がん再発と転移の違い。それぞれの治療法について

がん治療と切っても切れないのが「再発」と「転移」です。

再発と転移があるからこそがんは怖い病気というのは多くの人が知っていることですが、具体的にどんな状態になったら再発や転移と言われるのでしょうか。

Aさんの困惑

Aさんはがんと言われ、以前に手術をしたにもかかわらず最近になって再発してしまいました。

手術は成功したし、その後の検査も順調だった。がんはなくなったはずなのになんで再発してしまうのか?完治していたはずでは…?」と思ったそうです。

手術を終えて1年。治ったものだと安心していたAさんは、ほとんどパニック状態です。こんなことになるなんて青天の霹靂だったに違いありません。

しかし、Aさんと同様の経験をする人は少なくないでしょう。

皆さまは、再発がどういうものかおわかりになるでしょうか。「なんとなく、がんの中でも悪い状態」といった理解かもしれません。そして、更によく聞く言葉に「転移」がありますが、再発と転移は何が違うのでしょうか。

今回はこの「再発と転移」をテーマにそれらの治療法も含めてご説明したいと思います。

がんの再発と転移は同じもの?

最初に申し上げますと、実は「再発と転移は同じもの」です。見つかったタイミングの違いで「再発」と呼ばれたり「転移」と呼ばれたりするということなのです。

どういうことかというと、初めにがんと診断されたとき、原発の臓器(例えば大腸がんなら大腸)以外に原発由来のがんが見つかれば「転移」であり、見つからず、治療を受けたあとで発見されたら「再発」ということになるのです。

もう少し具体的にご説明しますと、最終的にがんと診断され詳しいステージなどがわかるまでには全身の検査をします。この検査によって、がんが発生した臓器を飛び出して他の場所に移動しているかどうかわかります。

既に移動してしまっていることがわかった場合、これが「がんの転移」です。
「○○がんの○○転移、ステージ4」と診断される状態です。

一方再発とは、初めて診断を受けた時に、すでにがんが他の臓器に移動してしまっていたにもかかわらず、その時点では発見されず、手術などの治療を行ったあと数か月、あるいは数年後にそれらが定期検査や症状の発症などで見つかることを言います。

「再発」「転移」どちらも、がんは手術の前に他の場所に移っていたことになります。

ですので、手術をした場合でも取ることができません(そもそも、見つかっていないのですから、取りようもないのですが)。このように考えると再発と転移は、移動してしまったがんが発見されたタイミングが違うだけで同じものだということがわかります。

再発というと、一度すべてのがんが消滅して完治したあと、再び発現したように聞こえますが、実は一度も体内からなくなってはいません。再発というのはややこしい言葉ですね。

再発に関してはこの他にも、「がんが大きすぎる為、すべて手術で取り切れないのは予め承知で取り残した場合」や「手術中に誤ってがんを散布してしまった」ということがありますが、
最も多いのは「すでに広がっていたがんが後から発見されるケース」で、この見えないがんが広がっていくことをマイクロ転移といいます。

診断ミスではない

「手術の前にすでに広がっていたのに気づかれなかったなんて、診断ミスではないか」と思われるかもしれません。実際、マイクロ転移による再発の場合は、診断時にすでにステージ4(転移がある状態)であったにもかかわらず、ステージ1や2などと言われて手術をしているわけです。

しかし、これは仕方のないことなのです。がんは、がん細胞という細胞のかたまりで出来ていますが、一粒では100分の1㎜ほどの大きさしかありません。

画像検査では、少なくとも5㎜以上まで成長しなければがんを確認することはできません。とても検査ではわからないサイズなのです。

見落としや判断ミスではなく、医療機器の性能や技術の限界と言えます。ですので、残念ながらこのような微小ながんを発見する術がないのが現状なのです。

再発や転移がん治療のメインは抗がん剤

再発や転移が見つかったときの治療は、主に「抗がん剤」です。抗がん剤は、服用したり注射でがんを攻撃する作用のある物質を体内に入れます。そうすることで薬が血流にのって全身を巡ります。再発・転移はともに、がんが広がっていたり、複数の場所に存在する状態ですので、全身に行き届く抗がん剤が最も効果的なのです。

