メソトレキセートが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

メソトレキセートという抗がん剤について、どのくらいご存知でしょうか。
近年、罹患数が増加傾向にある白血病や、常に上位を占めている乳がん・胃がんなどに用いられている抗がん剤の1つで、抗がん剤創世記に開発された歴史ある医薬品になりますが、増殖する細胞に対して作用するため、高い抗がん作用が期待できる一方で、副作用も高頻度で現れるため、使用には十分な注意が必要になっていきます。

メソトレキセート(一般名:メトトレキサート)とは

メソトレキセートは、アメリカ合衆国に本社を置く大手製薬企業ファイザーが製造販売する抗がん剤で、海外では1953年、国内では1963年より販売されています。日本法人が存在しているため、国内において医療用医薬品(処方箋医薬品)として一般に流通しています。
本剤の有効成分メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗剤と呼ばれる薬剤に分類されており、1940年代に白血病治療薬として開発された成分であるため、本剤は元々白血病にのみ用いられていました。しかしその後、様々な多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)が考案されていったことで、様々ながんへの適応が認められていった経緯がある薬剤になります。
長い使用実績の中で、エビデンス(臨床試験による科学的根拠)や多剤併用療法などが確立している薬剤であるため、効果の信頼性が高く、現在でも広く用いられています。
剤形は経口剤(錠剤)と注射剤があり、がんの種類や進行具合、他剤との組み合わせなどにより使い分けされます。

メソトレキセートが適応となるがんの種類

メソトレキセートは使用方法(通常使用・多剤併用療法)により適応が大きく異なります。それぞれの使用方法の概要、適応や具体的な使用状況について解説していきましょう。

※多剤併用は後発品を使用する場合もあるため、下記の多剤併用療法名は一般名(成分名)及びそのイニシャルを用いた正式名称になります。

通常使用(錠剤・注射剤)

本剤(錠剤及び注射剤)を一般的に用いる場合の適応は、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、絨毛性疾患(絨毛がん・破壊胞状奇胎・胞状奇胎)になります。また、骨髄移植後の合併症予防にも用いられることがあります。

歴史ある抗がん剤であるにもかかわらず適応が白血病・絨毛性疾患に留まるのは、その他がんに対しての優先的に使用する抗がん剤が多く存在し、多剤併用療法でのその他がんに対しての使用が一般的に確立しているためになります。

メトトレキサート・ロイコボリン救援療法(注射剤のみ)

本剤とロイコボリンと呼ばれる薬剤を併用する方法です。ロイコボリンは抗葉酸代謝拮抗剤の1種で、併用によりメトトレキサートの毒性(副作用)軽減効果があるため、メトトレキサートを単剤投与する場合よりも高用量投与が可能になり、重度の白血病に対して効果が期待できます。
この併用療法に限り、急性白血病、悪性リンパ腫に加えて、肉腫(骨肉腫・軟部肉腫など) への適応が認められています。

CMF療法(注射剤のみ)

本剤とシクロホスファミド [商品名(先発品):エンドキサン]とフルオロウラシル
[商品名(先発品):5-FU]の3種類の抗がん剤を併用する方法です。1970年代より用いられている多剤併用療法で、メトトレキサートは自身の抗がん作用に加えて、フルオロウラシルの代謝活性化を促す作用も確認されており、フルオロウラシルの抗がん作用を増強する効果も期待できます。
この併用療法に限り、乳がんへの適応が認められており、乳がんの標準的な抗がん剤治療の1つになります。

メトトレキサート・フルオロウラシル交代療法(注射剤のみ)

本剤とフルオロウラシル [商品名(先発品):5-FU]を併用する方法です。CMF療法同様、メトトレキサートは自身の抗がん作用に加えて、フルオロウラシルの抗がん作用を増強する効果も期待できます。
この併用療法に限り、胃がんへの適応が認められています。主にがん細胞が塊を作らずバラバラに広がっていく未分化型胃がんに対して用いられています。

M-VAC療法(注射剤のみ)

本剤とビンブラスチン[商品名(先発品):エクザール]、ドキソルビシン[商品名(先発品):アドリアシン]、シスプラチン[商品名(先発品):ランダ又はブリプラチン] の4種類の抗がん剤を併用する方法です。
この併用療法に限り、膀胱がん(尿路上皮がん)への適応が認められています。現在は、副作用の少ない別の多剤併用療法が膀胱がん適応であるため、第一選択で用いられることは少なくなっています。

