実は進化していた放射線治療とよくある相談事例

放射線画像

この記事を読んでくださっている方の中には主治医から放射線治療を提案された方がいらっしゃると思います。放射線と聞いてピンと来る方はいるでしょうか。もしかしたら中には悪いイメージをお持ちの方も居らっしゃるかもしれません。

日本のがん治療は「手術ファースト」と言って、まずは手術を検討し不可能なら他の治療を考えるというように、手術に重きが置かれています。それゆえ手術ができないから仕方なく放射線、とか末期がんだから放射線をすすめられた、など考える方も多いようです。しかし、医学の進歩の恩恵を一番受けているのは、実は放射線なのです。

近年コンピューターや機械の技術進歩が急速にすすんでいます。そしてそれが放射線治療で重要視されている「がんの位置を正確に把握する」ことや「副作用の軽減」に直結しています。治療に用いられる装置の性能が良くなったことで、放射線は着実にがんを改善しやすい治療になってきたのです。

現段階では、がんが確実に無くなりまったく副作用がないという夢の治療とまではいきませんが、放射線は皆さんがイメージするよりもメリットの多い優れた治療だと思います。この記事では放射線とはどういう治療なのかをはじめ、副作用といったデメリットの部分も含めてご説明します。

放射線とは

どうして放射線でがんが小さくなるのか

放射線には細胞を殺す働きがあります。

がんは「がん細胞」という細胞の集まりですが、放射線はこの「がん細胞」もそれ以外の「正常な細胞」もどちら攻撃する作用があります。そして細胞分裂が盛んな細胞のほうが、この放射線の攻撃を受けやすいという特徴があります。がん細胞は正常細胞よりも分裂が盛んですので、放射線の影響を受けやすいのです。

さらに、放射線を当てた時にその回復力にも違いがあります。正常な細胞は回復する力を持っていますが、がん細胞はその力に欠けています。放射線を繰り返し照射することによってこの回復力の違いがだんだんと顕著に出てきますので、その結果正常な細胞だけが残るということになるのです。放射線は、このがん細胞と正常細胞の回復力の違いを利用した治療といえます。

ところで、放射線には得意ながんとそうではないがんがあります。特に放射線がむいているがんは、乳がん・前立腺がん・子宮頸がん・喉のがんなどです。

これらのがんは放射線が治療の中心であったり重要な役割を担っています。加えて肺がん、食道がんなどは早期のものなら抗がん剤との組み合わせで治癒が期待できるがんと言われています。

放射線を受ける目的

放射線治療を受けるというと「自分のがんは手遅れである」と思われる方がいらっしゃいます。放射線は末期がんの痛みを取るための治療という認識があるためですが、これは半分が誤解です。

放射線は確かに末期がんに使うこともありますが、早期のがんに対して使うこともあります。放射線の使われ方は大きく分けると以下の2パターンとなります。

完治目的

このケースでは放射線だけで治療することもあれば、抗がん剤と一緒に使ったり、まずは手術をしてから放射線を当てるなど、ほかの治療の補助としての役割で使うことがあります。このようなケースは、がんは早期であり完治を目指した治療といえます。もしくは、手術のあと再発を予防する目的で行う場合は放射線によって治療の念押しをするイメージです。

症状緩和

末期がんとは、全身にがんが広がり完治は不可能で余命宣告を受けているような状態のことを言います。末期がんになるとがんによる痛みや麻痺などの症状が現れることがありますが、放射線はがんを完治させることはできなくてもこのような辛い症状を和らげる効果があります。放射線は手術や抗がん剤と比べて体の負担が少ないので、末期がんの方でも治療することができますし、痛みや麻痺が出ている部分に放射線を当てるとその症状が和らぐため、患者さんは生活の質を保ちながら楽に過ごすことができるようになります。

(余談)放射線科のスタッフについて

主治医から「放射線治療をします」と言われると、放射線を受ける期間は主治医とは別に放射線科の医師にお世話になります。

放射線科は「放射線治療」と「放射線診断」の2グループに分かれ、前者は放射線による治療を行い、後者はCTやМRIなどを用いた検査をし、その画像を読んで診断をくだします。

放射線の治療は専門の医師と放射線技師が担当します。医師は放射線を当てる範囲と量を決定し、放射線技師は医師の決定に従って毎日の治療を行います。また、放射線科には看護師もいます。看護師は治療中の副作用のケアや、患者さんの相談に乗る役割をしています。皆さんが毎日接するのはこの放射線技師と看護師です。ほとんどの場合、医師には毎日会えません。ですので、治療について聞きたいことや医師には相談しづらいことがあれば彼らに相談してみると良いでしょう。

放射線の相談事例

ここからは、主に放射線を受けることになった方が疑問に思いやすい点を質問形式でお答えします。

主治医は時間を割いて説明してくれないこと、あるいは主治医には聞きづらいことがあるかもしれません。そんな時参考にしてみてください。

毎日受けないといけないの?

