シスプラチンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

シスプラチンという抗がん剤について、どのくらいご存知でしょうか。

歴史ある抗がん剤で、発売から40年以上たった現在でも、多くの現場で抗がん剤治療の第一選択薬として用いられている薬剤になりますが、実際に使用するにあたり「どのように体内で作用し効果を発揮するのか知らない」「古い薬は新薬と比べると副作用が多いイメージがあるけど大丈夫?」といった意見や疑問も少なくありません。

このページではシスプラチンについて作用効果・適応となるがんの種類・副作用・注意事項などを詳しく解説していきましょう。

シスプラチン(商品名:ランダ/ブリプラチン)とは

シスプラチンは、構造上に白金(プラチナ)を含んでいるため白金製剤に分類される抗がん剤の1種になります。元々は、19世紀にイタリアの科学者が研究材料として合成した化合物でしたが、1960年代にアメリカのバーネット・ローゼンバーグらの研究により高い抗がん作用を有することが判明し、1978年にアメリカで、1983年に日本で、抗がん剤として医薬品承認されました。

現在、国内で販売されているシスプラチン製品は、先発医薬品は「ランダ(日本化薬)」と「ブリプラチン(ブリストルマイヤーズ社)」の販売元が異なる2種類が存在し、その他ジェネリック医薬品があり、点滴静注で用いられます。また、血管にカテーテルを挿入し動脈から薬剤を注入する動注化学療法に用いられる「アイエーコール(日本化薬)」と呼ばれる製品もあります。

シスプラチンが適応となるがんの種類

現在、シスプラチン使用が適応となるがんの種類は、点滴静注製剤の「ランダ」「ブリプラチン」等を単剤または多剤併用において用いる場合、睾丸腫瘍、膀胱がん、腎盂・尿管腫瘍、前立腺がん、卵巣がん、頭頚部がん、小細胞肺がん、非小細胞がん、食道がん、子宮頸がん、神経芽細胞腫、胃がん、骨肉腫、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍・卵巣腫瘍・性腺外腫瘍)、悪性胸膜中皮腫、胆道がんになります。

また、悪性骨腫瘍、子宮体がん(術後化学療法・転移再発時化学療法)、再発・難治性悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫・神経芽種・肝芽種・肝原発悪性腫瘍・髄芽腫瘍)に使用している他の抗がん剤の併用薬として用いる場合は、それらも適応に追加されます。

動注化学療法に用いられる「アイエーコール」は、肝細胞がんのみが適応になります。

シスプラチンに期待される治療効果

作用機序・効果効能

正常な細胞は、増殖因子と抑制因子によって、一定以上増えないようにコントロールされていますが、がん細胞は自己に増殖プログラムを持っており、無秩序に増殖していきます。がん細胞も正常な細胞同様、増殖には細胞分裂と遺伝情報を担う高分子生体物質「DNA」の複製が行われます。

シスプラチンは、がん細胞のDNAと結合し、細胞分裂・DNAの複製を阻害する作用があり、がん細胞を死滅させる効果が期待できます。

治験・臨床結果など使用実績

以下は、先発品「ランダ」の使用実績調査による概要になります。

国内で行われた臨床試験(厚生省実施)の単剤投与による各がん種別の奏効率(がん治療を実施した後に、がん細胞が縮小または消滅した患者の割合)は、睾丸腫瘍68.9%、膀胱がん52.9%、腎盂・尿管腫瘍36.4%、前立腺がん19%、卵巣がん57.6%、頭頚部がん25.8%、非小細胞がん19.4%、食道がん21.3%、子宮頸がん35.9%、神経芽細胞腫37.5%、胃がん17.2%となっています。

評価の基準として、20%以上の場合に効果があるとされますが、睾丸腫瘍・膀胱がん・卵巣がんに対しては非常に高い数値となっています。あくまでも単剤投与による結果であるため、抗がん剤の多剤併用を行った際は、さらに高い効果が期待できるものとされています。

