がんの延命治療を受けますか?受けませんか?

「延命治療」はがん以外の病気でも使われる言葉です。

一般的に、病気が進行し、治療を行わなければすぐにでも生命活動が停止してしまう状態の患者さんに行う人工的な処置のことをいいます。人工呼吸や人工透析がそれにあたります。

しかし、がんの場合は少し意味が違います。末期の状態で、できる限りがんの増殖を抑えたりすることを指します。

末期がんでは、主に「抗がん剤」による治療を行います。ですので、今回のテーマである延命治療を受けるかどうかということは、この抗がん剤を受けるかどうか、また、どのタイミングまで受け続けるかということになります。

がんの延命治療とは

がんの延命治療はメリットだけではありません。

そして、治療を受けるか受けないか選択する時間が与えられていることが他の病とは異なるところです。それだけに多くの人がどちらを選ぶべきか悩んでいます。これは患者さんのみならず、家族も同様です。

3人に1人ががんで亡くなると言われている時代に終末期医療はほとんど避けては通れない問題です。どうやって生きてどうやって死ぬか、ということが今問われているのです。

延命治療を受けるということ

延命治療のメインとなる抗がん剤ですが、考えておくべきはその副作用です。もし、抗がん剤に副作用がなければ、命が伸びる可能性がある限り、患者さんにとって延命治療は恩恵しかありません。(治療費がかかるという経済的なデメリットはありますが)

延命治療を受けるということは、副作用というデメリットを抱えながらもより長く生きることができるかもしれないという点に価値を見出すことなのです。

抗がん剤の延命効果って?

命をいかに長くするかというのが抗がん剤の大きな目標の一つです。

抗がん剤を使用して、がんがある程度小さくなったとします。単純に考えると、がんが小さくなるまでの間とがんが元の大きさに戻ってしまうまでの期間、あるいはがんの大きさをキープすることができた期間だけ寿命が延びることになります。

そして、使用していた抗がん剤が効かなくなったら種類や組み合わせを変え、効果をできるだけ長くすることが、現在の抗がん剤治療の基本です。効く可能性のある何種類かの薬を使い切ることで寿命を延ばすという方法です。

抗がん剤の進歩に希望はある

この延命効果をあげるため、抗がん剤は日々進化しています。21世紀になり、新しく登場した分子標的薬は、がんがどのように増殖するのかを遺伝子レベルで研究することで生まれた優れた抗がん剤です。

例えば、乳がんでは2000年より以前はステージ4の患者さんに通常の抗がん剤のみを使用していました。しかし、「ハーセプチン」や「パージェタ」といった分子標的薬が登場し、生存率やがんが悪化しなかった期間が延びるという結果になりました。

これらの分子標的薬は乳がんの一部(HER2陽性タイプ)の患者さんに対して有効ですが、このタイプは、もともとがん細胞の成長が速いため予後の悪いタイプでした。従来の抗がん剤だけでは、延命が難しかったところを分子標的薬の登場で希望が広がりつつあるのです。

生活の質を考える

延命という効果を得ることができる反面、副作用に苦しむこともある、これが延命治療を受けるかどうかの悩みどころだと思います。

分子標的薬を含む抗がん剤には副作用があります。確率ということから考えると、決して低いとは言えません。しかし、一人一人の体質や年齢などから、現れる副作用は同じではありません。また、副作用の種類も違います。

副作用が我慢できず2回目は行えないという人から、耐えられる程度だという人までさまざまです。これは実際に受けてみないとわかりません。もし一度受けてみて、副作用が辛くないということであれば、その人にとって抗がん剤はメリットだけといっても過言ではありません。

抗がん剤はさらに、休薬期間というものがあります。毎日使用するものではなく、一定期間のうちに数日から数週間抗がん剤を使わない期間が設けられているのです。

抗がん剤を続けながらこの休薬期間中に旅行や趣味を楽しむという人が実際いらっしゃいます。必ずしも抗がん剤を受ければ、生きている意味も感じなくなるほど苦しい生活を余儀なくされということではありません。

