用として、骨髄抑制(汎血球減少・白血球減少・血小板減少など)、昏睡、イレウス(腸管麻痺)、消化管出血、消化管穿孔、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(低ナトリウム血症・高張尿・意識障害)、アナフィラキシーショック(蕁麻疹・呼吸困難・浮腫)、心筋虚血(心筋梗塞・狭心症)、脳梗塞、難聴、間質性肺炎、肝機能障害が報告されています。検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあります。

中でも骨髄抑制は自覚症状の有無にかかわらず検査値異常は高頻度で現れるため、感染病・貧血・出血傾向などに注意する必要があります。

オンコビンの安全性と使用上の注意

安全性

オンコビンは、副作用の末梢神経障害は生活の質に大きく影響し、誤投与による死亡例(海外)も報告されていることから、決して投与による身体への負担は少なくなく、また取り扱いにも注意が必要な薬剤になります。

抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、特に細胞障害作用を有する抗がん剤においては、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、長い使用実績から多くの臨床データがあり、細かい経過観察やリスク管理を行うことができるため、、経験に基づく対策がなされている薬剤になります。

使用上の注意(投与・併用)

本剤成分に対し重篤な過敏症の既往歴がある方、脱髄性シャルコー・マリー・トゥース病(遺伝性末梢神経障害)患者への投与は禁止されています。脱髄性シャルコー・マリー・トゥース病患者においては、重篤な末梢神経障害が起こる恐れがあるためで、罹患歴や家族歴なども調査し疑いがある場合にも投与しないこととなっています。

また、肝障害のある方、腎障害のある方、骨髄抑制のある方、感染症を合併している方、神経・筋疾患の既往歴のある方、虚血性心疾患のある方、水疱患者、高齢者への投与は副作用リスクが高まるため慎重投与とされています。

併用注意薬は、アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール・ミコナゾールなど)、フェイトイン(抗てんかん薬)、L-アスパラギナーゼ(抗がん性抗生物質)、他の抗がん剤、放射線照射となっており、本剤の代謝抑制・相乗効果による神経毒性増強などにより、副作用リスクが高まる恐れがあります。

まとめ

オンコビンは、投与する側(医療機関)からすれば、使用実績が多く、投与継続するも中止するも判断がしやすく、あらゆる場合に対応できる薬剤です。作用機序や高い有効性から、第一選択薬としても他剤無効例でも用いられる薬剤であるため、今後も多くの臨床の場で長く用いられることが予想されます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。