キロサイドが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

キロサイドは、近年患者数・罹患率共に上昇している白血病を始め、様々ながんに対して用いられる抗がん剤で、世界中の多くの医療機関で採用されています。

増殖する細胞に対して作用する抗がん剤であるため、高い抗がん作用が期待できる一方で、副作用や併用薬などの注意事項も多く、薬剤に対するしっかりとした知識と理解が必要になっていきます。

このページではキロサイドについて詳しく解りやすく解説していきましょう。

キロサイド(一般名:シタラビン)とは

キロサイドは、1959年にアメリカの研究者によって合成・開発された抗がん剤で、1969年にアメリカの製薬企業アップジョン社(現在はファイザー社)から発売(商品名:サイトサール)されており、国内では1971年に日本新薬株式会社より発売されています。

代謝拮抗薬(ピリミジン系拮抗薬)と呼ばれる薬剤に分類され、高い細胞障害作用を有していることから、現在様々ながんに対して適応が認められており、長い使用実績の中でエビデンス(臨床試験による科学的根拠)や多剤併用療法(他の抗がん剤との併用)などが確立しているため、効果の信頼性が高く、発売から50年近くたった現在でも多くの医療機関で広く用いられている抗がん剤になります。

剤形は注射剤のみで、商品は大きく分けて、通常使用に用いられる「キロサイド注」と、大量療法(通常の10~20倍量投与)に用いられる「キロサイドN注」の2種類が存在します。

キロサイドが適応となるがんの種類

キロサイドは、キロサイド注とキロサイドN注で適応となるがんの種類が異なります

キロサイド注が適応となるがんの種類

キロサイド注の適応は、急性白血病(急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病・リンパ芽球性リンパ腫など)、消化器がん(胃がん・膵臓がん・肝臓がん・結腸がん等)、肺がん、乳がん、女性器がん(子宮がん・卵巣がん等)、膀胱がんになります。ただし、急性白血病・膀胱がん以外のがんに対しては、他の抗がん剤(フルオロウラシル・マイトマイシンC・シクロホスファミド・メトトレキサート等)との併用が適応の条件となります。

急性白血病においては第一選択薬に位置付けされており、上記の中で最も使用例が多い適応になります。

キロサイドN注が適応となるがんの種類

キロサイドN注の適応は、再発又は難治性の急性白血病(急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病)、悪性リンパ腫になります。ただし、急性リンパ性白血病と悪性リンパ腫に対しては、他の抗がん剤との併用が適応の条件となります。

通常用量では成果が得られない場合や、長期投与によって生じた薬剤耐性を克服する場合などに効果的とされています。

キロサイドに期待される治療効果

作用機序・効果効能

がん細胞も正常な細胞同様、増殖には遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が必要になります。

キロサイドの有効成分シタラビンは、DNAの材料(酵素)と似た構造をしており、DNA複製過程に間違えて取り込まれる性質を持っています。取り込まれたシタラビンは、DNAにとっては異物であるため、それによりDNA複製が進まず細胞増殖が抑制され、結果アポトーシス(細胞の自然死)が誘導されていきます。

治験・臨床結果など使用実績

キロサイドの臨床試験は、キロサイド注及びキロサイドN注で、適応となるそれぞれのがん患者を対象に行われています。また、臨床試験は薬剤の有効性・安全性などを検討する目的で行われるため、基本的には単剤(対象となる薬剤のみ)で試験されますが、本剤は適応となるがんの種類によっては多剤併用が適応使用であるため、それらに基づいた臨床試験が行われています。

キロサイド注の臨床成績

急性白血病患者を対象に行った臨床試験では、本剤単独投与で奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)が61.5%で、そのうち48.8%で完全奏効(がん細胞が完全に消失した状態)、膀胱がん患者を対象に行った臨床試験では、本剤単独投与で奏効率30.6%、マイトマイシンCとの併用療法で奏効率61.3%、その他適応がん患者を対象に行った臨床試験では、他剤併用療法での奏効率が、消化器がん41.0%、肺がん26.6%、乳がん33.3%、女性器がん65.6%となっています。

評価の基準として奏効率20%以上の場合に効果があるとされており、いずれの対象に対しても有効性が確認できます。

キロサイドN注の臨床成績

再発・難治性の急性白血病患者を対象に行った臨床試験では、本剤単独投与で奏効率51.3%、そのうち46.2%で完全奏効、再発・難治性の急性リンパ性白血病患者を対象に行った臨床試験では、ミトキサントロンとの併用療法で完全奏効率64%、L-アスパラギナーゼとの併用療法で完全奏効率45%、エトポシドとの併用療法で完全奏効率56%、再発・難治性の悪性リンパ腫患者を対象に行った臨床試験では、DHAP(本剤・デキサメタゾン・シスプラチン)併用療法で完全奏効率31%、ESHAP(本剤・エトポシド・メチルプレドニゾロン・シスプラチン)併用療法で完全奏効率37%となっています。

