ネクサバールが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ネクサバールについてご存知でしょうか。
ネクサバールは抗がん剤の中でも分子標的薬とよばれ、長い間経口投与できる肝細胞がんの治療薬として使われてきました。分子標的薬とは何なのか?どのような効き目なのか?という疑問を持たれる方も少なくありません。

このページでは、ネクサバールについて主な作用や治療効果などを詳しくご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)とは

ネクサバールとは、ドイツのバイエル社とオキニス・ファーマシューティカル社で共同開発された分子標的薬の一つで、キナーゼ阻害薬と呼ばれます。

キナーゼとはがん細胞が増えるときに必要な酵素であり、キナーゼが活性することでMAPキナーゼ経路という伝達経路を経由して細胞分裂のシグナルが伝達され、無秩序に細胞が増えていきます。

ネクサバールはキナーゼの活性を阻害する世界初のキナーゼ阻害薬であり、2008年1月に泌尿器科領域における初めての分子標的薬として適応されました。機能の違う様々なキナーゼを阻害するため、『マルチキナーゼ阻害薬』とも呼ばれています。

ネクサバールが適応となるがんの種類

ネクサバールが適応となるがんの種類としては、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、切除不能な肝細胞がん、根治切除不能な甲状腺がん、となります。

根治切除不能とは下記のいずれかを指します。

  1. 技術的に外科的切除が困難な場合(頸動脈・頭蓋底・頸椎転移している状態)
  2. 外科的切除では予後不良であることが予測される場合
  3. 外科的切除で著しい機能障害をきたす(高度の嚥下障害など)可能性が高い場合

ネクサバールはこれまでの抗がん剤と効き方が違うため、手術ができないがんや転移のあるがんにも一定の効果を期待できます。

ネクサバールに期待される治療効果

ネクサバールの働きである分子標的薬とは、がん細胞に特有の分子を狙い撃ちする薬剤のことです。これまでの抗がん剤と違って分子レベルでターゲットを絞り攻撃する作用があります。

がん細胞が増えるときに必要なシグナル伝達において異常なキナーゼが存在すると、無秩序に細胞が増えていき正常な細胞を攻撃します。また、がん細胞が増えるにはがん細胞自身に栄養や酸素を供給できる血管が必要です。そのために自ら新しい血管を作り出す(血管新生)のを促す物質(血管内皮細胞増殖因子:VEGF)を作り出すように働きかけ、がん細胞につなげようとします。

ネクサバールはがんが進むのに必要なキナーゼ(MAPキナーゼ経路のRafとよばれるキナーゼ)や血管新生にかかわる(VEGF受容体)を阻害することでシグナル伝達を遮断し、がん細胞の増殖・成長を抑えます。

主な副作用と発現時期

ネクサバールは様々なチロシンキナーゼを阻害するため、副作用も様々にあらわれます。その中でも特に頻度の高い副作用の一つに手足症候群といった皮膚症状があります。

手足症候群とは手のひらや足の裏にチクチク感、ピリピリ感、皮膚のほてり、角質が厚くなるといった症状があらわれます。手や足の皮膚の細胞が服用してから1~2週間後に症状のピークがみられ、服用後2か月注意を必要とします。67.6%の方に現れるといわれています。

予防法としましては水仕事を避ける、厚めの靴下を履く、保湿剤を塗る、熱い風呂に入らないなど手足への負担を減らし、『保湿』『刺激をさける』『角質処理』をすることである程度の症状を予防することができます。

そのほかの重大な副作用として、脱毛(54.6%)、下痢(51.4%)、発疹・皮膚落屑(44.9%)、疼痛(口内疼痛、腹痛、骨痛、頭痛及びがん疼痛を含む)(34.1%)、高血圧(34.1%)、疲労(31.4%)、体重減少(25.7%)、リパーゼ上昇(23.5%)、口内炎(23.0%)、食欲不振(22.4%)、アミラーゼ上昇(17.6%)、かゆみ(17.0%)、悪心(12.4%)、ALT上昇(10.5%)などがあります。

ネクサバールの安全性と使用上の注意

安全性

ネクサバールは緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験をもつ医師のもとでネクサバールの投与が適切と判断される症例についてのみ投与することとなっています。また、治療開始前に治療を受けられる方またはそのご家族にネクサバールの有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与することとなっています。

使用上の注意

重度の肝機能障害のある方、高血圧の方、血栓塞栓症のある、またはなったことのある方、脳転移のある方、高齢者へは症状が悪化するなどの恐れがあるため、慎重に投与することとなっています。

  1. 高脂肪食(目安として約900~1000kcal、脂肪含量50~60%)の食後に服用すると薬の吸収が低下するため、高脂肪食の1時間前から食後2時間までの間は服用を避けてください。
  2. 乳汁中へ移行する可能性がありますので、服用中は授乳を中止してください。
  3. 血管新生という働きは体が傷跡を治そうとするのに必要な働きですが、ネクサバールはこれを阻害するために傷の直りが遅くなることがあります。
  4. 大きな手術または抜歯前後は十分な期間を空け、医師にお伝えください
  5. 血液検査において肝機能の値が上昇したり、黄疸や肝不全があらわれることがあるので、ネクサバールを投与しているときは定期的に肝機能検査を行います。
  6. 手足症候群、剥脱性皮膚炎、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症(スティーブンスジョンソン症)、多形紅斑、ケラトアカントーマ(皮膚がんの一種)、皮膚有棘細胞がんなど、皮膚疾患があらわれることがあるので必要に応じて皮膚科を受診するように患者さんに指導することがあります。
  7. 健康食品や食品によって効果が増減されやすい薬です。
    グレープフルーツやセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含む食品は控えてください。
  8. 飲み忘れた場合、気が付いたときに1回分を飲んでください。次に飲む時間が近い場合はその薬は飲まずにとばして次の決められた時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。

併用に注意すべき薬剤

以下の薬を併用した場合、併用薬の効き目を増強させてしまう可能性があるため、併用注意となっています。

  • イリノテカン
  • ドキソルビシン
  • CYP3A4誘導薬(リファンピシン、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、デキサメタゾン等)
  • セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)を含む食品
  • ワルファリン
  • ドセタキセル
  • パクリタキセル

まとめ

今までは外科的治療でしか治療できなかった症状も、ネクサバールが開発されてから経口投与でも治療できる可能性がでてきました。

副作用が全くない薬ではありませんが、正確な使い方をすれば高い効き目も期待される薬です。指示どおり正しく服用し、薬や病気についての正しい知識を得て治療と向き合うことが大切です。

参考文献

記事内容の修正に関する報告
紹介:

東邦大学薬学部卒療護、薬局にて勤務。OTC・調剤実務により管理薬剤師を経て、現在は在宅にて医療・健康についての記事を執筆しています。