がん難民はなぜ生まれるのか。がん治療についてもう一度考えてみよう

いま、がん治療は、より有効だとされる治療や薬の開発が次々となされています。にもかかわらず、がんには依然として「絶望」「恐怖」「死」といったイメージがついてまわります。そこには、まだまだがん治療やそれに携わるシステムが多くの人を救うのに十分ではないという現実が反映されていると思います。

今回のテーマであるがん難民はその最たるものだといっても過言ではありません。がん難民が生まれてしまう現状とがん難民にならない考え方をご紹介したいと思います。

がん難民とは

がん難民という言葉を聞いたことがありますか。
状況や理由はさまざまですが、希望する治療を受けることができず、不安や絶望を感じていたり、病院や医師を探してさまよっているがん患者さんのことです。

  • 抗がん剤などの治療が尽きて、医師から治療の終了を宣告された
  • 治療方針や医師とのコミュニケーションのずれなどを理由に医師や医療機関に不信感を抱き、希望にそった医師や病院を何か所も探し回る

他にもありますが、この2つは特によくあるケースであり、がんになったら誰もが経験する可能性があるものです。

どうしてがん難民が生まれてしまうのか

がん治療は確実に進歩し、がん=不治の病という時代ではなくなりました。専門の病院もたくさんあります。それなのに、どうしてがん難民は生まれてしまうのでしょうか。

治療の限界

がん治療は、全国の病院で共通ルールとなる「基準の治療(標準治療といいます)」を各患者さんに当てはめて方針が決まります。

しかし、そのように与えられた治療のコマをすすめてゆく中でがんが完治すれば良いのですが、治らないときはどうでしょうか。治療の手段には限界があります。方針通りに治療を受けた先に治療法がなくなるということが起こります。

まだ治療をしたいという希望があるのに、打つ手がなくなってしまったとき、患者さんの苦しみはいかほどでしょうか。多くの人が「病院に見捨てられた」「終わってしまった」と絶望を感じるのではないでしょうか。

この、治療に限界があるという厳しい現実が多くのがん難民を生んでしまうのです。

もっと良い病院、良い医師を探して

がん対策基本法が施行されてから、すでに10年以上経ちました。それに伴ってセカンドオピニオン、またはサードオピニオンまで求めることが、かなり一般的になってきました。

患者側は別の医師の意見を聞く権利があり、医療側はそれに応じる義務があるという認識が医療現場で浸透しています。治療は命がかかっていることですから、納得のゆく医師や病院で治療を受けたいと思うのは当然です。

しかし、これが原因でがん難民となってしまう場合があります。

良い医師や良い病院を求めて治療を受けるのが当然だという考えから「もっと自分の希望通りの治療をしてくれる病院があるのではないか」「もっと自分に合う医師がいるのではないか」と理想を探し続けてしまうのです。

すると、どこまで拘るべきか心の中で折り合いがつかなくなってしまったり、結局どのような治療が自分にとって良いものなのかわからなくなって、いつまでも病院が決まらずにあっちこっち彷徨っているような状況に陥ってしまいます。

医師や病院を比較し選ぶ自由があることが、逆に患者にとってマイナスになっているのです。

がん難民にならないためにどのようにするべきか

セカンドオピニオンに行けば良い医師に巡り合える?

医師や病院を探し求めてがん難民となってしまうケースに大切なことは、まずは最初に治療を提案した医師の説明をよく理解するということです。これが当たり前のようで、実はできていない人が多いように思います。

例えば、手術をしたくないからそれ以外の方法がないかセカンドオピニオンに行きたいと思ったとします。

しかし、少し考えてみてください。手術の目的は何でしょうか?なぜ手術を提案されたのでしょうか?手術のメリット・デメリットを理解しているでしょうか?そのようなことをきちんと把握しようと努めるのが先です。それには医師に改めて質問したり、自分も勉強する必要があるかもしれません。

それでも、わからない、あるいは別の治療を求めたいという明確な目的があった場合にセカンドオピニオンを受けるのであればがん難民になることはないはずです。

セカンドオピニオンに行けば、何か最新の治療を提案してもらえると思っている人も多いのですが、先にも述べたように、がん治療には全国統一の「基準」というものがあり、マニュアル化さているので、どこの病院に行っても同じ治療を提案される場合は多いものです。何も知らずに曖昧な想像から、良い病院や良い医師を求め続けてしまうのは避けたいものです。

医者と良い関係を築く

患者さんのなかには医師との信頼関係が築けず、転院を希望する人がいます。

必要な説明を省いたり、高圧的な態度の医師も中にはいます。そんな医師には命をあずけることができないと思うかもしれません。ですので、医師と相性が良くないという理由で病院を変えることは一概に悪いことではありません。

しかし、患者側も医師と信頼関係を築く努力をするということは大事なことだと思います。医師も同じようにひとりひとりの患者に真摯に対応するべきであり、これはお互い様という部分なのですが、まず患者としてできることはしたいと思います。

よく患者さんから「主治医に親身になってほしい」「寄り添ってほしい」という声を聞きます。しかし、医師はあくまでも患者を客観的に見て判断する立場にあります。医師の目的はがんを改善させること、ということを理解しましょう。

