キムリアが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

キムリアについてどのくらいご存知でしょうか。

外科手術・抗がん剤・放射線に続く第4のがん治療法である免疫療法に用いられており、その作用機序・治療効果はもちろんのこと、従来の治療法で効果が得られない場合の新たな選択肢としても注目されている製剤になります。このページではキムリアについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

キムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)とは

キムリアは、スイスに本社を置く大手製薬企業ノバルティス社が最先端のがん治療研究を行う米国ペンシルベニア大学と共同で開発し製造販売する免疫療法製品で、海外(米国)では2017年8月、国内では2019年5月より販売されています。

キムリアを用いる免疫療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法と呼ばれ、患者からヒトの免疫機能において重要な役割を持つT細胞を取り出し、遺伝子改変技術によりがん細胞表面に発現するCD19と呼ばれるタンパク質を特異的に認識する受容体「CAR」を導入した「CAR-T細胞」を人工的に作り患者に投与する治療法になります。

キムリアは国内初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法製剤であり、患者自身のT細胞を元に作られたCAR-T細胞が主成分であるため、その患者専用の抗がん剤ともいえる製品になります(一般名であるチサゲンレクルユーセルは、ノバルティスが行う遺伝子改変で作られたCAR-T細胞の総称)。

剤形は注射剤のみで点滴静注を行っていきますが、継続・反復投与は必要なく、1度きりの単回投与になります。

またキムリアはその薬価でも注目されています。患者毎に培養等の工程を経て製造され、非常に手間がかかるため、薬価は1患者あたり3350万円と国内最高額になります。

キムリアが適応となるがんの種類

キムリアが適応となるがんの種類は、小児を含む25歳以下の再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病と、成人の再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫となっています。

いずれも、初発の患者では標準的な抗がん剤治療を2回以上行ったが改善されなかった、再発の患者では抗がん剤治療を1回以上行ったが改善されなかった、造血幹細胞移植(骨髄移植)の適応とはならない又は造血幹細胞移植後に再発したのいずれかに該当する場合に限られます。

キムリアに期待される治療効果

効果効能

投与されたCAR-T細胞は、CD19を発現した白血病細胞(がん細胞)を特異的に認識・結合し、攻撃をしていきます。その結果、白血病細胞の増殖を抑制し、死滅させていきます。

また、CAR-T細胞は体内に定着すると自ら増殖することができるため、1度だけの投与で永久的にCD19を発現した白血病細胞を監視し攻撃することができます。

治験・臨床結果など使用実績

国際多施設共同で行われたキムリア投与による臨床試験において、小児を含む25歳以下の再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病患者対象では奏効率82.0%[完全奏効率64.5%、部分奏効率93.3%]、成人の再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者対象では奏効率58.8%[完全奏効率39.8%、部分奏効率76.1%]との結果が出ています。

評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされていますが、いずれも大きく基準値を上回っており、加えてそれらが抗がん剤治療を行っても改善されなかった再発又は難治性の対象での結果であるため、高い有効性が確認できます。

主な副作用と発現時期

主な副作用症状

再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病患者を対象とした臨床試験においては、全体の95%に副作用が認められており、主なものにサイトカイン放出症候群77%・発熱25%・低血圧25%・頻脈24%・脳症21%・食欲減退20%などが報告されています。

再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象とした臨床試験においては、全体の89%に副作用が認められており、主なものにサイトカイン放出症候群58%・発熱25%・低血圧21%などが報告されています。

いずれの対象において高頻度で現れるサイトカイン放出症候群は、免疫療法特有の副作用で、免疫細胞が病原体と戦う際に放出されるサイトカイン(生理活性物質)が過剰放出されることで起こる免疫反応になります。高熱・悪寒・筋肉痛・潮紅・極度の疲労・吐き気・下痢・発汗・発疹・腫れ・呼吸困難などの症状があり、重度の場合、多臓器不全を引き起こし死に至る場合もあります。

その他注意すべき副作用

キムリア投与後には長期間にわたり、赤血球や血小板などの血球成分、白血球や好中球などの免疫細胞、免疫システムに関わるタンパク質である免疫グロブリンが低下することが確認されており、それにより免疫力が低下し、様々な感染症にかかりやすい状態になってしまいます。

また、急速にがん細胞が死滅することで引き起こされる腫瘍崩壊症候群も報告されており、カリウム・リンなどの電解質バランスが崩れることによる痙攣・むくみ・意識障害・不整脈などが現れる場合もあります。

キムリアの安全性と使用上の注意

安全性

キムリアは患者自身の細胞を元に作られるため、従来の抗がん剤のような副作用(脱毛・吐き気・口内炎など)は少なくなりますが、免疫療法特有の副作用が高頻度・長期間で現れており、今後予期せぬ副作用が現れる可能性も十分考えられます。

キムリアによる免疫療法は、いわゆる最先端の治療であり、使用実績が少なく途中段階の臨床試験もあることから、有効性に加えて安全性も確立されていない部分が多くあります。そのため、抗がん剤以上にリスク管理・経過観察をしっかりと行う必要がある製剤になります。

また、キムリアのような特殊な製剤では、安全性において製剤の品質管理も重要視され議論されます。T細胞の摂取・培養・投与と様々な段階を完璧な状態で行う必要があり、加えて運送・保管なども細心の注意を払う必要があります。現在、細胞の摂取はそれぞれの医療機関で、培養は米国ノバルティス製造工場で行われますが、需要が高まることで、採用する医療機関が増え又は国内に培養施設が作られるなどあるため、あらゆる環境・状況でも安全性を確保し高い治療を提供できる体制構築は今後の課題ともいえます。

使用上の注意(投与・併用)

使用注意として、B型及びC型肝炎ウイルスキャリア(所持)の方又は既往感染者、HIVの感染者、その他感染症を合併している方への投与はそれら感染症が増悪する恐れがあるため、高齢者への投与は一般的に生理機能が低下しているため、状態を観察しながら慎重に投与することとされています。また、生ワクチン接種(BCG・ポリオ・麻疹・風疹など)は、免疫力低下により病原性を現す恐れがあるため併用注意とされています。

まとめ

キムリアは、これまで治療を諦めるしかなかった血液がん患者にとって希望の光ともいえる薬剤になります。現在は、臨床データも適応となるがんの種類・条件も少なく限定的でありますが、がん治療薬は臨床試験や実績により使用状況や評価も大きく変わっていきます。高い有効性と安全性を持つ薬剤として、幅広く使用されることが望まれます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。