【がん治療シリーズ】ステージ2のすい臓がん治療

今回はステージ2のすい臓がんと言われた時の治療の流れについて書きたいと思います。

ステージ2のすい臓がん

「大きさが2センチ以内ですい臓内部に留まっているけれどもリンパ転移がある」

「リンパ転移はないけれども大きさが2センチ以上(すい臓内部)」

であればステージ2のすい臓がんと診断されます。

ステージ2でも自覚症状がない患者様は多いと思います。
よって人間ドッグなどで検査をしてたまたま見つかったというのがほとんどになります。

がんの確定には超音波内視鏡でがんを一部取って、確定診断と呼ばれる病理検査にかけることが推奨されています。

この超音波内視鏡がどこの病院でも有る訳ではなく、使える医師も多くないため、病理検査をしないでPET-CTなどの画像検査や腫瘍マーカーなどからがんと確定することも多いですが、5~10%ぐらいは膵炎を間違えてがんと診断することがあるので、できれば超音波内視鏡が出来る大きな病院に行く方が好ましいです。

すい臓がんステージ2の5年生存率、10年生存率

2016年に国立がん研究センターが5年生存率と合わせて10年生存率を初めて集計しました。
これによると5年生存率は18.2%、10年生存率は11.2%になっています。
生存率は完治率ではなくて生存率です。

ここには寝たきりだけどとにかく生きていますという人も含まれているので注意は必要です。ここには自然死などが含まれていないので、がんで亡くなられた方の割合ということになります。

がんで亡くなられたということは基本的には再発したということになります。よって、手術、放射線をしたとしても約9割が再発するという恐ろしい結果となっています。

治療方法

ステージ2のすい臓がんの場合、取り切れることが出来るという判断になれば手術も可能です。膵尾部にがんがある場合は腹腔鏡手術も可能です(膵頭部の場合は出来ません)。

すい臓がんは極めて再発が多いがんなので、手術後には抗がん剤がスタンダードになります。
使う抗がん剤はTS-1という飲み薬を使います。
(TS-1が使えない患者様はゲムシタビンを使います)

TS-1を1日2回飲み、それを28日間続けて14日間休みます(全部で6週間を1回と考えます)。それを4回続けるので大体半年間の治療になります。

抗がん剤の後は、再発が無いか経過観察になるのですが、2年以内の再発がほとんどであることから2年間は3~6か月に一度の経過観察です。2年目以降は極端に再発の可能性が下がるので半年から1年に一度の経過観察に変わりますが最低でも5年までは行います。
検査方法は腫瘍マーカーとCTになります。ただ、すい臓がんの再発に関しての画像検査については有効性が疑問視されているので、腫瘍マーカーだけの検査の場合もあり得ます。

手術後の経腸栄養療法について

すい臓がんの手術の後は合併症などが問題となることが多いです。経腸栄養療法を行うことで合併症が減ることが期待出来ます。

よく食事療法とかで糖分をはじめとして栄養を取らないことを行っている患者様は多いですが、すい臓がんなどでは手術後に栄養を取る栄養療法が推奨されています。

手術前後の放射線治療について

すい臓がんに対しては手術前、手術後の放射線療法については推奨されていません。
後述している手術の前に重粒子線や陽子線などを照射するという治療は、先進医療では出来ますがガイドラインなどで推奨されている訳ではなく、むしろ否定気味ということになります。

手術の代わりとしての重粒子線治療、陽子線治療

手術の代わりに重粒子線や陽子線などの放射線治療を望む患者様が多いです。

しかし、すい臓がんは極めて再発が多いがんです。
肝臓や腹膜などの遠隔転移の再発については重粒子線も手術も成績は関係ないのですが、すい臓がんは局所再発も多く発生します。
局所再発は簡単に言うと取り残しなどによる再発です。
手術の様にがんの周辺組織も含めて幅広く取り除いた場合でも、想定以上にがんが広がっていることで取り残すことが多いので局所再発は起こります。

重粒子線や陽子線の様なピンポイントで放射線を照射する場合は、ピンポイントな訳ですから手術に比べて取り残しの可能性が高いのは当たり前の話になります。

よって、すい臓がんの場合、先進医療で照射後に手術をすることを前提に重粒子線、陽子線を照射することは出来ますが、手術を避けるために重粒子線、陽子線を照射することは出来ません。
もちろん先進医療ではなく自由診療ならば施設の許可があれば照射することは出来ますが、保険診療ではないので色々ハードルは高いです。

