がん治療のエビデンスって何?エビデンスの無い治療は危険か

先日がん患者さんが「担当の先生がよく『エビデンス』と言うんですけど、何のことかわかりません」とおっしゃっていました。

医療スタッフの間では「エビデンス」というのは当然のように使われている言葉ですが、患者さんには馴染みのない言葉です。エビデンスって何?と疑問に思いますよね。

今回はそんな「エビデンス」に注目しました。エビデンスとは何か、エビデンスがある・ないとはどういうことか、さらにエビデンスがない治療に対してどう考えれば良いかという観点からご説明したいと思います。

エビデンスって何でしょうか?

簡単に言うとエビデンスとは「この治療が良いとされる根拠や証拠」のことです。

例えば、がんで手術をするとき

「なんで手術が選ばれるのか?」
「手術でどこまでの範囲を摘出すべきか?」
「手術の前後に薬物療法を行った方が良いか?」

など、手術一つとっても、さまざまな角度からアプローチがあるわけですが、その中で「こうした方が良い」という答えを出すにあたって多くの研究や試験が行われています。

先の例で言うと

「放射線より手術をした方が、がんを排除できるから手術が第一選択肢だ」
「がんの周囲ギリギリの範囲で摘出したほうが患者の体の負担が抑えられる」
「手術の後に1か月ほど薬物療法をしたほうが、手術だけよりも再発予防の効果が高い」

このようなことが、多数の人を対象とした実験や長期にわたる研究によって、多くの人に当てはまり有効だと徐々に明らかになってゆきます。そして、その実験や研究のデータから得られた裏付けが「エビデンス」なのです。

エビデンスは大切

現在のがん治療において、この「エビデンス」は重要視されています。それはガイドラインを見てみるとわかります。

こちらは胃がんのガイドラインです。
「本ガイドラインは,2001年の初版以来,いわゆる教科書形式を採用しており,十分なエビデンスまたはコンセンサスを有する治療法をまず本文として記述し…(以下省略) 」
「日常臨床として推奨する治療法はエビデンスに基づくものであることを原則とするが…(以下省略)」

参考:日本胃がん学会 胃がん治療ガイドライン「本ガイドラインについて」より抜粋

ガイドラインというのは、各がんの治療方針を定めた治療マニュアルのようなものです。がん治療を提供している医療機関、がん治療に携わる医師はこのマニュアルにのっとった治療を行うことが求められていますから、ガイドラインはがん治療において重要な役割を果たしていると言えます。

そして、胃がんのガイドラインからもわかるように、ガイドラインはエビデンスを基に作成されています。

それゆえ、昨今のがん治療は「エビデンスありき」「エビデンスがあってなんぼ」と言っても過言ではありません。

エビデンスのない治療は危険?

エビデンスが重んじられる理由はきちんとした裏付けが存在するからです。安全である、効果がある、関連性があるなどということが科学的に証明されているわけです。

不特定多数の人が治療を受けるにあたって、より安全で確実と明らかになっているものが推奨されるのはなかば当然です。

逆に言うと、エビデンスのない治療というのはそれらが明らかになっていないということです。ゆえに、危険がどうかという点で考えるなら「危険な可能性はある」といえます。同様に「効果があるかはっきりわからない」「関連性は明らかになっていない」ともいえます。

もちろん、エビデンスがあることが100%の保障ではありませんから、エビデンスのある治療を個人が受けるにあたって安全を確保できない、効果が出ないということは当然あります。

そして、それと同じようにエビデンスのない治療も100%危険と言い切れるものではありません。これは確率の問題なのです。

さらに、現在「エビデンスがあって確立した治療」も以前はエビデンスのない治療であり、時間を経て認められたものです。今エビデンスのない治療のなかにはその過程をたどっている最中のものもあります。

そのような意味でも「エビデンスがない治療=危険」とはなりません。

もしこれをお読みの方のなかに、まだ保険適用となっていない治療や日本で浸透していない治療を受けるか迷っているという人がいらっしゃったら、その治療は一概に否定されるものではありません。しかしエビデンスがない分、ご自身で治療の効果・体への負担・治療費・治療期間後のことなどきちんと確認して、すべて納得のうえで治療を受けることをお勧めいたします。

エビデンスは柔軟な見方で捉える必要がある

がん治療においては「エビデンス」が非常に重んじられていて、治療の根拠になるものだということはお分かりいただけたかと思います。

がんのメカニズムはいまだ全てを解明しきれていませんから、実際得られたデータはとても貴重なものです。そして、そのデータは日々更新されてゆきます。

十年一昔と言いますが、以前は否定されていた治療が最近になって市民権を得るなんてことが当たり前に起こっています。エビデンスは柔軟な見方で捉える必要がありますね。

皆さまにおかれましては、がん治療への理解を深めるために本記事を活用していただけましたら幸いです。

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