抗がん剤での治療中によくある相談事例をご紹介

がん治療相談

抗がん剤を使用する時というのは主に「手術の前後」か「転移がある場合」です。どちらの場合も抗がん剤がもつ「がんが増えるのを抑えることができる」という特徴を利用した治療です。

抗がん剤は体内に入ると毛細血管を通ってがんのある臓器や組織など体全体に広がります。この広がるという抗がん剤の特性により、体内のあらゆる場所に移動する性質のあるがんをキャッチできるという大きなメリットはありますが、その反面、がん以外の正常な部分にも影響を及ぼします。その結果、薬による有害な影響が体に現れることになり、これを副作用と呼んでいます。

最近では分子標的薬など比較的副作用が抑えられる薬が登場しましたが、分子標的薬だから必ずしも副作用が軽いというわけではありません。副作用の強さやどのような症状が出るかなどは個人差があるものの、日常生活を送るにあたって支障が出るような場合もあり、辛い思いをされている方が多くいらっしゃいます。

今回は副作用に関する相談事例をご紹介したいと思います。抗がん剤を続けていく以上、改善が困難なこともありますが緩和の手段を得ることや相談できる人を知ること、同じ思いをしている方が多いことを知ることで辛い治療の助けになればと思います。

投与スケジュールを把握しましょう

副作用の症状は非常に多様で今まで経験したことがない症状が現れる場合もあります。また、副作用が出やすいタイミングも抗がん剤を使用してからすぐ・数週間後・1か月後以降などさまざまです。

それでも、これまでの膨大なデータにより抗がん剤の種類ごとに出やすい症状とタイミングはわかっています。それらをあらかじめ把握することで副作用を予防したり、症状を最小限に抑えることができます。

抗がん剤には投与計画というものがありその計画にのっとって行います。治療前には医師や看護師から必ずそれらの説明がありますので、名称を知るのはもちろん、入院が必要なのか通院なのか、休薬期間はどれくらいでどのような副作用がでやすいのか、まずは直近で使用する抗がん剤のスケジュールをきちんと把握しましょう。

抗がん剤の副作用に関する質問事例

見た目の変化について

脱毛

脱毛は抗がん剤の代表的な副作用です。命に直接かかわる副作用ではありませんが、見た目の大きな変化にショックを受け、人目に触れるのを避けるようになる方もいらっしゃいます。

抗がん剤の副作用というのは細胞分裂の盛んな部分に出やすく毛母細胞もそのひとつです。毛母細胞は分裂速度が速く抗がん剤の影響を受けやすいためです。しかし、必ずしも脱毛するわけではありません。脱毛症状は個人差があり、使用する薬の種類と量によっても差があります。影響を受ける場合は抗がん剤開始から2~3週間で髪の毛が抜け始め、髪の毛だけでなく睫毛や眉毛まで抜けることもあります。しかし、治療が終了すれば3か月後あたりから髪がもどってきます。

脱毛が始まると抜けた髪の毛が散らばるのであらかじめ髪を短く切っておくとよいでしょう。長い髪のままだと脱毛したときに見た目のギャップが大きく、その分ショックを受けるからです。医師から「脱毛する」と言われたら、脱毛が始まるまえにウィッグの購入を検討し通院や仕事で外出するときに備えておきましょう。バンダナや帽子も便利なアイテムです。見た目だけでなく脱毛している部分が直接日光に当たることや乾燥から守ってくれます。

髪が抜けるというストレスが脱毛により悪い影響を与えるということもありますのでこのようなグッズを揃えあらかじめ脱毛に備えておくことで不安を緩和させられれば一番よいですが、脱毛について困ったことがあれば看護師に相談しましょう。

食事の悩み(食欲がない、吐き気・嘔吐がある、たばこお酒に関して)

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は抗がん剤後、数時間から翌日頃にあらわれる副作用です。

女性に多いと言われていて、治療に対する不安や恐怖心によって強く出ることがあります。吐き気・嘔吐に関しては制吐剤によってある程度予防が可能で、抗がん剤の1~2時間前に飲んだり、食事が摂りづらくならないように食前に服用し対処します。

