エンドキサンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

エンドキサンという抗がん剤について、どのくらいご存知でしょうか。

50年以上も前に開発された抗がん剤でありながら、非常に幅広いがんの種類に対応できることから、現在でも多くの現場で用いられており、がん治療を専門とするほとんどの医療機関で採用されている医薬品になります。

増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、高い抗がん作用が期待できますが、同時に副作用も高頻度で現れるため、使用には十分な注意が必要になっていきます。

このページではエンドキサンについて詳しく解りやすく解説します。

エンドキサン(一般名:シクロホスファミド)とは

エンドキサンは、国内大手製薬会社の塩野義製薬株式会社が製造販売する抗がん剤で、1962年より販売されています。現在一般的に用いられている抗がん剤の中で、最も歴史あるものになります。

本剤の有効成分シクロホスファミドは、アルキル化剤と呼ばれる薬剤に分類されており、世界初の抗がん剤成分ナイトロジェンマスタードより効果・安全性に優れた化合物の探索の過程で1958年にドイツで開発されたもので、投与後、生体内で代謝されナイトロジェンマスタードに変換されて効果を現す薬剤(プロドラッグ)になります。

長い使用実績の中で、エビデンス(臨床試験による科学的根拠)や多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)などが確立している薬剤であるため、効果の信頼性が高く、現在でも広く用いられています。

剤形は注射剤と内服剤(錠剤・散剤)があり、がんの種類や進行具合、他剤との組み合わせ、患者への負担などを考慮して使い分けされます。

エンドキサンが適応となるがんの種類

現在、エンドキサンが適応となるがんの種類は、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(ホジキン病・リンパ肉腫・細網肉腫)、乳がん、急性白血病、真性多血症、肺がん、神経腫瘍(神経芽腫・網膜芽腫)、骨腫瘍になります。また、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、咽頭がん、胃がん、膵がん、肝がん、結腸がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、睾丸がん、絨毛がん、横紋筋肉腫、悪性黒色腫(メラノーマ)にも適応ですが、他の抗がん剤との併用が必須になります。

単剤投与・多剤併用・高用量投与と様々な使用方法があり、初期から末期のがんまで幅広く使用されます。

エンドキサンに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が必要になります。エンドキサンは、DNAの複製を阻害する作用があり、抗がん効果を表していきます。

有効成分シクロホスファミドは、それ自体には抗がん作用はなく、摂取後、主に肝臓にある酵素により段階的に様々な化合物に代謝・変換され、最終的に高い抗がん作用を有するナイトロジェンマスタードに変換されます。ナイトロジェンマスタードが、DNAに結合(アルキル化)することで複製を阻害し、また、DNAがアルキル化した状態で無理に細胞が増殖・分裂を行おうとするとDNAの破壊が起こり細胞が壊死していくため、高い抗がん効果が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

国内で行われた臨床試験のエンドキサン単剤投与による各がん種別の奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は、多発性骨髄腫43.9%、悪性リンパ腫58.1%、肺がん28.3%、乳がん36.2%、急性白血病35.1%、慢性白血病48.2%、子宮がん20.7%、卵巣がん46.4%、神経腫瘍50%、骨腫瘍45.9%、咽頭がん60.7%、胃がん21.1%、膵がん23.8%、肝がん39.4%、結腸がん23.5%、睾丸がん63%、絨毛がん64.1%、横紋筋肉腫64.7%、悪性黒色腫(メラノーマ)24.4%となっています。

がんの種類によって奏効率に差がありますが、評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、幅広い有効性が証明されています。

あくまでも単剤投与による結果であるため、抗がん剤の多剤併用を行った際は、さらに高い効果が期待できるものとされています。

主な副作用と発現時期

エンドキサン及びその代謝物であるナイトロジェンマスタードは、その高い効果と広い作用範囲から、健康細胞への作用が避けられないため、副作用が顕著に現れる薬剤になります。

本剤は、承認時の臨床試験に加えて、発売から長期経過した薬剤が対象の製造販売後臨床試験(再審査・再評価)も行われていますが、試験対象例数・剤形・投与量がその都度異なり、多剤併用が適正使用となっている対象もあることから、単剤のみでの副作用発現率に明確なものが存在していません。

主な副作用症状

エンドキサン投与により特に多くみられる副作用は、悪心・嘔吐・口内炎・下痢・脱毛・白血球減少(感染抵抗力低下など)で、いずれも発現率は50%以上とされています。薬理学上は注射剤と内服剤で、投与量が同じ場合では副作用発現率に大きな差はないとされています(ただし、注射剤は高用量投与が行われることもあるため、データ上、副作用発現率は高い傾向にあります)。

悪心・嘔吐は投与開始直後から、口内炎・下痢は投与開始1週目以降から、脱毛は投与開始2週目以降から現れやすくなりますが、経過と共に症状が軽くなる場合がほとんどになります。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、アナフィラキシーショック(血圧低下・呼吸困難・蕁麻疹など)、骨髄抑制(汎血球減少・顆粒球減少など)、出血性膀胱炎、排尿障害、イレウス(腸閉塞)、胃腸出血、間質性肺炎、肺線維症、心障害(心筋障害・心不全・心膜炎など)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(低ナトリウム血症)、中毒性表皮壊死融解症(水疱・皮膚のただれ・目の充血・高熱など)、肝機能障害、急性腎不全、横紋筋融解症(筋肉痛・脱力感)などが、いずれも頻度不明ながら報告されています。検査等で発覚する疾患が多く、放置することで重篤化する恐れもあるため、経過観察を十分に行う必要があります。

エンドキサンの安全性と使用上の注意

安全性

エンドキサンは、その効果作用により、副作用が現れやすく、決して投与による身体への負担が少ない薬剤ではありません。

しかし、抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、特に細胞障害作用を有する抗がん剤においては、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。本剤は、長い使用実績から多くの臨床データがあり、細かい経過観察やリスク管理を行うことができるため、その点では安全な薬剤といえます。

使用上の注意(投与・併用)

本剤の成分及びナイトロジェンマスタードに対して過敏症の既往歴のある方・重症感染症を合併している方への投与は禁止されています。また、肝障害のある方・腎障害のある方・骨髄抑制のある方・感染症を合併している方・水疱患者・高齢者への投与は副作用リスクを高めるとして慎重投与とされています

併用禁忌薬は、ペントスタチン(商品名コホリン:抗がん剤)、併用注意薬は、他の抗がん剤・アロプリノール(商品名ザイロリック:高尿酸血症治療薬)・フェノバルビタール(商品名フェノバール:抗てんかん薬)・副腎皮質ホルモン・クロラムフェニコール(商品名クロロマイセチン:抗生剤)・インスリン(糖尿病薬)・オキシトシン(商品名アトニン:ホルモン剤)・バソプレシン(商品名ピトレシン:ホルモン剤)・アントラサイクリン系薬剤(抗がん剤)・脱分極性筋弛緩薬(麻酔前投与剤)になります。

まとめ

エンドキサンは、投与する側(医療機関)からすれば、使用実績が多く、投与継続するも中止するも判断がしやすく、あらゆる場合に対応できるという強みがあります。また、多くのがんに対応できることもあり、抗がん剤治療の核となる薬剤といえ、今後も多くの臨床の場で広く用いられることが予想されます。

記事内容の修正に関する報告
紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。