主な副作用と発現時期

投与量の違いなどにより、キロサイド注とキロサイドN注で副作用の症状・発現率が異なります。また、適応により静脈注射・動脈注射・膀胱内注入と様々な投与方法があり、それらによる副作用状況も変わってきます。

以下は、キロサイド単独投与における副作用症状で、キロサイド注は臨床試験、キロサイドN注は販売後使用成績調査による報告データになります。

主な副作用症状

キロサイド注の副作用

キロサイド注単独で静脈・動脈内注射した場合に多く報告されている副作用症状は消化器症状(吐き気・嘔吐・食欲不振など)で発現率は26.8%になります。投与開始直後及び増量直後に最も現れやすくなりますが、経過と共に落ち着いていきます。また、倦怠感・口内炎・脱毛・発疹など抗がん剤特有の副作用も報告されていますが、いずれも頻度不明及び5%以下になります。

本剤単独で膀胱内注入(対象:膀胱がん)した場合に多く報告されている副作用症状は膀胱刺激症状(頻尿・排尿痛・膀胱炎・血尿など)で発現率は1.76%、その他副作用は特に報告されていません。膀胱内注入による副作用が少ないのは、膀胱への局所作用であり、血液を介して全身に作用しないためになります。

キロサイドN注の副作用

キロサイドN注単独で静脈内注射した場合の副作用発現率は全体で79.4%となっており、主なものに食欲不振27.1%、吐き気26.9%、嘔吐26.0%、脱毛23.8%、発熱32.3%などが報告されています。加えて倦怠感、口内炎、発疹なども発現率10%前後で現れており、キロサイド注と比較するとそれぞれの発現率も高くなり、発熱といった大量療法ならではの副作用もみられるようになります。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

キロサイド注及びキロサイドN注において、重大な副作用として骨髄抑制(白血球減少・血小板減少・汎血球減少など)、アナフィラキシーショック(呼吸困難・浮腫・蕁麻疹)、急性呼吸促迫症候群、間質性肺炎、急性心膜炎、中枢神経障害(脳症・麻痺・痙攣・意識障害) などが、いずれも頻度不明ながら報告されています。またこれらに加えて、シタラビン症候群(結膜炎・発熱・筋肉痛・骨痛)・肝機能障害・不整脈・心不全などがキロサイドN注に限り報告されています。

キロサイドの安全性と使用上の注意

安全性

キロサイド注・キロサイドN注それぞれで、副作用の度合い・頻度に差があるため、身体への負担も異なりますが、重大な副作用には、放置することで重篤化する恐れのあるものもあり、実際に死亡例も報告されているため、いずれにおいても使用には十分な注意が必要になります。

抗がん剤治療では必ずしも「安全性の高さ=副作用の少なさ」ではなく、特に細胞障害作用を有する抗がん剤においては、ある程度副作用が現れる前提で考えている場合が多く、適した対策や対処法をとりながら、治療効果を高めていくことを重要視しています。キロサイドは、例えばキロサイドN注では骨髄抑制による免疫機能低下で感染症リスクが高まることから無菌に近い環境下(無菌室・簡易無菌室など)での投与が原則とされているなど、経験に基づく対策がなされており、長い使用実績から多くの臨床データがあるため、細かい経過観察やリスク管理を行うことができる薬剤になります。

使用上の注意(投与・併用)

有効成分シタラビンに対して過敏症の既往歴のある方への投与は禁止されています。

また、骨髄抑制のある方、肝障害のある方、腎障害のある方、感染症を合併している方、高齢者、小児、妊婦又は妊娠している可能性のある方への投与は、副作用リスクを高める恐れがあり、また安全性が確立していないため慎重投与とされています。

併用注意薬は、放射線照射、その他抗がん剤、フルシトシン(抗真菌薬)、となっており、いずれも副作用リスク(特に骨髄抑制)を増強する恐れがあります。

まとめ

キロサイドは、投与する側(医療機関)からすれば、使用実績が多く、あらゆる場合に対応できるという強みがある抗がん剤です。第一選択薬として、多剤併用療法薬として確立しているため

、抗がん剤治療のベースとして今後も多くの臨床の場で広く用いられることが予想されます。

参考文献

記事内容の修正に関する報告
紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。