ただ、大きな血管などががんの近くにあって転移がないにも関わらず、手術が出来ない場合などは重粒子線や陽子線が先進医療で出来る場合があり得ます。
その場合は重粒子線や陽子線を積極的に考えても良いかもしれませんが、いずれにしてもすい臓がんにおいて重粒子線、陽子線は保険診療ではないので、主治医の許可が貰えない場合が多いです(トモセラピーやサイバーナイフのようなピンポイント照射は保険診療で出来る可能性があるので、主治医の反対はほとんどないです)。
主治医の反対を押し切って行くか、病院を追い出されることを覚悟で行くことになるのが多いのが現状です(第8回 保険外診療(自由診療)の考え方)。

すい臓がんは再発が極めて多いがんなので、重粒子線、陽子線を照射したとしてもその後の再発予防としてTS-1の抗がん剤を半年行います。そしてその後の5年間の経過観察も行います。

重粒子線、陽子線の施設で抗がん剤や経過観察はおこなってくれないのが普通なので、重粒子線、陽子線照射後は元の病院に戻ることになります。しかし、保険以外の治療を行った後の治療になるので、元の病院に戻れないことも想定出来ます。
その場合は違う病院を自身で探したり、重粒子線や陽子線の施設の先生に新たな受け入れ病院を紹介してもらうという流れになるので、治療が出来なくなることはないと思います。

重粒子線や陽子線が手術よりも再発率が低い訳ではない

遠隔転移の再発については重粒子線や陽子線と手術の場合に差はありません(第5回 遠隔転移の再発はがんが見つかった時から決まっている)。

局所再発については手術の治療成績に勝てることは考えにくいと思います。
局所再発率は手術には勝てないけれども、体に優しい治療方法として重粒子線、陽子線があります。トモセラピーやサイバーナイフなどについても同様の考えで良いと思います。

個人的な考えにはなりますが、ステージ2のすい臓がんの場合、手術をしても約9割の患者様が再発をするので、治療成績が下がったとしても体に優しい重粒子線などはメリットが高いと思っています。高齢者などは特にその傾向が高いと考えています。

再発の率は手術よりも高かったとしても、体に優しい治療を選ぶことで寿命が長くなるということも十分考えられます。

遺伝子治療、免疫細胞療法について

保険以外のすい臓がんの治療方法の代表として遺伝子治療や免疫細胞療法などがあります。
特に遺伝子治療などはすい臓がんにおいて良い症例が多数出ています。

ただ、遺伝子治療や免疫細胞療法が、手術や放射線の代わりになることはあり得ません。

手術や放射線は局所治療です。対して遺伝子治療や免疫細胞療法は全身治療になります。
そもそも使う目的も違います。

ステージ2のすい臓がんの場合、手術をして、抗がん剤をしたとしても約9割のがんが再発します。
保険診療ではそれ以上の治療が出来ません。5年間の経過観察になります。

手術をして、抗がん剤をやったとしても、治らないがんが多いのであれば、それに何かプラスで治療をしたいという場合において、遺伝子治療や免疫細胞療法などがあります。

もしくは、高齢者などで手術や抗がん剤をどうしてもやりたくない場合、手術の代わりにはならないけれども何もしないのが怖いから何かしたいという場合において有効な治療になり得ます。

再発してしまったら

再発には局所再発と遠隔転移の再発があります(「第4回 がんの再発予防の考え方」)。

局所再発はステージがほとんど変わらないので、もう一度手術や放射線という選択肢があり得ます。まだ、完治するかもしれません。

肝臓などの遠隔転移の再発は、その時点でステージが4になります。

ステージ1からステージ2と上がっていく訳ではなくて、いきなりステージが4になります。

この状態だと保険診療においては、抗がん剤しか治療方法がありません。
がんセンターや大学病院に行っても同じ答えになります。抗がん剤しかありません。

使う抗がん剤もどこの病院も同じでジェムザールとアブラキサンの組み合わせか若い人であればFOLFILINOXという抗がん剤になります。

それが使えなくなってきたらリポソーム化したイリノテカンかTS-1ということになりますが、それが最後の治療と言われます。

すい臓がんは抗がん剤があまり期待できないので、抗がん剤がどうしても嫌となっても病院では他の選択肢がないので、病院を追い出されて終わります。

それ以外の選択肢となると治験か保険外の診療となります。

治験は参加できる治験が行われていないと参加出来ないのと保険外の治療は病院では基本的にはおこなっていないので、クリニックみたいなところになります。

いずれにしても今の病院から出ていくことが前提となるので、抗がん剤を断るという選択肢を取りづらいのが現状になっています。

【がん治療シリーズ】ステージ1のすい臓がん治療