ジェムザールが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ジェムザールは、膵臓がん・肺がん・乳がんなど様々ながん治療に対して用いられており、多くの国で承認されている抗がん剤になります。

高い抗がん効果が期待できる一方で、増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、副作用リスクも高く、患者の状態や併用薬などによっては投与に十分な注意が必要になっていきます。

このページではジェムザールについて詳しく解説します。

ジェムザール(一般名:ゲムシタビン)とは

ジェムザールは、アメリカ合衆国に本社を置く大手製薬企業イーライリリー社が製造販売する抗がん剤で、海外では1996年、国内では1999年より販売されています。イーライリリー社の日本法人が存在しているため、国内において医療用医薬品(処方箋医薬品)として一般に流通しています。

本剤は、フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬と呼ばれる薬剤に分類されており、同系抗がん剤で最も歴史のあるフルオロウラシル[商品名(先発品):5-FU]よりも効果(抗がん効果・疼痛などの症状緩和効果)・安全性共に高く、フルオロウラシルには適応がない膵臓がんの治療薬として開発されたため、発売時非常に注目を浴びています。その後、臨床での有効性・安全性が認められ、有効な多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)が考案されていったことで、様々ながんに対して適応が追加されていった経緯がある薬剤になります。

剤形は注射剤のみで点滴静注を行っていきます。週1回行うだけとなっているため、外来での投与も可能になります。

ジェムザールが適応となるがんの種類

現在、ジェムザールが適応となるがんの種類は、膵臓がん、非小細胞肺がん、胆道がん、尿路上皮がん、手術不能または再発の乳がん、がん化学療法後に増悪した卵巣がん、再発又は難治性の悪性リンパ腫となっており、ある程度進行しているものが対象になります。術後補助療法(残っているがん細胞による再発予防)にも用いられる場合もありますが、有効性・安全性が確立していない点も多く、事例としては稀になります。

ジェムザールに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が必要になります。

本剤の有効成分ゲムシタビンは、DNAの材料と似た構造をしており、DNA複製過程に特異的に取り込まれ作用する性質を持っています。ゲムシタビンが取り込まれることで、DNA複製が阻害、またアポトーシス(細胞の自然死)が誘導され、抗がん効果を現わしていきます。

治験・臨床結果など使用実績

ジェムザールの臨床試験は適応となるそれぞれのがん患者を対象に行われています。また、臨床試験は薬剤の有効性・安全性などを検討する目的で行われるため、基本的には単剤(対象となる薬剤のみ)で試験されますが、本剤は適応となるがんの種類によっては多剤併用が第一選択されることもあるため、それらに基づいた臨床試験が行われています。

膵臓がん患者に対して行った本剤単剤投与による臨床試験では有効率(疼痛などの症状緩和効果)が28.6%、非小細胞肺がん患者に対して行った本剤単剤投与による臨床試験では奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)が23.6%、胆道がん患者に対して行った本剤単独投与による臨床試験では奏効率が17.5%、尿路上皮がん患者に対して行った本剤とシスプラチン[商品名(先発品):ランダ又はブリプラチン]の併用療法による臨床試験では奏効率が49.4%、手術不能又は再発乳がん患者に対して行った本剤とパクリタキセル[商品名(先発品):タキソール]の併用療法による臨床試験では奏効率が41.4%という臨床結果が出ています。

評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、ほとんどのがんに対しての有効性、また多剤併用による効果増強が確認できます。

主な副作用と発現時期

ジェムザールは、細胞増殖を阻害する抗がん剤で高頻度で現れる吐き気・嘔吐、脱毛、口内炎などの副作用は極めて少ない薬剤ですが。製造販売後の使用成績調査によると全体の74.9%に何らかの副作用が現れたと報告されています。

以下の副作用は、国内の本剤単剤投与による臨床試験において認められたものです。

主な副作用症状

最も報告例が多い副作用は、白血球減少(72.6%)、好中球減少(69.2%)、血小板減少(41.4%)、ヘモグロビン減少(66.5%)などの骨髄抑制で、いずれかの又は複数の血液検査値異常が本剤投与患者の大半にみられます。疲労感、倦怠感、発熱、出血傾向(歯ぐき・鼻血)、貧血、息切れ、風邪症状(感染力低下による)などの症状・合併症を引き起こす恐れがあります(症状の発現率は10~30%)。

また、頭痛、動悸、食欲不振、吐き気、嘔吐、、尿量減少、血圧上昇、物忘れ、発疹などの副作用も1~10%もしくは頻度不明ながら報告されています。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、間質性肺炎、アナフィラキシーショック、心筋梗塞、うっ血性心不全、肺水腫、気管支痙攣、成人呼吸促拍症候群、腎不全、溶解性尿毒症症候群、皮膚障害(紅斑・水疱)、肝機能異常(AST・ALT値上昇)、黄疸)などが、いずれも頻度不明ながら報告されています。

検査等で発覚する疾患、副作用症状の原因となる疾患も含まれており、放置することで重篤化する恐れもあります。

ジェムザールの安全性と使用上の注意

安全性

本剤は、吐き気・脱毛などの抗がん剤特有の副作用が少なく、週1回の点滴静注で済むため、生活の質の維持しやすく、安全性の高い薬剤として評価も高くなっています。

ただ、現れる重大な副作用の中には、症状悪化による死亡例が報告されているものもあり、また多剤併用療法にて用いられることも多いため、緊急時に十分対応できる医療施設において、抗がん剤治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、投与が適切と判断される症例についてのみ使用することと警告されており、血液検査等を頻回行い、経過観察することが必須になります。患者自身も体調の変化への注意を心がける必要があります。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方、高度な骨髄抑制のある方、重篤な間質性肺炎又は肺線維症のある方、重症感染症を合併している方、妊婦又は妊娠している可能性のある方への投与は禁止されています。また、骨髄抑制(軽度~中度)・肝障害・腎障害のある方、間質性肺炎又は肺線維症・心筋梗塞の既往歴がある方、高齢者の投与は、副作用のリスクが高まるとして慎重に投与することとなっています。

併用が禁止されているものは胸部放射線照射(胸部への放射線療法)で、同時併用により重篤な食道炎・肺臓炎を引き起こし死亡に至った事例が報告されているためになります。また、併用に注意するものは腹部放射線照射、その他抗がん剤(アルキル化剤・代謝拮抗薬)、抗生物質になります。

まとめ

ジェムザールは、発売から20年以上経ち、多くの臨床で用いられてきた実績・データがあり、第一選択薬として採用している医療機関も増えてきています。また、海外では国内適応外であるがんに対しても臨床試験が行われ、それらに対する有効性・安全性・多剤併用療法が確立しているものも多くあるため、国内でも新たな適応・使用方法が採用される可能性があるなど、今後も幅広い活躍が期待できる抗がん剤の1つといえます。

参考文献

記事内容の修正に関する報告
紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。