がん治療を病院の口コミやランキングだけでは選ばない方が良い理由

がんと言われたら、まず何をしますか?

「最新の治療はどこで受けられるのだろう?」「名医に執刀してほしい」などと慌ててそれらの情報を探す人も多いと思います。ですが、現在は、国民みなが平等に高い水準の治療を受けられるようになっています。この事実は、がん治療を受けるにあたって基本的で重要なことですが、多くの人が知らないのではないかと思います。

それゆえに病院の口コミや○○ランキングだけを頼りに治療を始めてしまうのです。今回は、医師や病院選びにあたって大事なことである「標準治療」とは、「がん診療連携拠点病院」とは何なのかについて説明してゆきたいと思います。

がんになったら思うこと

日頃健康な人ほど「自分はがんにならない」「家族にがんの患者がいないからがんとは無縁」と思っていることがあります。しかし、今や2人に1人はがんになる時代。死因も1981年から30年間、がんが1位をキープしています。がんは誰もがかかりうる病気と言えるのです。

ひとたび自分や家族にがんの疑いがあるとわかったとき、一番最初に考えるのはどこで検査や治療を行うべきかということでしょう。腕の良い医師はどこにいるのか?進んだ治療を受けられるのはどの病院か?ということは多くの方が最も気にするところだと思います。

病院ランキング・口コミの落とし穴

本屋に行けば良い病院ランキングといった書籍がたくさん置いてあります。それほど患者さんの関心が高いのでしょう。しかし、病院ランキングをいくつか見比べてみると、治療成績だったり施設の充実度だったり患者の満足度であったり、評価基準がまちまちであることがわかります。

「こちらの雑誌では口コミで上位でも、インターネットではあまり良くないことが書かれていたり…」などといったことはよくあります。基準が曖昧で主観的なものが多いのでどれを信じてよいのかわかりません。

また、年間の手術件数トップ10といったランキングもありますが、手術の実施件数を見てもその難易度まではわかりません。年間の件数で判断するといっても、難しい手術を必要とする患者を多く受け入れている病院は件数が少ないかもしれません。

さらに、患者満足度による調査は、どのような病院・医師を良いとするかの基準は人それぞれです。このように病院ランキングは見方によっていろいろな解釈ができます。絶対に正しいものでも間違っているものでもありません。それを読んだだけではわからないのです。

このように曖昧なものはひとつの参考程度にとどめておいたほうが良いでしょう。それらを使って情報を得ることは悪いことではありません。がん治療を知らない多くの人にとっては自宅付近にどのような病院があり、どんな設備が整えられていて、治療期間や費用など大まかな疑問が解決できることもあるからです。

しかし、必死に良い病院や腕の立つ医師を探さなくても、基本的に私たちはどの病院でも同じ治療を受けることができて、かつその治療は一定以上のレベルであるということをまずは知っていただきたいと思います。それは、自分や家族が納得のゆく治療が受けられることにつながるからです。

がん治療におけるスタンダード、いわゆる標準治療とそれを施す病院であるがん診療連携拠点病院とはどういうものでしょうか。

標準治療を知らないのは危ない

「標準治療」とは多くのデータによって判明している、今現在いちばん効果が高いと証明された治療のことです。

抗がん剤一つとってもその種類や組み合わせは多種にわたります。それを同じがんの同じステージの患者に対し、どの薬でどの組み合わせががんを改善するかという比較試験が行われ、最も効果が高いと証明されたものが「標準治療」として推奨され、各病院で患者に提供されることになります。

標準治療の存在によって医師による見立ての違いや提案される治療法が異なるということがなくなります。どの医師にあたっても同じ治療を受けることができるのです。

患者側がこの標準治療を知ることのメリットは、自分のがんにはどのような治療があり、どのような理由でそれが選ばれているのかわかることです。

例えば、乳がんで医師から乳房全摘出と言われても、乳房温存手術を希望する場合、それを選択することができないのかとたずねることもできます。治療の選択肢を知らないと乳房を切除したあと温存手術というものもあったのかと後悔するかもしれません。乳房温存の選択肢も少なからずあったとしたら希望を考慮してもらえるかもしれません。

たとえ結果的に全摘出をすることになったとしても、適切な治療を納得したうえで受けることにつながるのです。

標準治療を知るために

では、その標準治療はどのように知ることができるのでしょうか。

一つにはがんの種類ごとに出版されている「診療ガイドライン」という書籍を購入して調べるか、各学会(例えば乳がんなら乳がん学会)のホームページで公開されている情報を閲覧することができます。

診療ガイドラインとは、標準治療に関する根拠や治療の手順などを示したがん治療の教科書のようなものです。がん治療にあたる医師はこの診療ガイドラインを参考に診療にあたっています。また、後述するがん診療連携拠点病院には相談センターというものが設置されていますのでそちらで確認することもできます。

標準治療を知れば、主治医がなぜその治療を提案しているのか、デメリットは何かということを私たち自身で判断することができるのです。

がん診療連携拠点病院とは

では、その標準治療を提供する医療機関ですが「がん診療連携拠点病院」というものがあります。

以前日本では住んでいる地域によって受けられる治療に差がありました。
それを受け2006年に成立したがん対策基本法の柱として、どこに住んでいても等しく適切な治療が受けられることを目指したがん診療連携拠点病院の整備が始まり、今では全国各地に存在しています。

がん診療連携拠点病院に指定されるにはいくつかの条件があります。

  1. 専門的ながん医療の提供ができる
  2. がん診療において連携協力体制が整備されている
  3. 患者への情報提供や相談支援を行う

がん診療連携拠点病院では、標準治療を基本に、患者に等しく適切な治療を行っているのです。

このように見てゆくと、治療というのは定められた共通の指標があり、各病院がそれにのっとった治療を患者に提供しているということがわかります。もし、あなたがこれから治療を受けるということであれば、口コミやランキングを頼りにあれこれ時間をかけて病院探しに苦心する必要はないのです。

それでも病院を変えたい場合は

どうしても医師と折り合いが悪いという問題は少なからずあります。
この場合は、どの病院でも同じ治療が受けられるということとは別問題ですね。幾度も病院を転々とするのは考え物ですが、安心してお任せできる医師を探して病院を変えたほうが良いケースも多いものです。たとえ受ける治療が同じでも信頼できない医師では命をあずけることはできません。

がんは一度発症すると治療期間が長くなることが少なくありません。必然的に主治医との付き合いも長くなるものです。良い医師は患者に真摯に対応してくれるものです。威圧的だったり説明を省いたりする医師の場合は、思い切って病院を変えるのもひとつです。

がん治療の病院を口コミやランキングだけで選ぶ前に

これだけがん患者が多いにもかかわらず、標準治療やがん診療連携拠点病院のことを知らない人は多いです。知る機会がそもそもないのでしょう。にもかかわらず、口コミや全国の病院ランキングなどといったことには医療従事者よりも詳しい、そんな印象を感じます。それらを知ることは決して悪いことではりませんが、標準治療の本来の意味を知れば不安や疑問を払拭し安心して治療に臨めるかもしれません。

記事の中でご説明した診療ガイドラインは、医療用語などが使われているのでなかなか理解が難しいのですが、自分のがんをよく知ることができますので自分に関係のあるところだけ目を通してみてください。今までの視点と別の角度から治療を受けることができるようになると思います。

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