基本的に、放射線は月曜から金曜の週に5日を数週間(4週間が多い)が治療期間です。

時間は放射線の部屋に入ってから出てくるまで10~20分くらい、実際に照射されている時間は5分くらいです。仕事をされている方は午前を治療に当てて午後から出社するというスケジュールでも可能な場合があるでしょう。それでも、平日毎日通うのは大変だということで頻度を開けたり、何回分かを一度に照射し全体の回数を減らせないかと思う方がいらっしゃいます。

しかし、放射線はできる限りスケジュール通りに受けましょう。上記で述べた通り、がん細胞と正常な細胞は放射線に対する反応に違いがあります。正常な細胞は放射線を受けたあと徐々に回復していきますが、がん細胞は正常細胞ほど回復力がありません。今までのデータからどれくらいの量を何回に分けてあてると一番効果的かということがわかっていて、それに基づき放射線をあてることでがん細胞と正常細胞のダメージの差がはっきりと現れます。その結果がんを小さくするという効果を狙えるのです。

何回に分けて照射するかは、がんの種類や進行具合によって決まります。副作用のため、やむを得ず治療を延期する場合以外は治療を優先しましょう。

何に注意したらいいの?

放射線治療を始めるとき、医師や看護師から治療中の注意を受けます。放射線はあてる対象が体全体におよび、患者さんによって対象となる場所は違いますので注意点はきちんと把握して治療に臨みましょう。

繰り返しになりますが、まずは治療を休まないことです。放射線は入院でも通院でも受ける場合がありますが、特に通院の方は仕事や家事を調整し、スケジュール通りに通ってください。

放射線の量の単位を線量(グレイ)と言いますが、一生を通じて一か所にあてられる線量は限度があります。それ以上あてると体への負担が大きくなってしまうため、がんにダメージを与えることができるぎりぎりの線量をあてていきます。ベストな間隔と回数でスケジュールが組まれていますので治療の中断は効果に差が出てしまいます。

さらに上記のように線量には限界があるので、一連の治療が終了したあと、同じ部位に対しては再度放射線という選択肢はなくなってしまいます。「やり直しがきかない」のが放射線なのです。できるだけ治療を優先しましょう。

副作用はあるの?

放射線の副作用は現れるタイミングによって急性障害と晩発性障害があります。

急性障害

治療中~終了後6か月に起こるもの

・下痢・皮膚の赤み、ただれ・粘膜の炎症・白血球の減少・食欲減退など

晩発性障害

治療が終わってから徐々に進む副作用。

・肺炎・胸痛・下血・発熱など

副作用は照射する患部とその周囲に発生する可能性があります。例えば、下腹部に放射線をあてると下痢になることがあるなどです。

患者さんが放射線の副作用と聞いて心配されるのは急性障害ですが、実は重視されているのは晩発性障害のほうです。急性障害は辛い症状ではありますが、命にかかわることはなく一時的なものです。それに対して晩発性障害はときに命にかかわることがあるからです。

現在、がんに集中的に放射線をあて、それ以外の場所にはなるべくあてないようにする技術が進歩したため、副作用は以前ほど出づらくなりました。それに伴い晩発性障害が発生することはまれなケースになりましたがそれでも十分な注意が必要です。

治療終了後、医師から定期観察に通うよう指示がでるはずです。これはがんの再発を心配するとともに晩発性障害がないことを確認するためでもありますので、決められた通りに受けるようにしましょう。終了後5年間は3か月~半年くらいの頻度で通うことになります。