メソトレキセートに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が必要になります。このDNA複製は様々な物質(補酵素)が関与して行われており、ビタミンB群の1種である葉酸もその1つで、葉酸代謝酵素によって活性型に変換されることで作用していきます。
メソトレキセートは葉酸代謝酵素の働きを選択的に阻害する作用があり、活性型を作らせないことでDNA複製を阻害し、がん細胞の増殖を抑制させ、死滅させる効果が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

本剤は、骨髄移植後・放射線治療後・他の抗がん剤併用での投与によるものが圧倒的に多く、単剤投与による明確な臨床データはありませんが、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法では、急性白血病に対しての奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)が70%、CMF療法では、進行・再発乳がんに対しての奏効率が36.1%の結果が出ています。
評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、いずれも有効性が認められています。

主な副作用と発現時期

メソトレキセートは副作用が非常に多いとされる薬剤になりますが、通常使用における副作用発現の調査は行われておらず、単剤で使用した場合での副作用症状・発現率に明確なデータはありません。
下記は、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法による副作用発現調査による結果になります。

主な副作用症状

メトトレキサート・ロイコボリン救援療法における副作用発現率は全体で95.5%となっており、主なものに食欲不振(77.0%)、吐き気・嘔吐(71.2%)があり、それら以外にも過敏症(発熱・発疹)、出血、肝機能数値(ALT・AST)上昇、腎機能数値上昇、口内炎、下痢、脱毛、頭痛、などが発現率5~50%で報告されています。
食欲不振・吐き気・嘔吐などは投与開始直後に、口内炎・下痢・肝機能数値上昇・腎機能数値上昇などは投与開始から1~2週間経過後に、脱毛は投与開始から2週間後以降に現れやすくなりますが、いずれも増量や投与方法の変更時などにも高頻度で現れやすくなります。
メソトレキセートの毒性・副作用リスクの軽減に用いられる多剤併用療法において高い副作用発現率を示しているため、副作用が多い薬剤であることは間違いありません。ただ、通常使用と比較すると投与量が大きく異なるため、通常及び単剤での使用で同等の結果になるとは限りません。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、アナフィラキシーショック(冷感・呼吸困難・血圧低下など)、骨髄抑制(汎血球減少・無顆粒球症・白血球減少・血小板減少・貧血など)、感染症(肺炎・敗血症・帯状疱疹など)、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、胸水、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、出血性腸炎、膵炎、骨粗しょう症、脳症、中枢神経障害(痙攣・麻痺・認知症など)などが、
いずれも頻度不明ながら報告されています。検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあるため、経過観察を十分に行う必要があります。

メソトレキセートの安全性と使用上の注意

安全性

メソトレキセートは、その効果作用により、副作用が現れやすい薬剤であるため、投与による身体への負担は決して少なくありません。
しかし、抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、本剤のように細胞障害作用を有する抗がん剤においては、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、長い使用実績から多くの臨床データがあり、細かい経過観察やリスク管理を行うことができるため、その点では安全な薬剤といえます。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方、肝障害のある方、腎障害のある方、胸水・腹水などがある方への投与は禁止されています。骨髄抑制のある方、感染症を合併している方、水疱患者、高齢者への投与は副作用リスクを高めるとして慎重投与とされており、妊婦又は妊娠している可能性がある方へは投与しないことが望ましいとされています。
併用注意薬は、サリチル酸などの非ステロイド性抗炎症薬、スルホンアミド系薬剤(抗菌薬・利尿薬・糖尿病薬など)、テトラサイクリン(抗生物質)、クロラムフェニコール(抗生物質)、フェニトイン(抗てんかん薬)、バルビツール酸誘導体(鎮静薬・抗てんかん薬)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(合成抗菌薬)、ペニシリン(抗生物質)、プロベネシド(高尿酸血症治療薬)、シプロフロキサシン(抗生物質)、レフルノミド(抗リウマチ薬)、プロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制薬)、ポルフィマーナトリウム(抗がん剤)になります。

まとめ

メソトレキセートは、副作用が多いことや、対応できるがんの種類や使用方法が限定的であるなど、デメリットもありますが、投与する側(医療機関)からすれば、使用実績が多く、標準抗がん剤治療として確立された多剤併用療法もあるため、使用しやすく又は必然的に使用される抗がん剤になります。今後もこれまで同様多くの臨床の場で用いられることが予想されます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。