日常の大きな楽しみである食事が摂りづらいというのは大変辛いことです。食事の内容を工夫することで吐き気や嘔吐が和らぐことがあります。例えば、治療前はいつもより量を抑えるとよいでしょう。味付けに関してはさっぱりしたものやすっぱいもの、冷たいものがのどを通りやすい方が多いようです。匂いに対して敏感になる場合は暖かいものを冷ましてから食べましょう。食事に関しては病院の管理栄養士に相談すると経験に基づいた適格なアドバイスをもらえることがありますので主治医や医療相談室などで管理栄養士の栄養相談を申し出てみてください。

体力を保つための食事

栄養状態に問題があると副作用がひどくなることがあります。そのため抗がん剤の副作用から身を守るためには体力を保つ必要があります。治療前からきちんと栄養を取り、体力や免疫力を落とさないようにすることが大事です。もし、治療前から食事が十分にとれない場合は医師や看護師に伝え栄養改善を図ってもらってください。

治療中も抗がん剤によって受けた正常な細胞へのダメージを回復させるためにできる範囲でバランスの良い食事をとると良いでしょう。こうすることで満足感が得られ前向きな気持ちにつながります。どうしても食事が進まない場合は食欲促進薬を使用する場合もあります。

抗がん剤中の飲酒に関しては控えたほうがよいですが、お酒が好きな方は完全にやめることで逆にストレスになりますので主治医に相談しましょう。たばこは基本的に禁止です。抗がん剤の副作用による粘膜への障害を悪化させる原因になります。喫煙している方は今からでも禁煙しましょう。

日常生活に支障が出やすい倦怠感、だるさ、しびれ

抗がん剤によって末梢神経が障害を受け、指や足の先がしびれたりピリピリする感じがすることがあります。長期間治療を続けることで徐々に症状が強くなり、手足の感覚がなくなり生活に支障が出ることがあります。症状が重い場合は抗がん剤を中止することがありますので主治医に相談してください。

しびれは血行が悪いことによって起こることがありますので寒い時期には意識して手足を冷やさないようにし、お風呂にもゆっくりつかります。しびれが強く感覚が鈍くなると火傷やケガをしやすくなるので注意が必要です。足にしびれがあると歩行時に不安定になり転びやすくなるので足のサイズにあった靴を履いたり、ジッパーなどで履口の調整ができるものを選ぶとよいでしょう。

体のだるさや倦怠感の原因は抗がん剤自体によるものや、副作用で起きた貧血が原因のものなどがあります。食欲が落ち体力が低下することによって起こる場合もあります。抗がん剤と一緒にステロイド剤を投与することもありますが、ステロイド剤にも副作用がある為あまり用いられることはありません。抗がん剤が原因のだるさに関しては投与後数日で和らぐことが多いので投与後の外出や仕事を調整するとよいでしょう。

倦怠感やしびれは症状そのものの回復は難しい場合が多いですが、生活に支障が出ているようなときは、我慢せずに主治医や看護師に伝えるようにしましょう。抗がん剤の一時中断や減量といった対処をしてくれることがあります。

がん治療と仕事

医療の進歩により、がん治療をしながらもこれまで通りの社会生活を送ることが可能になってきています。現在抗がん剤治療は通院が主流になっていますので、がんになったら必ずしも働けないということはありません。しかし仕事の目的や職場環境はひとそれぞれのため仕事を続けるか辞めるかという判断を申し上げるのは非常に難しいものです。「がんになったと伝えると解雇されそうで言えない」「状況をどの程度まで伝えていいかわからない」などの不安を抱えていらっしゃる方が多いようです。

しかし、会社に現状を伝えることで今後も働くための支援を受けることができることがあります。まずは勤め先の就業規則などを確認することをおすすめします。そして、治療が始まると医師や看護師から治療計画や副作用やその対処法について説明がありますので、それをきちんと把握し会社に伝えてみましょう。

どれくらいの期間休めるのか、復職した時には以前と同じように働けるのか(現段階の見込みでかまいません)、今後の治療の副作用によって何に注意しなければいけないのかなどを上司、産業医あるいは人事の担当者に伝えます。また、医療機関にはソーシャルワーカーという就労に関する専門家がいますので、会社との交渉をどのように進めればよいかアドバイスをもらうのもよいでしょう。給与の面では以下の制度が使えるか検討しましょう。働けない期間の収入を補ってくれます。