昨今の抗がん剤は副作用がより軽く、その反面延命効果を得られやすく変化しているのです。

治療という希望

がん患者さんにとって積極的治療を止めるというのはかなり勇気がいることです。医師に治療を止めると言われたら見放されたと絶望を感じます。それは裏を返せば、治療を続けることが患者さんの希望になっているということです。

体が辛くても、がんと闘っているのだという気持ちが大きな安心と希望を生むのでしょう。

たとえ、医師から余命1か月だと伝えられても、多くの人が希望を捨てずにがんと闘いたいし、最後まで自分のがんは治ると信じていますし、生きたいと願います。抗がん剤という治療が存在すること自体が心の支えであり大きな恩恵になるのです。

延命治療を受けない決断

まず、末期がんの状態で受ける抗がん剤は、延命を目的にしています。がんを治すまではできなくても、抗がん剤をできるだけ長く使って今の状態を維持できれば目標達成です。

多くの人は、抗がん剤というからには、使用していれば効果があるのだろうと考えます。しかし、抗がん剤には強い副作用があります。それによって、かえって命を縮めてしまうことも十分あります。抗がん剤を受けることにより、延命効果、QOLの改善といった良い面もある反面、ある時点から先は延命どころか、副作用によって命を縮めてしまうというデメリットをもたらしかねないのです。

さらに高齢者など体力がない人の場合はその傾向が顕著にあらわれます。どんなに長く抗がん剤を続けてもほぼ治る可能性はないのに、副作用で辛い思いをする、あるいは命を縮めるということがどれほど価値のあることでしょうか。

ある時点はいつか?抗がん剤のやめどき

患者さんの多くは「抗がん剤を止めたらあとがない」と思い込んでいますので、抗がん剤を中止する、あるいは始めから受けないということに強い抵抗を感じています。

医師から、抗がん剤の中止を宣告されたら「抗がん剤を中止するなんて死ねと言われているようなもの!」と怒ったり絶望したりするのです。

自分の死生観と照らし合わせたうえで、亡くなるまで抗がん剤を続けたい、という希望がある場合は止める必要はないと思います。それがその人の幸せだからです。

しかし、そうでないなら延命治療を止めるという判断をどこかでしなければなりません。延命治療をストップするべきタイミングは「抗がん剤のメリットよりもデメリットが大きくなるとき」と言えますが、そうはいっても、抗がん剤の止めどきを判断することはとても難しいと思います。

医師から「止めましょう」と声をかけられることもありますが、そうでない場合は自分、あるいは家族が止めるタイミングを決めるしかありません。

一例として

  • 抗がん剤で効果があらわれなくなってきたとき
  • 食べられなくなった時
  • うつ状態になったとき
  • 副作用が辛く我慢できないとき

このようなときは、抗がん剤を止めることを検討したほうが良いと思います。

抗がん剤を止めるのは、非常に勇気がいると思いますが、止めたあとの生活が楽になるかもしれません。食べることができるようになる、体が楽になって前向きに過ごすことができる、旅行に行けるようになる、など余命を充実して過ごせるようになる人が現実にたくさんいるのです。

治療をしない=終わりではない

 

今回、延命治療を受けることのメリットとデメリットをお話してきました。

最後に「緩和ケア」というものをご存知でしょうか。もし、あなたが最初から治療をしないと決めていたとしても、治療の手段がなくなってしまっても、緩和ケアという心強い味方が存在しています。

緩和ケアは治療こそしませんが、がんによる心や体の苦しみを取り除いてくれる場所です。治療中の人でも活用することができます。辛くなったら頼ることができる場所がいつでも用意されているのです。

ですので、延命治療を受けるか迷ったとき、治療がないことが終わりだという思いを一度手放してみて自分の希望はどこにあるのか素直な気持ちで考えてみてください。そうすればきっと、自分にとって必要な医療を見極めることができるのではないかと思います。

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