がんの正体と抗がん剤治療の仕組み

がんの正体と抗がん剤治療の仕組み

がんというのは非常にやっかいで怖い病気です。それは発生した場所から全身に広がっていく性質があるからです。もし、がんが発生しても一か所にとどまっていれば、手術で切除したり放射線で焼き殺すことが可能ですから、手が施せないほど進行していると言われることも切除しきれずに再発することもありません。

がんの性質を考えると手術や放射線だけでは太刀打ちできないことがあります。むしろ、手術と放射線だけでは治療が困難なことのほうが多いでしょう。

そこで抗がん剤が重要になってきます。抗がん剤は全身に広がったがんにも対応できます。さらに近年登場した新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬なども治療の第一選択として使用されるようになっています。

この記事では、まずがんとはどういうものなのか知っていただくことで、なぜ抗がん剤が必要なのかお分かりいただけるようにしました。現在、抗がん剤で治療中の方は自身の抗がん剤がどのようなものなのかを確認し治療にお役立てください。

がんの正体

がんで亡くなるとは

現在、日本人の3人に1人ががんで亡くなると言われています。

がんは命に係わる病というイメージが強いため、がんが直接死を招くと考えてしまいがちですが、がんで亡くなるというのは、がんそのものというよりも臓器不全が原因となります。体内のがん細胞が増殖して悪さをし正常な細胞や組織が破壊された結果、生命活動を担っている臓器がはたらかなくなってしまうことが死因になります。

例えば、肺にがんが発生(転移)した場合、がんによって肺胞が破壊されます。肺胞は酸素を取り入れ、二酸化酸素を排出させる働きをしていますので呼吸不全などを引き起こします。また、脳にできたがんは中枢神経を障害して麻痺や意識障害や発作などを起こし死に至らしめます。

このような臓器が障害される症状は多くの末期がんで見られます。がん死はがんが直接死を引き起こすのではなく臓器の機能不全による合併症が死亡の原因となるのです。

悪質ながん細胞

がんが人間を死に至らしめる原因は、細胞レベルで見た「がん細胞」が他の元気な細胞とは大きく性質が異なるからです。特に顕著なのは以下のような性質になります。

①無秩序に増え続け死なない

②離れた臓器に飛び火する(転移)

③周囲の組織にもじわじわ広がる(浸潤)

④栄養や酸素を取り入れることができる

これらはどれも正常な細胞にはない能力です。

私たちの体は、子供のころには背が伸び、ある一定の歳になると成長が止まってその状態を保ったり、けがをして体の一部が傷ついたり失われたときに細胞の増殖によって修復されて傷がふさがった時点で修復がストップします。

このように成長期や組織の再生の際に見られる「細胞が増えていくシステム」というものは完全にコントロールされていて、必要がなくなれば自動的に増殖をやめてくれます。しかし、一方でがんは、生き延びるために新しい血管を作り栄養や酸素を取り込んで成長し、その結果、ストップすることなく増え続け、大きな塊を作りさらに栄養を求めて浸潤や転移していきます。このような過程を経て、ますます悪性度を高めていきます。

なぜこれだけ悪質で生命力の強いがんが体内で発生してしまうのでしょう。

がんの原因

がんになる原因についてはウイルス、化学物質、紫外線や放射線による障害、遺伝などがすでに確認されていますが、これらの原因にはある共通点があります。それは「遺伝子に異常を生じさせる」ということです。

現在、がんはこの遺伝子異常(遺伝子の変異)によって起こる「遺伝子病」ということがわかっています。発がん物質によって遺伝子が傷つく、あるいは正常な細胞分裂ができなくなる(古い細胞から新しい細胞への情報伝達の際にミスコピーが起こる)と、体内に異常な遺伝子をもった細胞ができてしまいます。この変異が徐々に蓄積し、成長するとがんになるのです。

私たちの体内には60兆個もの細胞があると言われていますが、そのうち、このような発がん物質などにより毎日5千個以上のがん細胞が発生しているといわれています。

それでも人間が全員がんになるわけではありません。それは私たちの体を守っている免疫機能が、発生したがん細胞を退治してくれているからです。しかし免疫機能の力が及ばず、がんが免疫機能をすり抜けてしまうことがあります。がんは高齢者に見られやすい疾病ですが、これは高齢化すると免疫機能が自然と低下するからです。(ストレスが多くなることや長く生きていればそれだけ細胞分裂の回数が増えコピーミスが起こる可能性が高くなることも挙げられます。)

免疫機能をかいくぐるがんの性質

さらに、免疫機能というのは外部から体内に侵入してきた異物に対して攻撃をしかけて体を健康に保ってくれる機能ですが、がん細胞はもともと自分の体の細胞が変化して発生したものですので、免疫機能にとって攻撃をしかけて良い対象なのかわかりづらいという、がんにとって有利な点があります。こうして免疫機能が判断を誤った結果、がんが免疫機能をかいくぐってしまうこともがん発生の要因となっています。

これらのような理由で、一日に5千個発生するがん細胞のうちたった1個でも免疫を逃れ成長していけば、それが死をもたらすほどの力を持つがん細胞となるのです。

そして、がん細胞の成長スピードが非常に速いということもがんが恐ろしい理由の一つです。

恐るべきがん細胞の成長速度

文章を手書きで書き写すときのことを想像してみてください。間違いのないように丁寧に書き写せば正確できれいなものが出来上がりますが、適当に書き移せば間違いだらけで汚いものが出来上がります。しかし、適当ですから写すのに時間はかかりません。がん細胞の細胞分裂もこれと同じで、適当に遺伝子の情報をコピーし細胞を作り出せるのでどんどん分裂できてしまいますから、増えるスピードが正常な細胞よりもとても速いのです。

かつ、先ほども述べたように不死身状態で成長していきますのであっという間にがん細胞は1万個、10万個と増えていきます。もともとの大きさが100分の1ミリという微小なサイズなので10億個くらいまで増えるとやっと1㎝くらいの大きさになり、これは早期がんと言われ検査で見つかるサイズです。しかし、細胞分裂というのは1個が2個になり2個が4個になり4個が8個になるという倍々で増えますので1㎝からその先大きくなるまでは加速度的に早いのです。

よく、がんは「早期発見・早期治療」と言われますが、がんが見つかってから大きくなり手が付けられなくなるサイズになるのはあっという間なので、なるべく早く見つけて早く治療したほうが良いということなのです。

次回、抗がん剤治療の仕組みについて

ここまではがんの仕組みについてお話をして来ました。次回は、がんに対抗するための抗がん剤について解説していきますので、これから抗がん剤治療を始めようとされている方は是非とも参考にして頂けたら幸いです。

次回「細胞阻害性抗がん剤、分子標的薬、ホルモン剤の違いとは

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