・傷病手当金

会社などに勤めている人が対象で、病気のため仕事を休んで給料がもらえない場合に給料の一部を支給される制度です。復職したあと再度治療が開始された場合も受給することができます。また、退職をしても受給要件を満たしていれば継続してもらうことが可能です。

・障害年金

がんで仕事が制限されるようになった場合も対象となる制度です。障害年金を受けるには年金の請求手続きが必要です。病院のソーシャルワーカーや加入している保険者、会社の総務課などに相談してみましょう。

抗がん剤を続けられないという悩み

抗がん剤での治療中によくある相談事例をご紹介

最後に何らかの理由により抗がん剤を続けられないというケースです。

具体的に抗がん剤をやめる(やめざるを得ない)ときというのは①副作用が強く続けられない②骨髄抑制(血液の成分が減少し命を脅かすこともある)で辞めざるを得ない③治療が功を奏し(画像検査で)がんが消えた④使える抗がん剤がなくなったときです。

③以外は治療を希望しているにも関わらず辞めざるを得ない状況です。皆さまの悩みとしては①と④のケースが多いようです。

副作用が強くこれ以上続けられないケース

抗がん剤には細胞分裂を妨げたり遺伝子に傷をつけるという働きがあります。この働きによりがんが増えるのを抑えることができるのですが、がんだけでなく正常な細胞まで攻撃してしまうことで副作用が起こります。また治療においては通常、多剤併用といって数種類の抗がん剤を同時に使用します。これはそれぞれの抗がん剤の相乗効果を狙ったものですが、多くの種類を使えばそれだけ体への負担が大きくなります。このような理由からまるで命を削るような副作用に苦しむ方が多くいらっしゃり治療したくても継続が不可能なことがあります。

使える抗がん剤がなくなってしまったケース

治療をしているはずなのに抗がん剤を使うことで逆に体力が奪われていくという状況はとても辛いでしょう。それでもがんが小さくなってゆけば辛い治療も報われるというものですが、がんには抗がん剤を使用していくうちに耐性を持つ(あるいは最初から持っていて抗がん剤が効かない)という性質があり副作用で辛い思いをしているにも関わらずがんの縮小効果が出ないということがあります。

効果が現れないときは抗がん剤の種類を変え、改めてその効果を見極めます。新薬が使える状況ならそちらを使ってみるという提案もあるでしょう。いずれの抗がん剤でもやはり効果が出ず、抗がん剤という選択肢そのものがなくなることがあります。主治医からは「治療の手は全て尽くした」と言われ、いわゆる「がん難民」とよばれる状況です。

どこに活路を見出すか

抗がん剤は「全身治療」であり、体全体をターゲットにすることができる治療です。これは保険診療の中で唯一で、他に全身治療はありません。ですので、抗がん剤が使えないとなると保険診療外の治療である自由診療を検討することになります。自由診療というのは保険の適用となっていない治療のことで、いくつか種類がありますが、医学の進歩により新たに解明されたがんのメカニズムを利用した優れた治療も存在します。

最近では免疫治療や遺伝子治療が有名になっています。保険適用ではないため費用は高額ですが、抗がん剤に比べ副作用が出づらく①のように抗がん剤が続けられなかった方でも治療を継続できるケースがあります。またこのような治療ががん難民となってしまった方の希望の光となることもあると思いますが、その効果や費用については「どの治療を選ぶか」「どの医療機関で受けるか」により異なりますので専門としている医療機関に話を聞きにいくなど慎重に検討することをおすすめします。

終わりに

多くの方にとって抗がん剤は決してイメージの良いものではありません。辛く苦しい治療だと思われているでしょう。実際抗がん剤の副作用に全く苦しまないという方のほうが少ないようです。しかし、副作用が出ることを前提にできる限りその対処法を知っておくことが大事だと思います。例えば辛くなったとき、誰に相談できるか駆け込み寺のような場所を心得ておくだけで安心するのではないでしょうか。抗がん剤治療において知っておくということは大きな力になります。

これから抗がん剤を予定している方、今現在副作用に悩まれている方の情報源としてお役に立てれば幸いです。

参考文献

記事内容の修正に関する報告

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