主な副作用と発現時期

シスプラチンなどの白金製剤は、副作用が現れやすい抗がん剤とされています。細胞分裂・DNA複製阻害作用が、がん細胞以外に正常な細胞にも障害を与えてしまうことが大きな原因であり、胃腸・口腔内・髪の毛などに顕著に副作用がみられるのは、細胞分裂が活発に行われている部分であるからです。

主な副作用症状

以下は、先発品「ランダ」の使用実績調査による概要になります。

総症例(承認時+市販後調査)における全体の副作用発現率は85.6%となっています。特に多いものに吐き気・嘔吐(74.6%)、食欲不振(62.2%)、全身倦怠感(34.8%)、脱毛(25.7)、白血球減少(36.5%)、貧血(28.0%)、血小板減少(17.0%)があり、下痢・便秘・口内炎・血圧低下・動悸なども10%強で発現しています。

投与直後から1週間の間に吐き気・嘔吐・食欲不振・全身倦怠感・血圧低下・動悸・便秘が、1週間から3週間の間に口内炎や下痢症状が現れやすくなりますが、経過と共に落ち着いていきます。また、投与開始2週目以降より脱毛が見られるようになります。

注意すべき重大な副作用症状または疾患

重大な副作用として、急性腎不全、骨髄抑制、アナフィラキシー症状、聴力低下・難聴、うっ血乳頭、球後視神経炎、脳梗塞、一過性脳虚血発作、溶血性尿毒症症候群、心筋梗塞、狭心症、心不全、不整脈、間質性肺炎、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、劇症肝炎、肝機能障害、消化管出血、消化性潰瘍、急性膵炎、高血糖、横紋筋融解症などが現れる場合があります。

いずれも発現率は10%以下と高くはありませんが、検査等で発覚する疾患が多く、副作用症状の原因となる疾患も含まれています。

シスプラチンの安全性と使用上の注意

安全性

シスプラチンは、その作用機序や副作用の多さなどから、緊急時に十分対応できる医療施設において、抗がん剤治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、投与が適切と判断される症例についてのみ使用することとなっています。

最も注意することにシスプラチンの高い腎毒性があり、開発当時から問題視されていましたが、現在は、腎臓への負担を軽減する目的で、投与時に適切な水分摂取と利尿剤を使用するといった方法をとるなど、投与する側も慎重に対策・リスク管理を行っています

使用上の注意(投与・併用)

重篤な腎障害がある方・本剤及びその他白金製剤に対し過敏症の既往歴がある方・妊婦及び妊娠の可能性がある方への投与は禁止されています。また、腎障害(軽度~中度)・肝障害・骨髄抑制・聴器障害・感染症・水痘がある方・高齢者・小児への投与は、副作用発現に注意し、用量・投与間隔に留意するなど、経過観察を行いながら慎重に投与することとなっています。

併用に注意が必要な薬剤は、その他抗がん剤・アミノグリコシド系抗生物質・バンコマイシン塩酸塩(グリコペプチド系抗生物質)・フロセミド(利尿薬)・フェニトイン(抗てんかん薬)となっています。注意事項に記載はされていませんが、市販されているサプリメントは、種類によっては作用により抗がん剤の効果・副作用発現に影響を及ぼす恐れのあるものもありますので、中止または医師への報告が必要です。

まとめ

シスプラチンは、高い抗がん作用が期待でき、幅広いがんの種類に適応があることから、化学療法(抗がん剤治療) において中心的な薬剤として用いられています。その他抗がん剤を併用または変更する場合において、作用効果や副作用の基準となるなどの役割も持っており、“最初に使う抗がん剤”の場合も多くなります。

副作用の多さなど不安と感じることも多いかと思いますが、使用実績が非常に多い薬剤であるので、十分な事前検査と経過監査を行い投与すれば、決して危険性の高い薬剤ではありません。

正しい情報をしっかりと把握し、病気と薬に向き合うことが、がん治療に最も大切なことになります。

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紹介:

実家は50年以上続く調剤薬局で、幼少期より働く父と母の背中を見て育つ。高校卒業後は、東京の大学の薬学部に入学する。卒業後は大阪・神戸・松山(愛媛)の調剤薬局で働き、経験を積む。その後、実家を継ぎ現在に至る。