抗がん剤の目的は、がんを小さくして手術を可能にしたり、これ以上がんを増やさないよう現状維持することです。がんの種類ごと、最近では変異した遺伝子ごとに効果のある薬を使用します。

再び手術の場合も

再発の場合、どこにがんがあるかで「遠隔転移」と「局所再発」にわけることができます。

遠隔転移というのは、最初にがんが見つかった場所から遠く離れた場所にがんが移動することで、離れた場所に再発がみつかったということです。

対して局所再発とは、がんが原発部分とほぼ同じ場所に再発したことをいいます。局所再発は最初の手術のさいに取り切れなかったがんが再び成長することで起こります。

局所再発の場合は、見えているがんが一か所にとどまっていますので、それを手術で取り除くことになります。やはり、がんを物理的に取ってくる手術は今見えているがんを退治するのに一番有効な手段ですので、手術ができる限り手術をするのが基本的なルールとなるのです。

5年生存率

現在、手術や抗がん剤など何らかの治療をしたあと、5年経ってがんが再発しなければ完治とみなされています。そのため、5年生存率という言葉をよく聞きます。

5年生存率はがんとそのステージによって違いがあるものの、全てのがんの平均は5割程度と言われています。しかし、5年生存率は言葉通り、生存している人の割合であり、完治した人ではありません。ですので、5割の生存者の中には再発して闘病している人も含まれています。

そのように見ると、再発は決して少なくないと言えるのではないでしょうか。

だから再発前の治療が一番大事

先ほど、がんは微小ながん細胞のかたまりだとお伝えしましたが、がん細胞を数の面から見てみましょう。

がんが検診などで発見される最小サイズの5㎜ほどの大きさになる頃には、がん細胞は1.3億個もあります。

その後1㎝まで成長すると10億個ものがん細胞が体内に潜んでいることになります。これでもまだまだ、早期がんです。

そして、その後4㎝くらいになると350億個にまで増殖します。この状態では末期がんと言われ、がん細胞が体中に散らばっているでしょう。

こんなにもがん細胞が爆発的に増殖するのは、がん細胞が1個が2個になり、2個が4個になり4個が8個になる…といった倍々で増えてゆくからです。がんは発生してから時間が経てば経つほど加速度的に大きくなるわけです。

がん細胞が多ければ多いほど治療は苦戦します。がん細胞の増え方が治療の効果より速ければ、どんな治療も追いつきません。ですので、早い段階で対処し、がんの広がりをできる限り封じ込めることが大事なのです。

再発・転移をさせないために大切なこと

冒頭のAさんは、初期治療を手術だけで終えましたが、がんの進行によっては手術のあとに抗がん剤を行う場合もあります。手術でがんは取り切ったはずなのに、なぜ抗がん剤をしなければならないのかと思うかもしれません。

この記事をお読みの方にはもうおわかりになるかもしれませんが、これは、手術では取り切れなかった体内に広がっているかもしれないがんを抗がん剤で叩くことで再発率を下げるのが目的です。

今回ご説明したように、がんは成長したり体内を移動したりと、しぶとく憎たらしい病気です。抗がん剤を行ってもなお、がんを根絶やしにして確実に再発を防ぐのは難しいのが現状ですし、遠隔転移したがんを完治まで持ってゆくことも困難です。

しかし、だからこそ、そうなる前にやるべきことは全てやらなければならないと思います。やれることを全てやってはじめて勝てるかどうか、それががん治療なのです。

もし、自分自身や家族ががんになったとき、がんと言われて治療を受けるか迷うとき、このことを思い出していただきたいと思います。

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