インライタが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

みなさんは抗がん剤インライタについて、どのくらいご存知でしょうか。腎細胞がんの新しい治療薬として発売され、化学療法の選択肢が増えたことで、今後の腎細胞がん治療への貢献が期待されていますが、高い副作用リスクもあり、投与には十分な注意が必要になってくる薬剤になります。

今回はインライタについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

インライタ(一般名:アキシチニブ)とは

インライタは、米国の大手製薬企業ファイザーが製造販売する抗がん剤で、国内・国外(米国)共に2012年より販売されています。

チロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれる薬剤で、細胞増殖に関わる分子(酵素など)を阻害する分子標的治療薬に分類されており、従来の細胞障害性抗がん剤(アルキル化剤・白金製剤・代謝拮抗薬など)とは異なる作用でがん細胞増殖を抑制するため、先行抗がん剤療法が無効となった対象などに対して効果が期待される薬剤になります。新しい作用機序(後述)から、従来の分子標的薬に多く見られる骨髄抑制や血液障害などの副作用を軽減できると考えられ開発された経緯があります。

剤形は錠剤のみで、1日2回を基本に経口投与していきます。

インライタが適応となるがんの種類

現在、インライタが適応となるがんの種類は、腎細胞がん(根治切除不能又は転移性)のみになります。

腎細胞がんは、細胞障害性抗がん剤のがんに対する感受性が低く、現在、分子標的薬が化学療法の第一選択として用いられており、様々なタイプの薬剤から患者個々の状態にあわせて選択されます。

本剤はまだ新しい薬剤であり、腎細胞がん化学療法には、本剤より先に販売されている分子標的薬のネクサバール(一般名:ソラフェニブ)やスーテント(一般名:スニチニブ)が優先的に用いられる傾向にあるため、第一選択薬として用いられることはあまりありません。

インライタに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、成長・増殖には栄養素や酸素が必要になります。そこで、がん細胞は血管内皮細胞増殖因子(略称:VEGF)と呼ばれる物質を放出し、血管にある血管内皮細胞増殖因子受容体(略称:VEGFR)に結合させチロシンキナーゼ(細胞増殖の伝達因子となる酵素)を活性化させることで、がん細胞に血管を生成させ、栄養や酸素の供給経路を自ら作り出していきます。それにより無秩序に増殖していくわけです。

インライタは、VEGFRに作用し、働きを阻害することで、がん細胞増殖を低下させ、抗がん効果を現わしていきます。また継続的に投与することによりアポトーシス(細胞の自然死)を誘導する効果も期待できます。1種類のチロシンキナーゼを“選択的”に阻害することが本剤の特徴で、複数のチロシンキナーゼを阻害する他の分子標的薬にみられる副作用(骨髄抑制・血液障害)が少ないとされています。

治験・臨床結果など使用実績

インライタの臨床成績は、国際共同試験(日本人含む)において、一次治療として全身療法(スニチニブ・ベバシズマブ・テムシロリムス又はサイトカイン)による治療歴のある転移を有する腎細胞がん患者を対象に、本剤とネクサバール(一般名:ソラフェニブ)の単剤投与による無増悪生存期間(がんが進行せず安定した状態である期間)の比較判定が行われており、無増悪生存期間の中央値がネクサバール群が4.7ヶ月であったのに対し、本剤は6.8ヶ月となっています。

また、国内で行われてた転移を有するサイトカイン抵抗性の腎細胞がん患者を対象とした臨床試験では、得られた奏効率(がん治療を実施した後にがん細胞が縮小または消滅した患者の割合。20%以上の場合に効果があるとされる)が50.0%となっており、いずれの試験においても高い有効性が認められています。

主な副作用と発現時期

インライタの副作用調査は、国際共同試験(日本人含む)において、転移を有する腎細胞がん患者を対象に行われています。

主な副作用症状

全体の副作用発現率は90.4%となっており、主な副作用及び検査値異常に、下痢50.8%、高血圧39.3%、疲労34.8%、悪心28.1%、食欲減退27.8%、発声障害27.5%、手足症候群27.0%、甲状腺機能低下症18.3%、無力症16.9%、嘔吐16.6%、体重減少16.3%、粘膜の炎症14.6%、口内炎14.3%、発疹12.6%、便秘11.8%、頭痛10.7%、蛋白尿10.7%、皮膚乾燥10.1%、味覚異常10.1%などが報告されています。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、高血圧クリーゼ(血圧の著しい上昇による臓器障害)、動脈血栓塞栓症(一過性脳虚血発作・網膜動脈閉塞・脳血管発作・心筋梗塞など)、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症・深部静脈血栓症・網膜静脈閉塞・網膜静脈血栓症など)、出血(鼻血・血尿・直腸出血・喀血・脳出血)、消化管穿孔・瘻孔形成、甲状腺機能亢進症、創傷治癒遅延、可逆性後白質脳症症候群(頭痛・痙攣・錯乱・視覚障害・神経障害)、肝機能障害(AST・ALT値上昇)、心不全、間質性肺炎などが報告されています。

いずれも5%以下または頻度不明と発現率は低いですが、放置することで重篤化する恐れがあり、死に至る場合もあるため非常に注意が必要になります。

インライタの安全性と使用上の注意

安全性

インライタは、副作用発現頻度も高く、また使用経験が少ないことで今後予期せぬ副作用が現れる恐れも十分に考えられます。

ただ、抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、緊急時に十分な対応ができる医療施設において、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師のもとでのみ用いることができる薬剤であるため、投与は十分な注意と経過観察のもと行われています。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方、妊婦又は妊娠している可能性のある方への投与は禁止されています。また、高血圧症の方、甲状腺機能障害のある方、血栓塞栓症又はその既往歴のある方、脳転移を有する方、外科的処置後・創傷が治癒していない方、中度以上の肝機能障害を有する方への投与は副作用が強く現れる場合があるため慎重投与とされています。

薬剤として、アゾール系抗真菌薬(ケトコナゾール・イトラコナゾールなど)、マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシンなど)、HIVプロテアーゼ阻害薬(リトナビルなど)、デキサメタゾン(抗炎症薬)、フェニトイン(抗てんかん薬)、カルバマゼピン(抗てんかん薬)、フェノバルビタール(抗てんかん薬)、リファンピシン(抗生物質)、食品として、グレープフルーツ、セイヨウオトギリソウ含有食品(ハーブティーやリラックス系サプリメントなど)などは、本剤の代謝経路に関与し、作用効果に影響を及ぼす恐れがあるため、併用注意とされています。

まとめ

インライタは、現在は適応となるがんの種類が限定的で、使用実績も多くはありませんが、臨床結果などにもあるように、非常に優れた抗がん剤であることは間違いありません。実際に海外では、いくつかの併用療法が臨床試験で肯定的な結果が得られており、腎細胞がんの初回治療の承認が得られいます。
今後国内でも、幅広く、優先的に利用されることが期待されます。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。