そのように医師の存在を捉えると、あなたの主治医は冷たいのではなく、黙々と仕事を遂行している頼りになる存在と思えるかもしれません。

さらに、主治医にすべてを任せるのではなく、看護師、薬剤師、カウンセラーなどもあてにすることをおすすめします。主治医だけを頼りにしすぎると、主治医との関係性がうまくいかないとき逃げ道がなくなってしまいます。

良い意味で「医師に期待しない」を実践すると心が軽くなるのではないでしょうか。自分にあった医師を探して病院を転々とすることもなくなります。

本当に治療はないのか

治療の手立てがなくなったことでがん難民となってしまうケースは、自分の考え方や意思でどうにもならないのですからとても深刻な問題です。

進行したがん、あるいは再発がんの場合は治療の手段が非常に限られます。そして、その限られた治療でがんが治るかというとそれは難しく、現状維持ができれば幸運で、多くの場合は徐々に悪化していってしまいます。

「もう治療法がありません」と言われた患者さんは藁にもすがる思いを抱きます。治療がないということでがん難民となるのですから、治療を求めるということが一つの救いになることがあるかもしれません。

医師が「治療がありません」という場合、それは保険診療内で受けられる治療がないということを指します。ですので、保険外の治療に活路を見出すということが考えられます。

  • 免疫療法
  • 遺伝子治療
  • 高濃度ビタミンC点滴療法
  • 温熱療法

などが、現在日本で受けることができる保険外のがん治療となります。効果がないから保険が効かないのでは?と思うかもしれませんが、保険適用の治療となるまでには時間がかかります。これらの治療はその前段階ということで、効果が得られないから保険診療として認められていないというわけではありません。(もちろん効果が得られにくい治療もあります)

しかし、多くの試験やデータを基にして確立した保険診療からすると、どれくらいの可能性があるか、または危険ではないのかということが明確になっていません。それだけに、治療を試みる場合は自己責任という側面があります。

これらの治療を受けることには賛否が分かれますが、標準治療に限界が来た場合、新たな希望として取り入れることは悪いことではないと思います。ただし、治療を受けるにはしっかり情報を得て納得したうえで受けることが大前提となります。

緩和医療について

抗がん剤を使えるうちはまだ希望がある、そう思っている患者さんは多いものです。

しかし、それは抗がん剤がなくなったら最後という意味にも聞こえます。抗がん剤に終わりがきたとき「抗がん剤がすべて」と思っていると、打つ手がなくなったという絶望に打ちのめされてしまうでしょう。

また、抗がん剤を使う目的は良い状態で長生きするということに他なりません。それを達成している限り抗がん剤を使えばよいのですが、抗がん剤が目的からはずれてしまっている、あるいは苦しくて止めたくても止めたら終わりだと、抗がん剤にすがりつくように続けていることがあります。抗がん剤、ひいては治療が全てを決めると信じてしまうというのはとても苦しい考え方ではないでしょうか。

そこで緩和ケアに頼るという考えがあります。

緩和ケアというと終末期の医療で末期のがん患者がいくところと思われているかもしれません。治療をあきらめざるを得ない人が最期をむかえるところなどというイメージでしょうか。しかし、そうではありません。

緩和ケアは、がんそのものを改善する治療ではありませんが、がんに伴う症状や苦痛を軽減する医療であり、末期の患者だけではなく、がんと診断された瞬間から受けることができる、また受けるべき医療なのです。

緩和ケアをそのように捉えて活用すると「治療がなくなったら終わりだからなんとしても抗がん剤を使いたい」「抗がん剤がなくなることは恐怖である」という感情が一変します。抗がん剤にすがる必要がないとわかればがん難民という存在ではなくなるはずです。緩和ケアは必要なときはいつも支えてくれる医療として存在しているのです。

ですので、まずは緩和ケアに対するイメージを払拭してみてください。がん治療は変化しています。そして治療がなくなることが終わりではないのだと感じることができた人は、がん難民ではなくなっているはずです。

海外と日本のがんの捉え方について

アメリカ人は、がんは共存する病気と捉えるそうです。完全に治せなくても、苦痛がないようコントロールしながら付き合っていく病気と考えます。対して日本人はがんは完治が目標で、治せなければ終わり、0か100かで考える人が多いように思います。

「絶対にがんを治そう」と強い意思で治療に向き合うのは素晴らしいことですが、治らないという現実に向かい合ったとき希望が見いだせなくなってしまいます。病気を治すことだけが希望だとする気持ちががん難民を増やしてしまう原因の一つになっているような気がします。

抗がん剤で運命が左右されるという恐怖や、良い病院を見つけたり、良い医師に巡り合いさえすればがんが治るんだという思い込みもまた、がん難民を生んでしまう考えだと思い、今回、そうではないのだというメッセージとして伝えることができればと思いました。

こうでないとだめだという思い込みをなくしてがん治療を考えてみるところにがん難民と呼ばれる人たちの本当の安心や希望があるように思います。

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