なぜ抗がん剤を使うのか?手術後に受ける場合と転移がんに使用する場合の違い

なぜ抗がん剤を使うのか?手術後に受ける場合と転移がんに使用する場合の違い

抗がん剤は私たちの体内でしぶとく生き残ろうとするがんの性質に対抗するべく使われる、保険診療で唯一の全身治療です。

抗がん剤を使用するタイミングは大きく分けると手術の後と転移が見つかった時の二つになりますが、それぞれの使用目的は異なります。しかし、そのどちらも抗がん剤がもつ「体内のあらゆる場所にあるがんを叩くことができる」という効果を狙った治療になります。

今回はタイミング別にその目的を説明します。抗がん剤を使用されている方はご自身の治療の理解を深めることにお役立てください。また、現在抗がん剤を提案されているにもかかわらず使用をためらっている方はこの記事をお読みになって、ご自身の現状でなぜ抗がん剤を使う必要があるのか理解し決断するきっかけにしていただければ幸いです。

術後抗がん剤の目的

がんと診断されたとき、がんが発生した臓器にとどまっていれば基本的に手術の対象となります。体内の限られた一部分にがんの塊がある状態ですから、それを手術で物理的に取り除くわけです。そして手術のあとに抗がん剤を受ける場合と手術だけで治療が終わる場合があります。

この抗がん剤をする・しないの違いは何でしょうか。

それは再発の可能性が高いか低いかです。

がんが「発生した臓器にとどまっている」というのは、「見た目の上では」という補足付きで理解していただくことが必要です。画像検査や肉眼で見る限り、がんが体内の一部に限定されていると判断された状態ということです。

しかし、画像検査や肉眼ではわからないとても小さいがんがすでに周囲や遠くの臓器まで広がっている場合があります。見た目のがんは広がっていないが、実際は微小な見えないがんが広がっていますので見た目と実際が異なります。

当然手術では見えているがんを取り除きますので、手術が終わった時点では見えているがんはなくなりましたが、見えないがんに対しては無治療ということになります。見えないがんは術後数か月、数年かけて大きくなり、やがて画像検査で確認できる大きさに育ちます。

これが「再発」です。再発の火種となる見えないがんがある可能性が高い場合は再発を予防する目的で抗がん剤を使用し、低い場合は抗がん剤を使用せず手術だけで治療終了ということになります。

見えないがんが残っている可能性が高いとは、各がんによって定義は異なりますが術前のがんがある程度大きかったり、臓器の深くまで進行していたり、がん細胞の性質が悪かったり(悪性度が高いという言い方をします)といった場合です。

このような条件のもと、基本的に「3割以上」再発の可能性が高いと判断される場合は抗がん剤の使用を提案されることになります。

がんは発生後、どのタイミングでも周囲や遠くの臓器に移っていく性質がありますので、この点を踏まえれば本来、手術を受けた人全員が手術後に抗がん剤を使用するのが良いのですが、抗がん剤は副作用が強く体への負担が大きい場合が多いので再発の可能性が低い人は使用しません。再発の可能性と抗がん剤の副作用を天秤にかけて抗がん剤のデメリットが大きい場合は使用しないのです。

末期状態(転移がん)での抗がん剤の目的

抗がん剤を提案されるケースは術後のほかにもう一つ、「がんが転移しているとき」です。

がんと診断されたとき、「〇〇に転移している」あるいは「ステージ4です」と言われたら手術はせず抗がん剤を提案されるでしょう。転移している状態というのは体内の血管やリンパ管や臓器といったあらゆる場所にがんが飛び散っている可能性がある状態ですので全身に効果がある抗がん剤を使用するのです。

例えば肺がんの肝臓転移の場合、肺と肝臓のがんを抑えるのはもちろん、肝臓に転移する際の経路となった血管やリンパ管に残存しているがんも同様に抗がん剤によって抑えることができます。

このように転移がんに対して抗がん剤を使用する場合は、全身に潜むがんがこれ以上悪さをしないように現状をキープする目的で使います。ですので使用している抗がん剤では現状維持ができず、がんが大きくなってしまった場合には抗がん剤の種類を変更するなど手段を変えて使用していくことになります。

なるべく長い期間にわたってがんの進行を抑える為に、使用量を調整したり一時中断したりする場合もありますので、もし現在抗がん剤の副作用が辛い方は主治医に相談したり緩和ケアを頼ってみてはいかがでしょうか。

抗がん剤の使用を迷っている方へ

抗がん剤は副作用の強い薬ですので使用に抵抗がある方がたくさんいらっしゃいます。

抵抗を感じるまではではいかなくても積極的に使いたいとは思わないのが多くの方の心情でしょう。

転移がんの場合、抗がん剤だけが治療の選択肢となることが多いため抗がん剤を使用しない患者は主治医からホスピスや緩和ケアを提案されることになります。ホスピスや緩和ケアではがん治療は行わず、解熱や痛み緩和などがんによる症状を抑える処置を中心に行っていきます。

術後抗がん剤の場合は再発予防が目的ですから使用する期間が限られます。おおむね3か月から半年くらいになります。抗がん剤を使わなければ経過観察を確実に受けるよう主治医から指示が出るケースが多いようです。

また、術後抗がん剤は、実際にはあるかわからないがんに対して行うものです。はじめからがんが周囲に飛び散っておらず、手術ですべて取り除けた場合には抗がん剤は意味がないということになります。ただ、飛び散っているかどうかを確認する術がないため、可能性が高いのなら再発を避けるために使用しておくという考え方です。ですので、使用する意味がないかもしれないのに…と思う方もいらっしゃるかもしれません。

抗がん剤を使用するかどうかは個人の価値観が大きいという側面もありますが、ひと昔前と違い医学の進歩とともに副作用を抑え、なお且つがんの縮小効果が高い抗がん剤の使用において保険適用となる範囲が増えましたので、強い副作用が出る可能性もある反面、抗がん剤のメリットを受けられる可能性も高くなっています。

個人の体質によって出る副作用は異なりますが、薬ごとにあらわれやすい副作用はあらかじめわかりますので副作用に対してどのように対応するか、ご本人はもちろんご家族もきちんと把握しておくことが安心につながります。また、抗がん剤は使用する頻度や種類に関してあらかじめ計画をたて、それにそって使用しますので仕事を続けることができるか不安な方はそれを主治医に確認しておくと良いでしょう。

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