放射線はいくらかかるの? ~進歩した放射線技術と治療費~

上記のように、放射線は一度で終わらず数回にわたって行います。ですので治療費が心配になるところですが、放射線の治療費は手術や抗がん剤と比べると比較的安いのです。

放射線を当てる回数と当て方によって異なりますが、一般的な放射線(縦横の2方向から照射)の場合、治療費は、1回目が2万~3万円くらいで2回目以降が1回につき3千円から6千円くらいです。週に5日を4週間受けるとすると、10万~15万円(3割負担)くらいです。ここに、必要な場合は薬代や入院費が加算されます。

さらに、2方向から照射する方法の他にも使用する機械の性能が良くなったことよって、多方向から放射線を当てることができる装置が登場しています。そちらは少し費用が変わりますのでご紹介します。

定位放射線

コンピューターを使ってがんの位置、大きさ、形を把握し狙い撃ちする放射線。

がんに対して多方向から照射することによって正常細胞を避け、がん細胞だけに的をしぼってあてることができます。

頭部のがん、転移性の脳腫瘍や一定の条件を満たした肺がんや肝臓がん、前立腺がんなどにおいて保険適用。3割負担の方は約20万円。ガンマナイフという機械を用いた脳のがんに対する治療費は同じく3割負担で約15万円です。

ガンマナイフにおける照射の仕組み
引用:国立がんセンター がん情報サービス

強度変調放射線

多方向から放射線をあてるときに、1つのビームの中で強弱をつけてあてることができる。そのため複雑な形をしたがんに対してがんの形に沿ってあてることができ、がんには十分な線量を当てながら正常な部分への線量を低く抑えることができる。3割負担の方で約13万円。

これらの治療費は保険適用であれば「高額療養費」が使えますので、一般的な所得の方の場合は8万円代を超えることはないでしょう。1割負担の方は4万円代となります。しかし高額療養費は1か月ごとに計算しますので、月をまたいで治療する方はこれ以上かかることがあります。心配な方は治療開始前に医師に相談しておくと良いでしょう。

補足 ~放射線被ばくについて~

日本人は放射線と聞いて被ばくを心配する方が多いようです。がん治療において、放射線(X線)をあてるのはレントゲンやCTを受ける時ですが、検査や治療で放射線を受けるのは「正しい診断を受けるため」あるいは「がんの改善」を目的としています。

レントゲンは基本的に何百枚受けても体に影響はないとされていますし、CTはレントゲンよりは線量は高いですが、命に関わる病気になったこととのバランスを考えるべきだと思います。何十年か先の何かしらの放射線の影響を気にするより、今の体の状態をよく知ったり、改善することのほうが大事なのではないでしょうか。

針を刺すのは痛い? ~体内照射とは~

これまで体の外から放射線をあてる話をメインにしてきましたが、体の内側から放射線をあてる方法があります。「体内照射」といって、放射線を出す物質を体内に入れて体の内側から照射する方法です。物質を埋め込む際に針をさしますが(経口摂取の場合もあり)もちろん針は麻酔をして刺しますので麻酔をする一瞬以外痛みはありません。

体内照射の一つに「密封小線源療法」というものがあります。前立腺がんにおいて密封小線源療法は有効な治療とされています。前立腺に小さなカプセルを挿入し、そのカプセルから出る放射線によってがんを死滅させるという治療です。がん以外の疾患のある方や高齢者でも受けることができ体への負担が少ないのが特徴です。

体内照射には、このように組織に針をさす組織内照射のほかに子宮や気管などの管状の臓器に機械を入れる腔内照射というものもあります。

終わりに

現在、がん患者さんの4人に1人が放射線を受けると言われています。手術や抗がん剤と比べると、これは非常に少ない数字です。日本では手術が優先されるため放射線を受ける方は少なく、放射線の可能性があるケースでも医師からその話が出ないようです。

手術は外科医が物理的にがんを切除しますので、その確実性は信頼がおけるところですが、後遺症が残ることもあります。主治医に言われるがままに手術を終えたあと、やはり放射線という手段もあったのかも…と思っても遅いのです。

治療を開始する前にもう一度ご自身のがんの状況から放射線を検討できないか考えてから決断しても遅くはないでしょう。もし、それでも手術がベストだとわかれば、それはそれで前向きに治療に臨めると思います。

この記事は日本人には比較的なじみのない放射線について知っていただくため、またこれから放射線を受ける方が少しでも不安を払拭できればと思い作成しました。今後のがん治療にお役立て頂けましたら幸いです。

参考文献

記事内容の修正に関する報告

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